「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「先崎学の浮いたり沈んだり」(先崎学)

私が今度生まれ変わることができるなら、「将棋の棋士になりたい。それくらい将棋が、棋士が好きだ。(・ω<)


天才・奇才が一手に泣き、一手に笑う将棋界。才気煥発の人気プロ棋士が、勝負に生きる将棋指したちの哀歓をときに軽妙に、ときに鋭くつづる。一勝すれば名 人確実と浮かれ、一敗すれば引退を考える日々はまさに浮いたり沈んだり。おおむね気楽、でもたまには辛い棋士の毎日を自在の筆筋で描き出す、週刊文春に連載された傑作エッセイ」そのエッセンスを紹介しよう。


私の本職は将棋を指すことである。昔将棋指し、今は棋士という。将棋ファン1000万人、対して職業将棋指しは150人、なんともいえない狭い世界である。その中で私はA級8段と呼ばれ、まあ名人が頂点となっているピラミッド社会の九合目ぐらいで闘っている。A級には10人の棋士がいて(羽生もいるのだヨ)、リーグ戦を戦う。この一回戦を見事に負けた。ああもう駄目だと自信をなくした。ちょっぴり死にたくなった。もうアカン、細々と何か商売でもやって生きるか、脱サラならぬ脱棋士をして、ラーメン屋でも始めるかと考えていた。二回戦目と三回戦目が、立て続けに行われ、運良く私は二連勝することができた。


・こうなれば、ラーメン屋なんて考えていたのは宇宙のかなたまでサヨウナラ。心は来年の名人戦である。このように一局勝つか負けるかで、180度心のベクトルの向く方向が変わってしまう。一勝すれば、自分は天才、名人十期は固いと思い、一敗すれば引退を考える。ラーメン屋である。毎朝スープを作るのはたいへんだなあと考えて、ますます落ち込んだりする。


・対局の後、特に負けた後は神経が昂っていて布団の中で将棋盤がぐるぐる回るのは暗黙の了解なので、私も他の将棋指しの生態に興味津々だったのだが、おおむね皆さんが仕事でしくじった後にきっと取られる行動と大差ないものだった。すなわち。飲んで寝る。博打で気を紛らわして寝る。女の海に溺れて寝る。まあこの三つに分かれる。佐藤康光君は一味違った。「泣きます。わんわん泣きます」


将棋指しとは、とにかくヒマな人種でる。そう、将棋指しは暇だらけなのである。まあ羽生のような例外は除いて、我々の仕事は将棋を指すことであるが、まあ少ないんだなあ、これが。本場所ともいえる順位戦が、年に十局、その他はリーグ戦もぱることにはあるが、ほとんどがトーナメントなので、優勝しない限り、どこかで負ける。年五十局。週一局である。だから将棋指しとは週に一日しか仕事をしない人種である。といえる。本当かと疑うでしょう。ホンマなんだ。これが


・故升田幸三先生の言葉にこんなものがある。「人間、笑える時に笑っておけ。いつか泣く日がくるのだから」将棋指しという人種の本質をズバリ突いた名言であるが、私はこれを反転させてみた。「人間、泣ける時に泣いておけ。いつか笑う日がくるのだから」


ああー!将棋がしたい!将棋の棋士になりたい!オススメです。(・ω<)