酒場のギター弾き 小野塚テルの『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「ヒロシです。」(ヒロシ)

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やっぱり、ピン芸人のヒロシはソロキャンプよりも、こっちの方がいいよね〜!動画みるのと同じくらい読んでも笑えるっ!!!(・∀・)

 

「切ないメロディをバックに淡々と哀しいネタをつむぎ出す芸人・ヒロシの初のお笑い作品集。ヒロシが妄想した伝説の「ヒロシグッズ」カタログや撮りおろし写真も満載の内容」そのエッセンスを紹介しよう。

 

ヒロシです。美容室でのトークがはずみません!
 
ヒロシです。チワワを飼えば 俺の家にも 遊びに来てくれますか?
 
ヒロシです百円ショップで「これいくらですか?」って聞いたことがあります。
 
ヒロシです俺のサドルがありません!
 
ヒロシです。俺が遊ぶ約束をする女の人は みんな当日になると 風邪をひくとです。
 
ヒロシです。一人で行くボーリングがつまらないって やっと気づいたとです。
 
ヒロシです。ピスタチオを殻ごと 食べていた時期があるとです。
 
ヒロシです毎晩決まった時間になると 隣の部屋からお経が聞こえてきます……ちょっと覚えたとです。
 
ヒロシですタッキー&ヒロシ……ちょっと言ってみただけとです。
 
ヒロシです。俺と携帯電話で話す女の人は みんな電波が悪いところにおるとです。
 
ヒロシです浮気はしないと言っていた 彼女のアパートに遊びに一句と 必ず便座が上がっています。
 
ヒロシですまだ夜の9時なのに「私、終電だから……」って言われたとです。
 
ヒロシです「4番、ピッチャー、ヒロシ」……。ちょっと言ってみただけとです。
 
ヒロシです。オレンジ色をダイダイ色と言うときがあります。
 
ヒロシです普段はスカートばかり履いている女の人が 俺と会う時は ジーパンを履いて来ます。
 
ヒロシです乳首を舐める感覚を養うため グミキャンディーを食べます。
 
ヒロシです。今夜は帰りたくない……。女の人ではなくて俺の方が 言ってしまうとです。
 
ヒロシですおみくじを買うのが勿体なくて 木に結んであるのを取ってみました……。大吉でしたが複雑な気分です。
 
ヒロシです。新宿から上野くらいまでなら歩きます。
 
ヒロシです週休2日の彼女から「仕事が忙しすぎてメールができない」って言われるとです。
 
ヒロシです。6時につきあいはじめて 9時にフラれたことがあります。
 
ヒロシです「MとSだったらどっち?」って女の人から聞かれました……。そんな質問、女の子がしてはいけません!……Mです。
 

いいなあ!この自虐的フレーズは、まさに古典であり、普遍的なものを感じる。オススメです。(・∀・)

 

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「向田邦子の陽射し」(太田光)

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爆笑問題の太田と田中はひとつ年下。同じ時代を生きてきたので共感できるところが多い。若い頃からいままでずーっと活躍しているのがスゴイよね。さて太田が向田邦子ファンだとは知らなかったっ!!!!
 
「それでも僕は語りたい。向田邦子の何処が特別なのか」太田光爆笑問題・太田さんの向田邦子に対する尊敬が詰まっているのが本書です。「こんなことを向田さん以外の誰が書けるだろう」と太田さんに言わしめる向田邦子の傑出した魅力を、その小説、エッセイ、シナリオにおける奇跡のような表現を採り上げて綴ります。太田さんの選ぶ「読む向田邦子」「観る向田邦子」ベストテンも掲載。向田ファンであることの幸福を存分に味わえる、最高の入門書にして最強の向田論」そのエッセンスを紹介しよう。
 
向田さんの作品は、不道徳である。と思う。この短編集の作品はどれも“一番書いてはいけないこと”だと感じる。では、他の人々は、書いてはいけないことだからこういう作品を書かないのかというとそうではない。誰もが知っているはずなのに、誰も言葉にできないから、“書けない”のだ。にもかかわらず、向田さんの作品は有害とされるどころか、逆に誰からも尊敬され続け、美しく、品があり、礼をわきまえた、正しい姿、といったイメージすらある。これが、向田邦子の“恐ろしさ”だと思う。
 
・書類にサインを貰いにくると帰り際「ダダダダ」と呟いて席に戻って行く。何て上手いのだろうと思う。このダダダダ」だけで、この女性の若さ、悪戯っぽさ、恐ろしさ、そして、会社での二人の関係、半沢のビクビクしている態度、そして何よりこの女性の魅力をどんな説明ゼリフより雄弁に表現してしまうのだ。本当に痺れる。
 
向田さんの本を読んだ後はいつもそうだが、言葉を発するのが怖い。自分の言葉が全て雑音のようで、ただただ黙っていたい。それが本音だ。
 
幸福にすること、と、されること、どちらが幸福だろう、と。笑わせることと、笑うこと。こちらかを選べと言われたら、芸人である私は、笑わせること、を選ぶのだろう。私は無垢な人ほど、笑う側になるのではないかと思っている、もしその相手が赤ん坊なら、芸人でなくても、誰もが、自分が笑わせる側になるだろう。そしてそのことに何の疑問も感じないだろう。そして誰もがそちら側に立つことで、幸福を感じるだろう。この物語は、たみの無垢を、二人の男が保ち続けようとする物語である。そして門倉にとって、たみの無垢を保つたった一つの方法が、思いを言葉にしないことである。表現する人の、幸福の条件が、沈黙であること。それがこの物語の核心であり、作家・向田邦子の核心であると私は思う。
 
“愛”以外にも、向田さんのあまり使わない言葉はたくさんある。たとえば “美”や“感動”という言葉。“悲しい” “悪い” “寂しい”など、感情を形容する便利な言葉を向田さんは使わない。それは実は舞台や映画やテレビの脚本のト書きの原則である。
 
・向田さんは“愛”について、絨毯の上に寝そべって考えているうちに小一時間ほどうたた寝をしたという。この静かな時間の流れ。“絨毯の上でのうたた寝こそが、向田さんを包む幸福であり、“愛”という言葉に収まりきれない“何か”であると、向田さんをさりげなく言っているのだと思う。
 
・少女時代、向田さんは肺病になり、少し美人になったような気がした」という。人は、こういうことにどれほど救われるだろう。
 
向田さんの“自分以外の何か”に対する愛情の話は、読んでも読んでも、もっと聞きたくなる。それはきっと、この世界にある“自分以外の何か”に愛情を注ぐ、ということこそが、人が生きることの根拠なんだと、気付かされるからだ。
 
向田さんは、必ず、重要な部分で“沈黙”する。大げさなようだが、これが、向田邦子の“生き方”なのだと思う。この“生き方”が、全ての向田作品に反映している。一番言いたいことを言わないこと。それは自分を殺すことである。向田さんのその覚悟は、恐ろしいほどである。自己表現とは、自分を表すことではなくて、自分を消すことだ。表現における自由とは、不自由を受け入れることだ。本当の自由とは、自由と決別する覚悟をすることだその覚悟が相手を守り、自分を守るのだ。
 
『眠る盃』の中には、本当に全ての制約から解き放たれたように、相手を傷つける心配も何もなく、浮かんだ言葉を全て、思い切り、使うことを自分に許しているかのような文章がある。大好きな水羊羹のことを、どうかと思うほど大げさに褒めちぎった名文「水羊羹」と、愛猫マミオへの思いを綴った「マハシャイ・マミオ殿」である。短いので、そこままここの載せてみる。
「偏食・好色・内弁慶・小心・テレ屋・甘ったれ・新しもの好き・体裁屋・嘘つき・凝り性・怠け者・女房自慢・癇癪持ち・自信過剰・健忘症・医者嫌い・風呂嫌い・尊大・気まぐれ・オッチョコチョイ……」きりがないからやめますが、貴男はまことの男の中の男であります。私はそこに惚れているのです」
これを書いている時の向田さんは、どんなに楽しかっただろう。
 
「楠」では、自分の書く物には木が出てこないと言う。ある時、同窓会で級友が恩師に、孫が生まれる記念に植樹を頼んでいるのを見る。級友は子供が生まれるたびに恩師に植樹をしてもらっていて、今では、昔植えてもらった木が見上げるような大木になっていると聞いた時、向田さんは「涙がこぼれそうになった」と言う。自分は木を書かなかったのではなく、書けなかったのだ、と、その時思い当たったと。父は転勤が多く、社宅ぐらしの多かった自分は自分の庭を知らず、長く愛着を持つ木を知らなかったのだと。こういう感受性を見ると、胸が詰まるような気持ちになる。
 
・今、テレビの世界の中にいる僕は改めて思う。向田邦子が不在であることの大きさを。向田邦子がつなげたであろうその後のテレビドラマの歴史を知ることが出来ないことの無念さを。あの飛行機事故さえなかったら、現在のテレビ界、文學界がどれほどの水準に達していたかは想像を絶する。僕は確信する。向田邦子のテレビドラマ以上の脚本を書ける作家は過去に一人もいないし、今後もおそらく現れないだろうということを。何がどうしてどうなのか。それでも僕は語りたい。向田邦子の何処が特別なのか。何処が他と違うのか。
 
・(向田和子)「姉と普通にしゃべっていて、私が「絶対」いう言葉を使ったとたんに「あなた、「絶対」というのは使わないで」と怒るんです。「絶対」というのはないと姉は言うんですよ」
 
日本は、向田邦子のように生きてきた。昔の日本だけじゃない。今の日本を見ても私はそう思う。だから私は向田邦子が好きなのだ。この人を忘れられるわけがない。そして向田邦子が素晴らしいのは、この国と似ていて、太陽とも似ているからだ。これほど誇らしいことがあるだろうか。だから私は、向田邦子を読むと自信を持てて楽しくなって。何だかんだ言いながら生きていることを続けていこうと思えるのだ
 
太田光が選ぶ「読む向田邦子」ベスト10。小説「かわうそ」「三枚肉」「男眉」「大根の月」「あ・うん」、エッセイ「ごはん」「水羊羹」「なんだ・こりゃ」「鉛筆」「マスク」など。
 
太田の文章力がスゴイわ。それこそ“自分以外の何か”に愛情を注ぐ、だね。この本も再読したい。超オススメです。(・∀・)

 

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「手塚治虫 99のことば」(手塚治虫 橋本一郎 編著)

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このブログでも何度も紹介している手塚治虫の本。これは名言集だね。昭和とともに亡くなったよね。60歳没だなんて若すぎたよね……。あれっ!?ワタシもあと3年じゃんっ!!!( ´Д`)=3
 
「生誕90周年を迎えた“漫画の神様”手塚治虫の創作の秘密がこの一冊に! 日本の漫画界のパイオニアにして、常にトップランナーであり続けた手塚が折に触れて語った言葉は、モノづくりに携わる人だけでなく、すべてのビジネスパーソンの心に響く名言ばかり。さらにデビュー前の貴重な原画や設定資料など、貴重な画像資料も満載」そのエッセンスを紹介しよう。
 
・女の子の漫画といえば、目の中に、星が光っているのが通例になっている。これも女性の見果てぬ夢への表現かもしれない。なぜ、ぼくがこんな例を引用するかというと、要するに漫画は、欲求の映像的い表現をするものだということを言いたいのである。
 
・医者になれば軍医として士官待遇を受けられるし、矯正徴兵も免れるとあって、阪大を受けた。それが最大のズレであった。どうにか入学できた途端に、終戦になってしまったのである。
 
プロというには、なんにもないところから引き出さにゃダメだ(笑)。引き出しを開けたらなにもなくて、しかし何かを出さないことには締め切りが迫っている。そこで無から有を生ずるのが、プロですよ。
 
・加藤(謙一)氏と私との出逢いは、その後のお互いの人生を替える運命の日だったといえる。なぜなら関西でくすぶっていた一赤本絵描きの手塚治虫を中央の檜舞台へと登場させジャングル大帝火の鳥という、二本のライフワークを世に送り出す場を提供した人が加藤氏であり、(中略)漫画少年を連載執筆のひどい遅れによって発売日を狂わせ、(中略)このユニークな出版社を閉鎖に追い込んだ責任は、大半が手塚治虫にあるからである。
 
・アトムの毛は、アトムがどっちを向いてもふたつ見える。こういうのを漫画のウソと呼んでいる。漫画にとって、ウソはだいじなものだ。
 
世の中に ただひとつ いこいの場所が あるとすれば それは おかあさんの ひざの上である…
 
漫画少年に連載していたジャングル大帝が終わったので、ぼくは南方民族漂着説を、独断と偏見に充ちたSF物語として描き始めた。これが火の鳥である。
 
・ぼくらマンガ家には、結局のところ抽斗(ひきだし)が三つか四つぐらいしかないんです。ときどき他の抽斗を開けて目先を変えるけど、入っている材料は同じものなんです。ぼくらはそこから引っぱり出したものに、気に入られそうな味付けをして発表しているだけなんですよ。だからラーメン屋の小さな屋台と同じでね。
 
天才?とんでもない。私ほど苦しんでいる人間はいないんじゃない。悩んで損と分かっているのについ(笑)。
 
漫画は消耗品で、その都度屑箱に捨てられるものかもしれないけれど、その漫画の内容や主人公は、いつまでも読者の胸の中に生きているそういったことが漫画家にとって大事なのです。
 
ぼくには「あしたのジョー」は描けないし、「巨人の星も描けないんです。何を描いても、心から主人公の世界にのめりこむことができない、しらけたところがあるんですよ。
 
イデアは、もう、売るほどあるのに、その何分の一も形にできていない。おれは、もっと、もっと、仕事をしたいんだ。(「死の床で「仕事をさせてくれ」手塚悦子」
 
「隣へ行って、仕事をする。仕事をさせてくれ」(「死の床で「仕事をさせてくれ」手塚悦子」)
 
「ハトよ天まで」「フィルムは生きている」は、まだ読んでないなー。手塚作品再読します。オススメです。(・∀・)

 

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「プログラムすごろく アベベのぼうけん おどろきの上巻 かんどうの下巻」(佐藤雅彦・ダイスケ・ホンゴリアン)

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月曜〜金曜の朝のルーティンは、NHKEテレ「0655」佐藤雅彦さん監修の歌や映像がいつも驚かされる。「おれ、ねこ」「あたし、ねこ」もサイコーだよね。(ΦωΦ)

 

さてこの本。その佐藤さんが書いたまったく新しいプログラミングの絵本!!

アベベのぼうけん』。プログラムによってできている、まったく新しい形式の物語。

こうして夢中になってプログラムを読み解いていくうちに、手順やルールを筋道立てて考える力、つまりが自然と養われる。

 

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「主人公・アベベは、ドドジ王国の王子。アベベは立派な王になるため、父の残したプログラムに挑戦する旅に出ています。プログラムを丹念に読み解き、すごろくのようなマスの上を旅するアベベを動かしていくと、そこに驚きの物語が現れます

 

まるで子どものように、指でおさえながらすごろくをやったよー。(笑)これ、子どもでも大人でも楽しめるよね。物語とイラストがまたカワイイっ!オススメです。(・∀・)

 

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「向田邦子の本棚」(向田邦子)

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人の本棚って気にならない!?どんな本があるんだろうって。その人の人生や脳みその裏側がレントゲンで見られるようで興味あるよね。(・∀・)
 
さてこの本。「本屋の女房になりたかった」著者の生誕90年、今はじめて触れる作家の原点!向田邦子が遺した膨大な蔵書から、脚本、エッセイ・小説の糧となった本、自身が選んだ「食いしん坊に贈る100冊の本」、アート、旅や猫の本など、貴重な本の数々を撮り下ろしカラー写真で紹介する。ほかに本をめぐるエッセイ、単行本未収録エッセイ・対談など多数収録」そのエッセンスを紹介しよう。
 

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【男の告白】
 
男がなぜゴルフや野球などの球戯に熱中するかーこれについて面白い意見をいった人がいました。まるいものは、男にとって、あまえられるお母さんだというのです。子供の頃、しゃぶったり、噛んだりしたお母さんのおっぱいなのです。やがて男の子は、ビーダマであそび、横丁野球に熱中し、アンパンをたべ、ふっくらした女の子のお尻にドキドキして、おとなになるというんですが。カンケイないかな?
 
とにかく、男の背中ー首から肩にかけての曲線と表情は、女の子のようにサイズで勝負こそしませんが、もっと雄弁になにかを告白していることが多いものです。
 

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▲「食いしん坊に贈る100冊の本」
 
男の手。無口な男でも,手はなかなかおしゃべりなものです。ホテルのダイニング・ルームで、フルコースを食べる男の手。物慣れた様子でナイフとフォークを扱っていても、手は、こんなことを呟いています。こうシャチほこばって食べたんじゃ、ものの味もわかんないや。あとで駅前のやきとり屋で口直ししよう」
 
それにくらべて、お茶漬け屋、おにぎり屋で割りバシを割る男たちの手の、なんとリラックスしていることか。私に金持の叔母さんがいて、一億円ばかり遺産をくれたら、男の手と女の手だけで、映画をつくりたい。

 

いいなあ!写真の二匹のニャンコを抱いた向田さん。女優みたいだなあ。誰が撮ったんだろう!?この100冊全部読破したい。オススメです。(・∀・)

 

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「カーン博士の肖像」(山本茂)

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最近、読むボクシングにハマっている。ファイティング原田の物語、良かったなあ〜!
コレ、コレ、この本っ!
 
この本の冒頭にある日本のボクシングの歴史のなかで日本人初の世界チャンピオン、白井義男の話が印象的だった。引退寸前だった白井を見たGHQカーン博士が、彼の才能を見抜き、コーチになりチャンピオンに導いたエピソード!我々世代でも白井義男を知らない、知らなさ過ぎるっ!!!そのカーン博士の人生とは!?そのエッセンスを紹介しよう。
 
・それから約一週間、彼はランチもとらずに、このボクサーが現れる時刻になると、ホールにはりついた。そして六日目、パッと閃くものを感じた混沌たる疑問の闇に光がさした。
 
「私が迷わされ、研究しいていたボクサーは、世にも稀な、素晴らしい素質ーそれは完全なナチュラル・タイミングであって、世界一流のボクサーの中でも、この素質を備え持ったものは、指折るほどしかないーに恵まれた青年だったからである。ナチュラル・タイミング、多くの選手は、その幾分かを恵まれるか、あるいは、全然恵まれていないか、そのどちらかであるが、いずれにしても、それは先天的なものだ」
 
ナチュラル・タイミングとは、いってみれば相手との距離を測定し、正確に加撃するために、鋭い自己の神経と肉体との働き、それもその行動の一こま、一こまを、すべての筋肉に、針の先ほどの狂いもなく一致させ、完全な、行動に移せる能力なのであって、それが具体的に表示されたものは、無理のない滑らかな動作となり、スピードを生み、正確さをもたらし、バランスを保ち、そして怖るべき打撃力となるのである」
 
「あのボーイはチャンピオンか?」博士の指さす先を見た。白井義男だった。
「いや、チャンピオンじゃないです」そばにいた連中がゲラゲラと笑った。軽い嘲(あざけ)りのニュアンスがあった。博士は意外そうに首をかしげた。
ほほう、私にはとても良い選手に見えるがねえ。いまはチャンピオンでなくても、あのボーイは必ずチャンピオンになるよ」また誰かが笑った。白井はスタミナがない。坐骨神経痛で引退寸前だ。白井がチャンピオンになる可能性はまったくない。誰しもそう思っていた。
 

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「ミスター・シライ、私がキミのコーチになろう。キミには素晴らしい素質がある。私はそれを引き出してみたい。二人でやってみないか」腰痛と将来性への不安の中にいた白井は、ワラをもつかむ思いで、その通訳される言葉を聞いた。答えは一つしかない。「イエス白井は言った。
 
「ヨシオ、おまえはこのタイトルマッチに勝つんだ。日本はアメリカに戦争で負けた。いま日本が世界に対抗できるのはスポーツ以外にない。自分のために戦うと思ってはいけない。自分ひとりのためなら、苦しくなったら諦めてしまう。しかし、バックに全国の日本の願いがあることを忘れるな。」
 
スゴイなあ……戦後まもなくで世界チャンピオンの価値が今とは比べものにならないくらい高かった時代。この出会いって奇跡だね。ボクシングファン、格闘技ファン必読っ!超オススメです。(・∀・)

 

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「無名仮名人名簿」(向田邦子)

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またまた読んでいます、向田邦子さんの本。文章のいたるところに名言・至言が隠れている。
 
「なにげない日常や仕事先で出会った人々や出来事を鋭くも温かい観察眼とユーモアで綴る。大いにうなずき、笑いながら涙が出てくる不朽の名エッセイ集」そのエッセンスを紹介しよう。
 
 
・小学校の頃、お弁当の時間というのは、嫌でも、自分の家の貧富、家族の愛情というか、かまってもらっているかどうかを考えないわけにはいかない時間であった。当番になった子が、小使いさんの運んでくる大きなヤカンに入ったお茶をついで廻るのだが、アルミのコップを持っていない子は、お弁当箱の蓋についでもらっていた。蓋に穴のあいている子は、お弁当を食べ終わってから、自分でヤカンのそばにゆき、身の方についで飲んでいた。私がもう少し利発な子供だったら、あのお弁当の時間は、何より政治、経済、社会について、人間の不平等について学べた時間であった。残念ながら、私に残っているのは思い出と感傷である。
 
女子供のお弁当は、おの字がつくが、男の場合は、弁当である。
 
・ポケットにしまっておいたマスクを鼻にもっていったときの、寝臭いのような息の匂い人懐かしいような湿った匂いを思い出した。
 
天の網はまことに不公平である。まるで蝶々かとんぼのように、小さな嘘をついた女の子はつかまえるが、四億五億のほうはお目こぼしである。もっとも天網といいうことばには「かすみあみ」という意味もあるという。いつの世でもかかるのは、小さな小鳥だけなのもしれない。
 
私は万年筆を三本持っている。三本の中で一番書き馴れたのを本妻と呼び、次に書き易居のを二号、三番手を三号と呼んでいた。この本妻も二号も、他人様からの掠奪品である。
 
「キノネエ醤油」という看板をみかけて、随分謙遜したものだと感心したら、キノエネの間違いであった文章でも、横書きのものは、一度自分の頭の中で縦書きに直して読んでいる。
 
祖父は、愚痴をこぼす代りに、おみおつけのお椀が真赤になるまで、とんがらしを振りかけたのだ。腹を立て、ヤケ酒をのみ、女房と言い争う代りに、戦争をのろい、政治家の悪口をいう代りに、鼻を赤くして大汗をかいて真赤なおみおつけをのみ下していたのだ
 
氷を買いにゆく時は、往きはゆっくり帰りは急げ、豆腐屋はその逆で往きは急いで帰りはゆっくり。子供の頃、祖母からこう教わったが、どの家にも冷蔵庫があり、豆腐はスーパーでパックになったのを売っている昨今では、役に立たない教訓になった。第一、子供がお使いに歩いている姿を見かけなくなった。
 
女学校時代のことだが、クラスでただひとり、掃除当番を免除されている人がいた。別に体が弱いわけではなく、ヴァイオリンを習っているので、指が固くなるといけない、というのがその理由であった。一人だからいい。だが、もし全員がヴァイオリンを習って、掃除免除にして下さいと願い出たらどうするのだろうと思った記憶がある。
 
・人間と人間のつきあいも、ちょっとつきあって、あの人は判ったわ、などと思うことは、トルストイ源氏物語のほんの一部を読みかじって、判ったと思い込むことに似ているところがある。
 
人形遣いは無表情である。その無表情の中に絶妙の表情がある。目立ってはいけない黒子の抑制の中にほんの一滴二滴、遣う者の驕りがないまぜになって、押えても押えても人形と同じ、いやそれ以上の歓びや哀しみや色気が滲んでしまう。私はいつも人形を見たの人形遣いを見たのか判らない気持で帰ってくる。
 
女の髪は夜は冷く重くなる。寝苦しい夏の夜も、汗ばんでいるのは地肌に近い生際
だけで、女のお尻と髪はいつもひんやりと冷いのである。それでなくても昔の夜は暗かったから、指先と匂いと朧な月の光で恋をした。演出と小道具に心を砕けばたいていの女は美女になれた。幸せなひとは、たったひとつの欠点を気に病むが、あまり幸せでないひとは、たったひとつの自慢のタネにすがって十分楽しく生きていけるのであろう。
 
「五歳のときなにしてらした」とたずねたら倉本聰氏は、人の倍はありそうな大目玉で、「ぼんやりしてた」と答えてくださったのである。たしかにあの時分は、テレビもマンガもなかった。いま、ぼんやりしている五歳の子供はいるのだろうか。
 
「待っていたら、席なんかひとつもないのよ。あんた、女の幸せ、とり逃すよ」
 
駅で自動券売機から切符が出ない時も同じで、まずひとつふたつ殴ってみる。これは私だけではなく、今の日本人の半分は、特に戦前・戦中派と呼ばれる年格好には多いのではないだろうか。機械が故障する、間違えると、ブン殴りながら、少しほっとする。美人で出来のいい女房を持ち、いつも頭が上がらないでいた男が、やっとひとつ欠点を見つけ、叱言(こごと)を言いながらほっとしているのと似ている機械を憎み愛し信用して「人」としてつきあっているところがある。ただし、新しい機械を創り出すのは、どんな時でも機械を殴らない男たちである。
 
・辞書を引いていて気がついたのだが、隣り同士として考えると、随分面白い組合せでならんでいる。「恋女房」と「小芋」がならんでいる。「手文庫」と「出臍」、「左派」と「鯖」、「恋愛」と「廉価」、「ハネムウン」と「はねまわる」、「結婚」の隣りは「血痕」で、ドキッとしてしまう。
 
志ん生の落語のマクラ「おっかなくて臭くてうまいものは?」「鬼が便所で豆を食ってる」
 
・私はこの三年ほど、机は使ったことがない。人並みに机は持っているのだが、本や台本を積み上げてあるので、使いものにならない。小学生のとき、私は机という字と枕という字をよく間違えたが、私のとって机は本当に枕なのである
 
「取替えてかえら、やっぱり前のほうがよかった、と思うことがあるのよ」「いっぺん取替えることを覚えると、また取替えたくなってしかたがないの」
 
・うちの甥は、やっと口が利けるようになった頃、数字の一を見てNHKと言った。テレビのチャンネルを先に覚えてしまったのである。
 
たまに大きいことを考えようと上を見ると、いい格好の雲が浮かんでいる。理想とか夢とというのは、こういうものだな、と納得がゆくのだが、あまりにも大き過ぎ離れ過ぎているち、いまひとつ取りとめがなくてピンとこない。私のような小物には雲よりも風船がいい。糸をつけて自分の手で持ち、下から見上げることが出来る。パチンと破けても、また別の風船を見つければいい。ノイローゼだ自殺だとさわぐことなく過ごせる。
 

「お弁当」「拝借(口紅、眉墨、靴下)」「マスク」「天の網(茶店ハムレット)」「縦の会」「唯我独尊(キネ子と金冠)」「七味とんがらし」「転向」「普通の人」「孔雀(クズ屋)」「特別」「長いもの」「人形遣い」「正式魔」「黒髪(時は鐘なり、髪と女の幸せ)」「白か黒か」「席とり」「キャデラック煎餅(会社のカレンダー)」「殴る蹴る」「スグミル種」「隠し場所(ダイヤ入りの氷)」「隣りの責任」「ポロリ」「桜井の別れ(森繁久彌の「近眼のパチンコ」)」「麗子の足」「パセリ」「笑う兵隊」「女子運動用黒布襞入裁着(ひだいりたつつけ)袴(ブルマー)」「次の場面」「自信と地震」「目をつぶる」「蜆(成長に60年)」「コロンブス」「臆病ライオン」「鍵」「眠る机」「メロン」「お取替え」「青い目脂」「おばさん(靴磨き)」「金覚字(お嬢さんとお嫌さん)」「カバー・ガール」「キャベツ猫(夜店のヒヨコ=松坂慶子)」「道を聞く」「目覚時計」「静岡県日光市」「ハイドン」「金一封(ご不浄のご祝儀)」など。
 
いいなあ。普遍の文章だね。全作品読破までまだ3分の1。オススメです。(・∀・)

 

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