またまた興味深い本を読みました。トヨタ、松下を初め、日本を代表する同族企業。高度経済成長期に急激な成長を遂げた企業は、「○○家の家業」から「社会の公器」へと変わっていく。度重なる増資により、株式所有率が低下した創業者一族の立場は、非常に微妙なものになっていくのである。そして、「巨大企業の社長」という椅子をめぐり、虚実の駆け引きが繰り広げられることになる。世襲と脱同族の攻防を15の事例で描き出す。そのエッセンスを紹介しよう。
・「同族企業」とは何か。最低でも二つの条件が思い当たる。
1 創業者一族が当該企業の社長を世襲し、経営陣を掌握していること
2 世襲の前提として、当該企業の過半数の株式をおさえていることである
ところが、本書では取り上げる巨大企業の創業者一族はほとんど株式を所有していない。世襲の前提(株式により支配)がすでに崩れているのに、世襲を続けているところが日本の同族企業の特徴である。
・豊田一族は三十代の若さで取締役に登用されるケースが多く、創業者一族として特別待遇されているようだ。しかし、豊田一族として優遇されるのは取締役就任までで、社長への道が約束されているわけではない。
・よくいわれるように、パナソニックは創業者の孫・松下正幸を副会長にして、改革派・中村邦夫を社長にして劇的に生まれ変わった。これに対して、三洋電機は創業者一族による支配に固執した結果、その機を逸し、パナソニック陣営に下ることになったのである。
・西武の創業者・堤康次郎は、終戦後、外国人を泊めるホテルがないので、皇族や華族の大邸宅を改造しホテルを銃数カ所造った。その後、これを全部取り壊して、鉄筋の新しいホテルを次々に造った。そして、それらの場所が旧皇族に由来していることから、これらのホテルをプリンスホテルと命名した。
その他、「トヨタ自動車・豊田家」「パナソニック(旧松下電器産業)・松下家」「三洋電機・井植家」「阪急電鉄(阪急阪神ホールディングス)・小林家」「東京急行電鉄・五島家」「西武鉄道&セゾングループ・堤家」「大正製薬・上原家」「鹿島建設・鹿島家」「ブリジストン・石橋家」「味の素・鈴木家」「出光興産・出光家」「日本生命保険・弘世家」「武田薬品工業・武田家」「松坂屋・伊藤次郎左衛門家」「マツダ(旧東洋工業)・松田家 」など。
日本経済の黎明期から高度経済成長にいたるまでの各企業のドラマは壮絶だねえ。創業者ってスゴイなあ。オススメです。(・∀・)