- 作者: 中村計
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2011/07/28
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さて、2007年、夏の甲子園の決勝。佐賀県立佐賀北高校の大逆転劇は今でも記憶に新しいよね。そう、あの真夏の大逆転劇は、起こるべくして起こったのだ!7回までわずか1安打に抑えられながら、8回、まさかの満塁本塁打でひっく り返し、全国優勝を果たした佐賀北高校は、前年夏、県大会1勝もできなかった「無名の公立校」が、なぜ強豪私立に連続して勝利し、日本一になれたのか?巨大な象をも倒す「最強のアリ軍団」と化したチームの、知られざる秘密とは?そのエッセンスを紹介しよう。
・監督百崎敏克はいう。「俺が求めているのは、でっかい象を、ちっちゃいアリで倒すイメージ。一対一なら負けるけど、束になれば倒せないはずはない。相手を見ただけでビビるやつは絶対に許さない。おまえは足をかじれ、おまえは砂をかけて目つぶしをやれ、おまえは後ろに回ってタマをかじれ、と。言葉は汚いですけどね」
・アメリカに「陸のピラニア」と恐れられいてる軍隊アリという種類のアリが生息している。そのアリは数万匹から多いときには数千万匹で行動し、ときにはライオンや象なども倒して食べてしまうのだという。最強のアリ軍団−。佐賀北から浮かび上がってくる像は、まさにそんなイメージだった。
・百崎は、入部した選手に、まず二つのことを約束させる。毎日、野球日誌を提出することと、靴をそろえることだ。「全部言う必要はないんですよ。ひとつのことができれば他のことにも波及する。日誌と靴も、それがねらいでもあるんです。だから守れないやつには、俺は二つのことしか言っていないのにそれを守れないんだったら辞めろとはっきり言いますよ」
・「妥協しないこと。これに尽きるんじゃないですかね。ついつい許してしまうとか、流してしまうとか、そういうことをしないことが大事。365日もあると、一日ぐらい、まあいいかって許してしまうときがある。でも、靴はそろえていないのを見たら、それだけは許さんぞと。綻(ほころ)びなんて、いつでも最初は小さいものじゃないですか」
・それは覚悟の共有と自分を客観することの勤めだ。自分を知って役割を理解して、自分の穴を掘る。すべてはそれぞれが自分自身から解放されたためだ。野球に限らず。スポーツとはそういうことではないだろうか。自分の個性、自分の肉体、自分の感覚、自分の才能、自分の技術、自分の環境、自分の命運、そうしたものから自分自身で自分を解放する。そこには自分の限界を超えることの興奮と快感がある。その楽しさを百崎は選手たちに伝えたかったのだ。
・これまで「運」と呼ばれるものは、コントロールできないもの、もしくは、宿命的に持っている人といない人がいるのだと思っていた。だが、全員でひたむきに戦う姿勢を見せていると、ベンチの空気だけでなく、スタンドの空気まで変わる。見ず知らずの人たちまでもが自分たちを応援してくれるようになる。すると不思議なことに、相手チームにミスが出たりするのだ。「あのチームはついてるとかいいますけど、違うんですよね。そうしていると、偶然じゃなくて、あきらかに球場の空気が変わるんですよ」
・佐賀北の攻撃陣の特徴は打率の低さだった。甲子園におけるチーム打率2割3分1厘は、優勝校としては1974年の金属バット採用以来、もっとも低かった。なお、最高打率は2004年駒大苫小牧の4割4分8厘だ。実に2割以上の開きがある。決勝戦にいたっては広陵が13安打だったんい対し、佐賀北はわずか5安打ちょ半分以下だった。だが、。四死球数48個は大会新記録だった。安打数の少なさを四死球と精度の高いバント戦術で補っていたのだ。
・余白を残す野球−。それこそが百崎が目指す野球なのだ。「自由奔放も嫌いだけど、押さえつけるの、もっと嫌い。何々野球なんて言われるの、絶対イヤ。百崎野球とかね。そんなこと言われるようになったら、逆のこと、やるよ」
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