母校・明治大学の良いところは、OBのつながりの強いところだ。先日港区地域支部の総会が行われた。いつもながら諸先輩、後輩とのひとときは本当に楽しい。その中で明治大学名誉教授の吉田悦志先生の講演が素晴らしかった!!!阿久悠先輩のことはけっこう知っているつもりでいたが、知らないエピソードと分析が実に面白かった。そのエッセンスを紹介しよう。
・1999(平成11)年9月16日帝国ホテル「富士の間」
「おまえの歌は品がいいね」という父・深田友義の言葉( 品格の力)
「君の文章は横光利一を思わせる」 という小学校の伊藤昌隆先生の言葉(表現の力)
「あなたは大丈夫よ」という妻となる前の小島雄子の言葉( 応援の力)
この三つの言葉が自分の詞と人生を支え続けてくれたと。 阿久悠をの詞と人生における『奇跡の力』だと思う。
・映画『極道の妻たち』の主題歌であってもヤクザは描かない。 一対の男女が到達する至高の愛の讃歌を描く。 和田アキ子が歌った名曲「抱擁」である。あるいは「大日本帝国」 という戦争映画の主題歌も、戦争を描かない。 美しい日本の山河やそこに生きる日本人の魂を詞に書いて五木ひろ しが歌う『契り』。阿久悠の詞は、 法や秩序を突き破ることはない。 時計の振り子がどんなに振り切れようともフレームを破壊的に突き 破ることはない。
・中学二年の時結核を患った。 天井を見つめながら深田少年は脅威の想像力を養った。 ひとつの単語「蝶」の連想ゲームをするように。「浮気者、短命、 はなかい、ホステス、ストリッパー、蜜、標本。コレクター。 マダム・バタフライ。花畑。弱い。誘惑。貴族。売春婦。刺青。 ステンド・グラス。灯。パリ。ニューギニア。靴下どめ。モスラ。 ミヤコ蝶々。原色。快楽。溺れる。」 という言葉の乱舞を想像力によって脳裏に刻む喜びを知った。
・また転居を繰り返した経験が、 移ろって行く人を描く作詞家にした。都はるみの「北の宿から」 も石川さゆりの「津軽海峡・冬景色」も八代亜紀の「舟唄」も、 描かれる女や男はみな移ろって他所へ行く。宿から出て行き、 海峡を渡り、中腰で酒をポツポツと飲む。 彼らが深田少年の心の姿と重なる。
・卒業後、広告代理店宣弘社に入った。そこで小島雄子と出会う。 女医社員たちに深田公之の評判は芳しくなかった。 暗いとか貧乏そうとか分からなさそうとかいうネガティブな印象を 持たれた男子社員の筆頭が阿久悠だった。 そんな時後輩の社員に小島雄子がいて、深田に「 あなたは大丈夫よ」と声をかけた。 応援の声が阿久悠の背中を押した。
・阿久悠は、あらゆる人たちに「応援歌」を贈り続けた。 五千曲に及ぶ詞から応援歌でないものを探すのは難しい。 中にある女性や男性が、人生をリセットして生き直す、 いわゆる立ち直りの歌が多い。『ジョニィへの伝言』では、「 あなたは大丈夫よ」。応援の力が「わたし」を押す。『 ピンポンパン体操』を幼い子供たちに贈り、「青春時代」 を心に棘ばかり抱える青年たちに贈り、「青春時代」 を心に棘ばかり抱える託つ人たちに贈る。 阿久悠の応援の力は奇跡である。
吉田先生の講演で勇気づけられた。応援の力をいただいた。ああ〜!もっと話を聞きたかった〜!!!!偉大な先輩を誇りに思う。「流し」でも「阿久悠先生メドレー」を組み立てよう。(^^)