・『姫』をオープンしたのは1956年8月8日で、 八というのは末広がりでいい日なのよ、 そんなことを繰り返し喋った自分の台詞までも。
・レコード大賞第一回受賞曲の『黒い花びら』の水原弘。 連れは勝新太郎や隆盛を誇っていた日活の俳優たちで、 白いスーツの小林旭が肩で風を切って並木通りを流して歩き、 石原裕次郎が長い脚の下方をもて余すようにスツールに腰をかけて 、ビールをぐい飲みしていた。その横で金田正一(カネヤン) が大声で笑っていて、 ぶすりと不機嫌そうに唇をむすんだ力道山が、 億のテーブルで一人飲んでいる。この人は怖かった。 酒乱だったからだ。
・プロ野球選手の出入りも多くて、パ・リーグでは西鉄と南海勢。 飛ぶ鳥を落とす勢いのエース杉浦忠と野村克也捕手。 チョロと呼ばれていた広瀬遊撃手。みな懐かしい友達で、 いまだに神宮あたりでノムさんに会うとたちまち当時の話と顔つき になってしまう。
・なかでもうんと親しかったのはちぎっては投げ、 投げてはちぎりの魚河岸出身の東映土橋正幸投手だ。 土橋さんとは赤坂、新宿と夜毎遊び回り、 果ては駒沢球場の合宿にまでホステスたちと一緒に押しかけていっ た。張本勲、山本八郎と暴れん坊で鳴らした連中の揃い踏みの、 まさに梁山泊。
いいなあ!昭和のこの時代。よくぞ書き残してくれたねー!オススメです。(・∀・)♪