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小野塚テルからのメッセージ
では、今日の一冊。
以前から気になっていた本。ようやく読みましたっ!!!スゴイわ!!!感動的だわー!!!ユーミン誕生秘話だわー!!!初めて『翳りゆく部屋』と『あの日にかえりたい』を聴いた感動が、あの時代がよみがえる〜!!!
「1970年代、シンガーソングライターとして十代でデビューを飾った荒井由実。のちに日本最大の女性ポップスター、松任谷由実=ユーミンとなる煌めく才能はいかにして世に出たか――。八王子の裕福な呉服店に生まれ、ピアノに触れ、清元を学び、ミッション系の私立女子校に入学。グループ・サウンズが一世を風靡するなか、由実は高度経済成長期の東京を、好奇心いっぱいに回遊しはじめる。米軍基地、ジャズ喫茶、ミュージカル『ヘアー』、伝説のレストラン キャンティetc.……次々に新しい扉を開けて、才能を開花させていく。少女・荒井由実のデビューまでの軌跡をノンフィクション・ノベルとして描き出す。名曲「ひこうき雲」が生まれるまでーー」そのエッセンスを紹介しよう。
・なんといっても八王子は、 立川基地をとおしてアメリカと繋がっていた。
・(母親の)佳枝は、由実の名前についても「由良之助の“由” に実るの“実”」 と説明するのが決まり文句になっているくらいだ。 由良之助とは大石内蔵助のこと。由実というな名も芳枝がつけた。 偏とつくりで縦に割れる字を避け、左右対称の漢字から選んだが、 ありきたりの「美」ではなく「実」というところが芳枝らしい。 みんなと同じは嫌なのだ。
・みんなと同じは嫌。その気質は、 すでに由実にも受け継がれている。由実は、 他の子とは違う色のランドセルを誇らしげに背負って学校に通った 。
・「PROCOLHARUUM “a whiter shade of pale”」 この曲が、由実の運命を変えた。
・「……あ」由実はなにかに気づく。『青い影』 の一音一音に神経を集中させながら、 両手の指先がいつの間にかピアノを弾く形になっていた。 指の形を変え、由実はなにかを探す。そしてこの瞬間、 音楽の謎を解くヒントを見つけた。音の重なりが、 変遷しながらこの美しいメロディラインを作っているのを発見した のだ。由実は居ても立っても居られず部屋を飛び出した。 階段を駆け下りて向かったのは、一階の応接間だ。
・ガーシュウィン製のアップライトピアノの前に座り『青い影』 の出だしを思い浮かべながら、鍵盤の上に指を置く。 耳で覚えた前奏。静かに心地よくはじまる持続音、 半拍遅れて加工している音の流れは、 あるべきところにあるべき音がきた、とてもきれいなメロディで、 クラシックピアノに慣れ親しんだ耳にはたまらなく快楽的だ。 左手で低音が淡々と下降していくのを弾くうちに、 由実はなにかを思い出していた。はじめて聴くはずなのに、 すごく懐かしい。遠い記憶を呼び覚まされたような、 不思議な感覚。
・ああ、やっぱりそうだ。プロコム・ハルムの『青い影』は、『 G線上のアリア』を下書きにしているんだ。見事に、ポップ・ ミュージックに置き換えているのだ。 二つの曲に共通するエレメントに自力でたどり着き、 クラシック音楽とポップスはこんなふうに接続できるんだと、 由実は天啓に打たれたようになった。そっか、コードなんだ! コード進行でできているんだ、ポップ・ミュージックは。 発見した瞬間、由実のなかでカチッとなにかがハマり、 回路が拓かれる感触がした。由実は本を閉じて、こう思った。 ーだったら、わたしにも作れるんじゃない?
・最初、メロディは鼻歌だった。 どこへたどり着くか知れないあやふやな、 細い糸のようなものだが、 コードの行方が自然とあるべき旋律を導き出してくれて、 だんだんと確かなものになっていく。わたしの生み出した、 わたしのメロディ。音楽は聴いて楽しむだけじゃなく、 自分で作ることもできるんだ。わたしにもできるんだな。 単純だけど、偉大な閃き。コペルニクス的転回。大大大転回だ。
・「きみ、この曲、どうしたの?」「誰の曲?」「クラシック?」 呆気にとられ、楽屋がざわつきだす。由実はなんてことない顔で「 わたしが作ったの」と言った。「わたしの曲よ」
・由実は作曲に目覚めてからというもの、実のところ、 自分は天才だと思っている。日常的にふと、 メロディが湧き出てくることがあった。 生まれたがっている音楽の種子が、 天からふわりと舞い降りてきて、ピアノの前に座る由実の肩に、 やさしくタッチするみたいなことが。そいういうとき由実は、 まったくの無色透明になり、 口寄せする巫女のように美しいメロディを口ずさんだ。 まだ世界のどこにもない、まったく新しい音楽。せつなくて、 悲しくて、けれど朗らかな。とても感傷的な。 それは十代の少女にしか感知できない、 とびきり繊細でセンチメンタルな世界だ。 世間を知らない若い娘にしかわからない、 真理とでもいうべきもの。由実は夢中で作曲した。
・中学三年生の由実は、溢れ出るメロディを五線譜に書き留め、 Yumiとサインを入れながら、 自分の才能はこれなんだと確信している。わたしは天才なんだ。 自分の作品を作るアーティストになるんだ。 いつか自分が作った歌を、世に出すんだ。わたしは、 作曲家になりたい。だけどそれはこの時代、 前例のないことだった。
・作詞家や作曲家の先生は、みんな男だ。 女性の職業作詞家なんて、 安井かずみくらいしか名前が浮かばない。 作曲家に関しては皆無といっていいくらいだった。 活躍する場が用意されていない。 由実は自分は天才なんだという自負心に反して、 将来の夢を訊かれても、明確な答えが用意できていなかった。 どうすれば世に出られるかなんて、検討もつかない。
・ユーミン、ユーミン、ユーミン。 由実はその名前をすっかり気に入った。その日から、 由実は自分で作曲した楽譜に、Yumingと署名を入れた。「 g」を足したのは自己流のアレンジだ。 現在進行系のingで終わる名前は、自分をどこまでも遠くまで、 前へ前へと進めてくれる気がする。名前がつくと、 別の自分が誕生したみたいだった。
・ようやく日本で、本物の十代の少女が、 リアルな心理を歌うときが来たのだ。
・「フォークとはまるっきり違いますよね」
「違うね」と村井。
「空とか雲とか雨とか霧とか、 ずっと濡れてるみたいな歌詞なのに、全然湿っぽくない」 それから、歌の中に色彩があるとも思った。絵画的で、 風景が見える。曲に質感がある。 ピアノの弾き語りだけでもそれが充分に出ている。「 絵の勉強をしてる子なんだ」「しかし不思議だなぁ。 音楽を専門的に勉強したわけじゃないのに、 やっていることは全部、理論的には合っているというか、 理にかなってますよ」
・テクニックで作られた曲はつまらない。けれど、 音楽の美しさには法則性があり、 それを無視してはハチャメチャで耳障りなものにしかならない。 決まりを守ってなおかつ破る、それが難しい。 ところが荒井由実の楽曲は、 ちょっとした転調にも天性の閃きのようなものがあった。 しかもそれが、音楽的理論にもきっちり合っている。
レベルが違い過ぎるけど、ワタシが音楽を『流し』をやり始めたきっかけと似てるなあー。ユーミンファン、音楽ファン必読だね。超オススメです。(・∀・)♪