「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「筒美京平 大ヒットメーカーの秘密」(近田春夫)

ワタシが作曲家として、大尊敬している筒美京平センセイ。毎回の流しで京平先生の歌のリクエストがなかったことはない、と言い切れるほどヒット曲が多いね。(^^)

「筒美のシングル売り上げは7560万枚で、2位の小室哲哉(7184万枚)を凌ぐ。作ったのは3000曲近い。名実ともに日本一のヒットメーカーだ。彼の作曲家としての凄さは、最新の音楽潮流をとりこんで、一般人にわかりやすい音楽として加工し続けたところにある。近田春夫の「筒美京平論」は、本書の骨子となる」そのエッセンスを紹介しよう。


・(近田)都倉(俊一)さんの書く旋律は、どれも定規で引いたように直線的。アタックが強い。一方、京平さんの書くメロディーは、すべて丸みを帯びている都倉さんの楽曲には、阿久さんの言葉が上手くハマるんだよ。阿久さんは広告代理店出身ということもあって、歌詞のコンセプトも明確で、あらかじめ着地点がはっきりしているんだよ。
 
・(近田)平山三紀も郷ひろみもそうだけど、声に唯一無二の特徴があるよね。京平さんは歌手の個性を判断する際に、歌の上手い下手よりも、どういう声を持っているかを重視していた気がするんだよ。努力して得たスキルよりも、もともと持っていた面白い資質をいかに活かすかに力を注いでいた松本伊代もそのケースに当たる。
 
・(近田)70年代の京平さんの曲を聴くと、イントロが始まった瞬間にワクワクするのよ。そしてその後パッと出てきた第一声の日本語の響きがたまらない。この構造は、京平さんが築き上げた一つの揺るぎないモデルだと思うんだよ。この時代、特に女の子のアイドルの曲をずっと書いていく中で、これが大きなセオリーとして整理されていった。そのことが、その後の京平さんのロングライフにつながったんだと思う。
 
・(近田)京平さんは、その官能性において、一般のリスナーを決して失望させることがなかった。一方では、同業者に対する無言のアピールも怠らなかったんだ。京平さんは、どれだけ分かりやすく聴こえる曲を書こうと、その根底には、厳然たる楽典的な素養と最新の洋楽に関する該博な知識があった。その事実を、常に同業者に知らしめていたわけ。俺なんかは、そこにすっかりハマっちゃったのよ。
 
・ー80年代の筒美京平を語る上で、松田聖子中森明菜に楽曲を提供していないという事実は非常に重だと考えられます。

(近田)やっぱり、あそこで京平さんにオファーしちゃうと、一世代前、70年代のアイドルのドメスティックな匂いがついちゃうから、それを避けた部分はあるんだろうね。
 
・(実弟・渡辺忠孝)京平さんの曲作りの根底には、ジャズがあると思います。基本は、ジャズのインプロビゼーションですよ。つまり、同一のコード進行から、いかに全然違うメロディーを生み出すかということが課題。だから、ジャズから学習したものはかなり大きいと思う。
 
つねに新しい才能はチェックしていたスタジオで僕に会うたび、「誰かいい作詞家いない?」とかいいアレンジャー知らない?」とか必ず尋ねてきたから。
 
・(橋本淳)「言葉が当たっていくように」とはよく言われましたね。ビートに合うように、という意味なんだと思います。そうそう、僕が人生で一番ショックを受けたのは京平さんのがピアノで弾く平山三紀「真夏の出来事」のリズムを聴かされた時のことなんですよ。三紀ちゃんは、ラララでいいから歌ってみてと言われても、全然歌えない。16ビートに近い「真夏の出来事」は、そのぐらい革新的な曲でした。
 
・(橋本)僕は、作曲するのに、京平さんが悩んでいる姿を見たことがない。1曲作るのにかかる時間は、せいぜい3分ですよ。要するに、肝はアレンジを頭で完成させることだから……。コード進行が自分の中で完成したら、もう、メロディーをその隙間に埋めていく。曲は3分、アレンジは最低5、6時間はかかる。他の作曲家と比べて思うのは、中村泰士さんにしても平尾昌晃さんにしても、易しいコードを使って、ギターを演奏して曲を完成させるという印象がある。でも、京平さんの場合はそうじゃない。論理的にビシッとやる。そこがすごいんだよね。
 
・彼の家に行っても、ステレオを目にしたことがない。いつもチープなラジカセで音楽を聴いているの。楽器にしたって、ヤマハシンセサイザーが1代あるぐらいで。万事、執着心がない。本も読み終わるとすぐにあっさりと処分しちゃう。だから、書棚に本がずらりと並んでいることはない。
 
京平さんがなくなって、ぽっかりと大きな穴が開いた感覚を覚えます。彼という存在は、太い線として日本の音楽の歴史を貫いてきた。歌謡曲であろうとそうでなかろうと、常に大きな比較対象としてそこにあったわけです。それがなくなっちゃって、これからの音楽界はちょっとした乱世を迎えるのかな、そんなふうに思いますね。
 
 
特に、聞きたいのは、『黄色いレモン』(藤浩一(子門真人))『恋の弱味』『逢えるかもしれない』『雨にひとり』(荒井由実)(郷ひろみ)『貴方の暗い情熱』(高田恭子)『赤毛のメリー』(ザ・ガリバーズ)『ビューティフル・ヨコハマ』(平山三紀)『強い気持ち・強い愛』(小沢健二)『女になって出直せよ』(野口五郎だなあ。
 
やっぱり筒美京平先生は偉大だ!これからも歌っていくんだろうなあ。オススメです。(^^)