「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「すごい言い訳!漱石の冷や汗、太宰の大ウソ」(中川越)

気のせいかもしれないけど、この数十年、テレビでの謝罪会見が増えたよね。多いよね〜!そのときに「言い訳」があると、良い若えもんが、「良い訳」するなんて、「良いわけ」ねえだろう!♪ といいたくなるよねー!♪(笑)
 
さてこの本。「人生最大のピンチを、文豪たちは筆一本で乗り切った!言い訳は言い方次第で、味わい深いものに変化するのも事実です。 フィアンセに二股疑惑を掛けられた芥川龍之介。手紙の失礼を体調のせいにしてお茶を濁した太宰治。納税を誤魔化そうとした夏目漱石。恋人との間で奇妙な謝罪プレーを繰り広げる谷崎潤一郎。浮気をなかったことにしようとする林芙美子。息子の粗相を近所の子供のせいにした親バカ阿川弘之……。文豪に学ぶ言い訳の奥義とは!?」そのエッセンスを紹介しよう。
 
・政財界、官界、芸能・スポーツ界、ついでにわが家も含めた人界はすべて、古今東西の、言い訳の花盛りです。言い訳は言い方次第で、味わい深いものに変化するのも事実です。その実例を文豪たちに求めました。彼らの手紙の中に見受けられる奇想天外、痛快無比、空前絶後のすごい言い訳を、本書でいろいろご紹介したいと思います。
 
夏目漱石は、37歳の頃、しきりにはがきに絵を描いて、友人に出しまくっていた頃のころです。昨日君の所へ絵端書を出した処、小童誤って切手を貼せず 定めし御迷惑の事と存候(ぞんじそうろう)。然し御覧の通の名画故切手位の事は御勘弁ありたし」意訳すると、〈きのう、君あての絵はがきの投函を、私の幼い子どもに任せたら、切手を貼らずに出してしまった。きっと君は切手代を取られて迷惑だったと思います。しかし、ご覧の通り私が描いた絵はがきの絵は、君を喜ばすすばらしい名画だから、切手代十銭ぐらいの不愉快は許してほしい。十銭で名画を得たり時鳥(ほととぎす)〉
 
短い詫び状ですが、ここでは言い訳が巧みに利用されています。一つは、注意不足な子供の仕業だから私に責任はないという言い訳で、もう一つは、君は十銭の切手代を支払っただけで名画を手に入れたのだから、私はむしろ感謝されるげきだと主張したうえに、かましい俳句まで添えた責任回避の口上です。
 
子供のせいにしたのは平凡ですが、感謝を強要する言い方は斬新で、相手は意表をつかれ苦笑したにちがいありません。しかも漱石の絵は質朴で、画才を衒(てら)う名画には程遠かったので、友人の苦笑はすぐに破顔大笑に変わったはずです。ちょっと恐縮して相手を油断させておいてから、急に襲いかかるように恩を着せ、ユーモアのプレゼントで免罪を獲得する、漱石ならでは珠玉の言い訳です。
 
言い訳は、苦境で発する言葉です。切羽詰まると人は、思わず素の姿を現します。裸の文豪が、言い訳の中には潜んでいます。本書を書きながら、既成のイメージとはかなり異なるフレッシュな文豪たちに出逢い興奮しました。夏目漱石は謹厳な堅物ではなく、上質なユーモアを主成分としています。中原中也は、やはり図抜けた言葉のファンタジスタです。(一人でカーニバルをやってた男)林芙美子は、圧倒的な超絶恋愛モンスターでした。
 
まさか、文豪たちも本になるとは思わなかっただろうねえ……!?(笑)オススメです!(・∀・)