気のせいかもしれないけど、この数十年、テレビでの謝罪会見が増えたよね。多いよね〜!そのときに「言い訳」があると、良い若えもんが、「良い訳」するなんて、「良いわけ」ねえだろう!♪ といいたくなるよねー!♪(笑)
さてこの本。「人生最大のピンチを、文豪たちは筆一本で乗り切った!言い訳は言い方次第で、味わい深いものに変化するのも事実です。 フィアンセに二股疑惑を掛けられた芥川龍之介。手紙の失礼を体調のせいにしてお茶を濁した太宰治。納税を誤魔化そうとした夏目漱石。恋人との間で奇妙な謝罪プレーを繰り広げる谷崎潤一郎。浮気をなかったことにしようとする林芙美子。息子の粗相を近所の子供のせいにした親バカ阿川弘之……。文豪に学ぶ言い訳の奥義とは!?」そのエッセンスを紹介しよう。
・政財界、官界、芸能・スポーツ界、 ついでにわが家も含めた人界はすべて、古今東西の、 言い訳の花盛りです。言い訳は言い方次第で、 味わい深いものに変化するのも事実です。 その実例を文豪たちに求めました。 彼らの手紙の中に見受けられる奇想天外、痛快無比、 空前絶後のすごい言い訳を、 本書でいろいろご紹介したいと思います。
・夏目漱石は、37歳の頃、しきりにはがきに絵を描いて、 友人に出しまくっていた頃のころです。「 昨日君の所へ絵端書を出した処、小童誤って切手を貼せず 定めし御迷惑の事と存候(ぞんじそうろう)。 然し御覧の通の名画故切手位の事は御勘弁ありたし」意訳すると、 〈きのう、君あての絵はがきの投函を、 私の幼い子どもに任せたら、切手を貼らずに出してしまった。 きっと君は切手代を取られて迷惑だったと思います。しかし、 ご覧の通り私が描いた絵はがきの絵は、 君を喜ばすすばらしい名画だから、 切手代十銭ぐらいの不愉快は許してほしい。 十銭で名画を得たり時鳥(ほととぎす)〉
短い詫び状ですが、ここでは言い訳が巧みに利用されています。 一つは、 注意不足な子供の仕業だから私に責任はないという言い訳で、 もう一つは、 君は十銭の切手代を支払っただけで名画を手に入れたのだから、 私はむしろ感謝されるげきだと主張したうえに、 厚かましい俳句まで添えた責任回避の口上です。
子供のせいにしたのは平凡ですが、 感謝を強要する言い方は斬新で、 相手は意表をつかれ苦笑したにちがいありません。 しかも漱石の絵は質朴で、画才を衒(てら) う名画には程遠かったので、 友人の苦笑はすぐに破顔大笑に変わったはずです。 ちょっと恐縮して相手を油断させておいてから、 急に襲いかかるように恩を着せ、 ユーモアのプレゼントで免罪を獲得する、 漱石ならでは珠玉の言い訳です。
・言い訳は、苦境で発する言葉です。切羽詰まると人は、 思わず素の姿を現します。裸の文豪が、 言い訳の中には潜んでいます。本書を書きながら、 既成のイメージとはかなり異なるフレッシュな文豪たちに出逢い興 奮しました。夏目漱石は謹厳な堅物ではなく、 上質なユーモアを主成分としています。中原中也は、 やはり図抜けた言葉のファンタジスタです。( 一人でカーニバルをやってた男)林芙美子は、 圧倒的な超絶恋愛モンスターでした。
まさか、文豪たちも本になるとは思わなかっただろうねえ……!?(笑)オススメです!(・∀・)