「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「ラブレター」(いわさきちひろ)

この本はスゴイなあ……。人のラブレターを盗み見したようだ。自分が書いたラブレターを人に読まれたら恥ずかしいよね……そんな思いを持ちながら読みました。しかも著者は絵本作家のいわさきちひろ!まさか自分の手紙が後世に書籍になるなんて思わなかっただろうねえ……。(笑)

「愛と情熱と、やるせなさと孤独を、赤裸々に綴った「愛の記録」全篇初公開!」そのエッセンスを紹介しよう。


いまゝでは、孤独とゆうことを知らなかった結婚した人でなくてはとうていそれはわかるものではない。私は孤独だ。喜明は私をすてたのだろうか。そんなことはあり得ない。きっとない。明日にでも私に胸をおどらすような手紙がくるにちがいない。一日に一食のごはんものどに通らない。そしてこんなに疲れてやせ細ってしまった。約束通り一ヶ月すぎればあえると思っていた。いまではその確信がゆらいでいる。
 
けれどけれど信じています、喜明を。私は気がヘンになりそうだ。せめて書くことで気が安まると思ったけれど、もう気が遠くなりそうでペンがもてない
 
お母さまチヒロをたすけにきて下さい 涙がながれてしかたがない
 
三十年来私はこんなに人を愛したことはないもの。
 
・私に力がなくて無力なとき(いつもそうなのでだろうけれど)人の心のあたたかさに本当に涙ぐみたくなる。この全く勇ましくも雄々しくもない私のもって生まれた仕事は絵を書くことなのだ。たくましい、人をふるいたたせるような油絵ではなくて、ささやかな絵本の絵描きなのである。
 
そのやさしい絵本を見たこどもが、大きくなってもわすれずに心のどこかにとどめておいてくれて、何か人生のかなしいときや、絶望的になったときに、その絵本のやさしい世界をちょっとでも思いだして心をなごませてくれたらと思う。それが私のいろんな方へのお礼であり、生きがいだと思っている。
 
・男子が一歩外に出ると七人の敵がいるそうで、女も一人前になると二、三人の敵はいるようです。みんな仲間よ」私は自分の心にいいきかせて、なつかしい、やさしい、人の心のふる里をさがします。絵本の中にそれがちゃんとしまってあるのです。そして私が描きかけている絵本の中にも。だから、私は一年中のどこかでいつも絵本のことを考えているにちがいありません。この“絵本のしあわせ”が、みんなの心にとどくように、もし私が死ぬまでこうして絵本をかきつづけていけたとしたら、それは本当にしあわせなことです
 
・夫喜明との愛を綴ったこの日記は、二人が結婚して半年後の1950年6月29日から始まっていますたった一週間、夫から手紙がこないというだけで仕事も手につかず食事も喉を通らず、喜明は私をすてたのだろうか」と思い悩むちひろ。一方で彼がいなくては絵がかけない。絵をかける状態にしてくれる人、それは喜明。だからこそもっとも喜明は私につりあう人だ」と記すちひろ。後年のちひろからは想像すらできないほど、情熱的です。
 
ちひろには、戦前、二十歳で婿養子をとって結婚しながら、どうしても相手を愛することができず、夫婦生活を拒みつづけ、結果的に相手が自殺するという辛い経験がありました。「二度と結婚しないの。私は絵と結婚する」と妹に語っていたちひろが、三十歳を過ぎて、初めて自分のほうから愛した男性が、七歳半年下の松本喜明でした。
 
ちひろの絵を見ると、ふっと温かいものを感じる」という感想をよく耳にします。子どもや小鳥、草花に注がれたちひろのまなざしに、これから花開く小さな命への限りない愛を感じとるからでしょうか人を愛せなかった苦しさ、愛したがゆえの苦しさと喜びを経て、自分のほうから人を愛していくことの大切さを知ったちひろだからこそ、生み出せた世界なのかもしれません。ちひろの語りかける言葉に耳を傾けながら、絵の背後にある一人の女性の人生に、思いをはせていただければ幸いです。

いいなあ。感動するなあ。人を愛するエネルギーってスゴイなあ!超オススメです!(・∀・)