「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「菓子屋横丁月光荘 浮草の灯」(ほしおさなえ)

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菓子屋横丁月光荘 浮草の灯 (ハルキ文庫)

菓子屋横丁月光荘 浮草の灯 (ハルキ文庫)

 

今年はなんといっても、ほしおさなえさんの著作に出会えたことが財産だったなあ……ほぼ全作品、読破したけど、どれも胸がしめつけられるほど心を打つ。グーグルマップで見て、川越の舞台の場所にたずねてみたいわ。(・∀・)

 
「築七十年の古民家“月光荘”で住みこみの管理人となって数ヶ月。家の声が聞こえる大学院生・遠野守人は、月光荘の声に包まれて、穏やかな日々を過ごしている。知り合いや馴染みの店もでき、川越の町にも慣れてきた。そんなある日、お気に入りの古書店「浮草」の店主が入院中だと知る。バイトの女子大生・安西は店主から、自分が逝ったあともここで働いてほしいと言われているといい…。川越の町で、人と人とが結びついていく。何かと何かが繋がっていく。やさしさと温かさが心に沁みる、シリーズ第二作」そのエッセンスを紹介しよう。

 

子どものころから、僕には家の声が聞こえる。建物の発する声のようなもの。そのことをほかの人に話したことは一度もない。聞こえる家と聞こえない家があるが、月光荘でははじめて足を踏み入れたときから歌声が聞こえてきた。この声に包まれているとなぜかとても安心した。
 
・いい店だろう?前にここで『和ろうそくの夜』っていうイベントをしたこともあるんだよ。火っていうのは不思議なもんだよね。電気とあかりとはまったく違う。この空間もろうそくのあかりのせいで、いつもとはちがう……ロマンチック、というか、いや、ちがうなあ、神秘的っていう方が近いかな、おごそかな雰囲気になった
 
ろうそくのあかり。たしかにあの火はあたたかい。近寄りすぎれば熱い。火傷してしまう。だが近くに手をかざすと、ほんのにあたたかい。「人とかかわるのに痛みはつきもの。心を閉じてしまえばどんどん鈍感になれる。まわりになにも働きかけないでいれば、傷つかない。だけど、それじゃダメなんだ」って。
 
人はみんなあかりなのかもしれない町のなかに無数の灯が立っている。ろうそくのように。あかるくて、あかるくて、でも燃え広がったら町を燃やし尽くすこともある。
 
・子どもを育てるためにお金と労力をかけるのは、子どもが大事だからだと思うんです。命がけで育てるからこそ自分の価値観を押しつけたりもする。祖父が行きてるうちにそのことをわかってたら、もう少しちゃんと話せたのかも、って思いました。
 
・子どものころから不思議だった。建物は同じなのに、正月はいつもとちがって見える。なぜだろう、と考えて、いつだったか、家が黙っているからだと気づいた。年明けは家たちがみんな黙る。眠っているみたいにしんとする。晦日の除夜の鐘が鳴るころから徐々に声が消えていって、一日、二日くらいまではみんな黙っている。三日くらいからぽつぽつしゃべる家があらわれ、だんだんいつもの町になる正月は家もお休みなのか。眠って初夢でも見ているのか。
 
「オショウガツ、イエ、ミンナ、ヒトニナル」「オショウガツニ、アウ。ミンナ、アツマル。トモダチト、アウ、ハナス。タノシイ。デモ、オショウガツ、ダケ」
 
・これからもっと寒くなる。でも、冬の語源は『増ゆ』っていう説があるってどこかで聞きました。目には見えないけど、土のなかで生き物が増える時期。春になってその命が芽を出す。
 
小川未明の『月夜と眼鏡』『赤いろうそくと人魚』(いわさきちひろ)」、いいなあ……ほしおさん、同い年ということもあって共感するところが多過ぎっ!!!いいなあ……登場人物がみな、個性的で魅力的。この横丁行ってみたいわっ。オススメですっ!(・∀・)

 

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菓子屋横丁月光荘 浮草の灯 (ハルキ文庫)

菓子屋横丁月光荘 浮草の灯 (ハルキ文庫)