今年はなんといっても、ほしおさなえさんの著作に出会えたことが財産だったなあ……ほぼ全作品、読破したけど、どれも胸がしめつけられるほど心を打つ。グーグルマップで見て、川越の舞台の場所にたずねてみたいわ。(・∀・)
「築七十年の古民家“月光荘”で住みこみの管理人となって数ヶ月。家の声が聞こえる大学院生・遠野守人は、月光荘の声に包まれて、穏やかな日々を過ごしている。知り合いや馴染みの店もでき、川越の町にも慣れてきた。そんなある日、お気に入りの古書店「浮草」の店主が入院中だと知る。バイトの女子大生・安西は店主から、自分が逝ったあともここで働いてほしいと言われているといい…。川越の町で、人と人とが結びついていく。何かと何かが繋がっていく。やさしさと温かさが心に沁みる、シリーズ第二作」そのエッセンスを紹介しよう。
・子どものころから、僕には家の声が聞こえる。建物の発する声のようなもの。 そのことをほかの人に話したことは一度もない。聞こえる家と聞こえない家があるが、月光荘でははじめて足を踏み入れたときから歌声が聞こえてきた。この声に包まれているとなぜかとても安心した。
・いい店だろう?前にここで『和ろうそくの夜』っていうイベントをしたこともあるんだよ。火っていうのは不思議なもんだよね。電気とあかりとはまったく違う。この空間もろうそくのあかりのせいで、いつもとはちがう……ロマンチック、というか、いや、ちがうなあ、神秘的っていう方が近いかな、おごそかな雰囲気になった 。
・ろうそくのあかり。たしかにあの火はあたたかい。近寄りすぎれば熱い。火傷してしまう。だが近くに手をかざすと、ほんのにあたたかい。「人とかかわるのに痛みはつきもの。心を閉じてしまえばどんどん鈍感になれる。まわりになにも働きかけないでいれば、傷つかない。だけど、それじゃダメなんだ」 って。
・人はみんなあかりなのかもしれない。町のなかに無数の灯が立っている。ろうそくのように。あかるくて、あかるくて、でも燃え広がったら町を燃やし尽くすこともある。
・子どもを育てるためにお金と労力をかけるのは、子どもが大事だからだと思うんです。命がけで育てるからこそ自分の価値観を押しつけたりもする。祖父が行きてるうちにそのことをわかってたら、もう少しちゃんと話せたのかも、って思いました。
・子どものころから不思議だった。建物は同じなのに、正月はいつもとちがって見える。なぜだろう、と考えて、いつだったか、家が黙っているからだと気づいた。年明けは家たちがみんな黙る。眠っているみたいにしんとする。大晦日の除夜の鐘が鳴るころから徐々に声が消えていって、一日、二日くらいまではみんな黙っている。三日くらいからぽつぽつしゃべる家があらわれ、だんだんいつもの町になる 。正月は家もお休みなのか。眠って初夢でも見ているのか。
・「オショウガツ、イエ、ミンナ、ヒトニナル」「オショウガツニ、アウ。ミンナ、アツマル。トモダチト、アウ、ハナス。タノシイ。デモ、オショウガツ、ダケ」
・これからもっと寒くなる。でも、冬の語源は『増ゆ』だ っていう説があるってどこかで聞きました。目には見えないけど、土のなかで生き物が増える時期。春になってその命が芽を出す。
「小川未明の『月夜と眼鏡』『赤いろうそくと人魚』(いわさきちひろ)」、いいなあ……ほしおさん、同い年ということもあって共感するところが多過ぎっ!!!いいなあ……登場人物がみな、個性的で魅力的。この横丁行ってみたいわっ。オススメですっ!(・∀・)