久しぶりに読んだ将棋の本。いいなあ、将棋は。生まれ変わったら棋士になりたいなあ。この本を読んで、奨励会を退会してアマチュアからプロ編入試験を経て棋士になった瀬川晶司六段を思い出すなあ。
そして、この本のテーマが「才能を決めるのは、遺伝子か?環境か?」なんだけど、この本を思い出したなあ。
「才能を決めるのは、遺伝子か環境か?エリート棋士の父を持つ京介と、落ちこぼれ女流棋士の息子・千明。二人の〝天才〟少年は、またたく間に奨励会の階段を駆け上がる。期待を背負い、プロ棋士を目指す彼らに、出生時に取り違えられていたかもしれない疑惑が持ち上がる。才能を決めるのは、遺伝子か環境か?運命と闘う勝負師たちの物語」そのエッセンスを紹介しよう。
・才能とは遺伝子で決まるのか、それとも環境で決まるのか。
僕には分からない。今は、分かりたいとも思わない。
・僕は、 自分が長瀬厚仁と長瀬梨穂子の子どもではないのではと疑っている 。千明は、 自分が朝比奈睦美の子どもではないのではと疑っている。 両家の親は僕らの疑念に気づいていない。僕だって、僕らだって、 疑わずに済むならその方が良かった。でも、 その可能性に気付いてしまったら最後、 目を逸らすことは出来なかった。 家族を大切に思っているからこそ、確かめずにはいられなかった。 僕たちは取り違えられた子どもなんだろうか。調乳室に火を放ち、 赤ちゃんを入れ替えた犯人がいるのだろうか。
・「朝比奈さん。君なら女流棋士になれると思う。ただ、 一つだけ、憶えていて欲しいことがある。 夢を叶えられたとしても、女流棋士になってからの方が、きっと、 苦しい。女流棋士というのは、とても苦しい職業なんだ」
・将棋に魅せられていなければ、どんな人生があったんだろう。 何回人生をやり直すことになっても女流棋士を目指すだろうけれど 、もっと別の人生があったんじゃないかという思いが、 恐らく一生、消すことが出来ない。
・人生というのは将棋によく似ている。 そんな馬鹿みたいなことを本気で思う日がくるとは、 夢にも思っていなかった。私は負けた対局でも大抵、 持ち時間を多く残したまま終局している。 もっと熟考すべきだったと、何百回、後悔しただろう。 数え切れないほどの敗北を経て、分かっていたはずだった。
・厚仁さんが梨穂子さんを選んだのは、何故だったんだろう。 綺麗だから?それとも、彼女が将棋の家の子どもだから?
・果たせなかった目標を、夢を、息子が叶えてくれたら、 どんなに幸せだろうか。
・才能とは、遺伝子と環境、どちらで決まるのだろう。 梨穂子さんや厚仁さんには、血統も環境もあった。 私にはどちらもなかった。 ほとんど同じタイミングで女流棋士になり、 一日違いで息子も生んだのに、朝比奈睦美と長瀬梨穂子の人生に、 ここまで決定的な差があるのは、生まれた家が違うからだ。 将棋の家に生まれた梨穂子さんの子どもと、 シングルマザーの家に生まれた私の子ども。 どちらが恵まれた環境にあるかなんて考えるまでもない。
・眼の前で眠る我が子を見つめながら、 かつて体感したことのない葛藤に身を焼かれていた。この子は、 私の子どものままでは、きっと、幸せになれない。 棋士になりたいと願っても、 そういう未来を夢見てくれたとしても、 私の息子のままでは成長が期待出来ない。才能とは、 遺伝子ではなく、生まれた家で決まるはずだ。 環境さえ与えられれは、きっと、この子は……せめて、 この子だけは……。愛しているからこそ、 あなたを誰よりも愛したいから。だから……! まだ名前もないこの子がつけているリストバンドに、 私は手を伸ばした。
・お父さんは何も教えてくれなかった。それどころか、 お祖父ちゃんや周りの棋士にまで、 僕にヒントを与えないよう通達していた。「 プロになるなら必ず何処かで壁にぶち当たる。 それも一度や二度じゃない。超えたと思った先に、 もっと高い壁が待っている。焦るような年齢じゃないんだ。 今のうちに自分で壁を乗り越える方法を見に潰えたほうが良い」 それが、お父さんからのアドバイスだった。
・「お前はエリートだから環境がぬるま湯なんだ。苦労をしらないから、知恵と工夫が足りない。幸運な時代に生まれたと思うよ。進学塾に通う金がなくても、それなりに質の高い授業を無料で視聴できるんだ。将棋の動画も面白いぜ。今は、棋士が配信している番組もあるし、意外とアマチュアの解説動画も馬鹿にならない。セオリーを外した手から学べることもあるしな。工夫は金がなくても出来る。天才が工夫しながら努力したら無敵だろ。知恵を使わない努力なんて、凡人にやらせておや良いんだ。きっと、賢く努力した奴が時代を変えるんだよ」
・「結論から言おうか。将棋に遺伝子は関係ないよ。大切なのは継続と工夫だと信じている」
・「負けるのはマイナスじゃない。勝ち続けるより、負けを挟んだ方が、むしろ成長出来るさ。これ、反省ノート。負けた相手の名前なんて忘れて良いんだよ。間違った手を記憶して、二度と同じ失敗を犯さなければ、いつか最強になれる。俺はそうやって戦ってきた」
・勝ちも、負けも、人生も考えずに指す将棋は、ただ楽しかった。
・楽しむというのは、最も素晴らしい勉強法の一つだ。
・きっと、僕らには一つだけ嘘がある。朝比奈千明はカッコウだったのか、それとも、モズだったのか。朝比奈千明は自ら親を選んだのか、それとも、選ばれたのか。答えを知っている人間は、この世に一人しかいない。
・誰が誰であっても、きっと、最後に自分を自分たらしめるものは、この手で掴み取ったものだ。与えられた場所でも、血でも、肉でもなく、成果でしか僕という存在は証明できない。
・将棋というのは、この世で最も相手を思いやる遊戯だ。だからこそ、盤面を通して初めて見える気持ちというものもある。
・未来の勝者はまだ分からない。ただ、一つだけ確かなこともある。絶対に負けたくないと思える相手がいること。それは、きっと、とてつもなく幸せなことなのだ。
将棋って深いね。親子愛ってさらに深いね。奨励会って厳しく、残酷だね……。やっぱり自分の素質を知りながら、後天的に身につけるのがイチバンだよね。今年のベスト10入り、決定!超オススメです。(・∀・)