「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「狂伝 佐藤泰志 無垢と修羅」(中澤雄大)

 
ゴッホが生前一枚しか画が売れなくて、死後にその作品が評価されたようなことってあるよね。この伝説の作家もそうかもしれない。佐藤泰志。名前も作品も知らなかったが、いろいろなところで名を聞くことがあった。そんなときに出会ったのが、この本。
 

きみの鳥はうたえる』『そこのみにて光輝く』『オーバー・フェンス』『海炭市叙景』『草の響き』……芥川賞候補5回、41歳で自死した佐藤泰志の全作品と膨大な手紙を読解、「1968年」からバブル期の文学状況と世相、作家の抱えた修羅に圧巻の取材で肉薄した、渾身の書き下ろし1500枚。

高校生作家として脚光を浴びながら、その作家生活が挫折に満ちたものになったのはなぜか。そして、30年の時を経て、その文学が読者の心を摑むのはなぜか。近親者はもとより、小学校のクラスメイトから大学時代の同人誌仲間、泰志が一方的に思いを寄せた後の直木賞作家・藤堂志津子、ライバルの作家たち、文芸誌編集者らまで、あらゆる関係者に直接話を聞き、文学に希望があふれていた時代の光と影を再構築する」そのエッセンスを紹介紹介しよう。


・41歳で発作的に〈首都〉の片隅で自ら命を経つまで、佐藤泰志は常に故郷への愛憎にとらわれていたという。彼の作品を読むと、必ずや一つの固着したイメージが想起される。津軽海峡から朝陽が昇る時、暗く沈んだ海の底に放たれた光芒が現実をしばし忘れさせてくれると同時に、生きもののように街路でまたたいていた無数の光が一つずつ消えて、また新しい一日が始まるー。そうした日常の営みが作家の眼には確かに映っていた気がしてならない
 
・初めて呼んだ佐藤泰志の本は違った。浮ついた世相に翻弄されることのない……いや、むしろ時代に取り残されながらも、あきらめずに生きようとする汗と息遣いを、その文章から実感できた。
 
・初めて佐藤泰志の作品世界に触れると、時代を超えて共振する何かが文章から湧き上がってくるように感じた。そして没後30年に当たる令和二(2020)年に、この不思議な魅力をたたえた作家の生と死を評伝で問う覚悟を固めるため、自分が30年間勤めた新聞社を辞めて退路を断つ決断をするとも思わなかった。
 
・なぜ今「脚光」を浴びるのかー。私の問いかけに、喜美子は生きている時はほとんどスポットライトを浴びることなんてなかった。ずっと目もくれなかったのに『今頃どうして』と戸惑う部分があるんだよ」と穏やかなっ口調ながら、はっきりと言った。学生時代に同棲し、卒業後に結婚した相手は定職につかず「小説家」として貧しい暮らしを顧みずに執筆に全精力を注いだ人だった。

まだ未読だけど、佐藤泰志の本を読みたくなりました。評伝だけで惹きつけられる。オススメです。(・∀・)