このシリーズ、いいわあ……胸がジーン……とアツくなる……しめつけられるようになる……。「ちょうちょうの朗読会」「あわゆきのあと」「海からの手紙」 「すずかけ通り三丁目」は、泣ける……。(T_T)
・「声って不思議ですよね。僕は、 目で見たものより音や匂いの方が近く感じるんです。 リアルって言うのかな。音は鼓膜の震えで感じる匂いも、 粘膜と空気のなかの粒子の接触でしょ?味覚や触覚と同じで、 物質的なんだ。それに比べると、視覚は光が作った像だから、 夢とか幻みたいで……。手触りがない。それに、 生の声はやっぱりいいですよね。 空気の震えのなかにいっしょにいる気がして」
・『思った通りにできない』とか『もっとうまくなりたい』 みたいな悔しい気持ち、大人になると忘れちゃうんだよね。 心が鈍くなってる。けど、朗読してるときって、 人前でむき出しで立ってるっていう緊張感があって……怖いけど、 生きてる、って感じがする。
・そういえば、 古代ギリシアでは息も魂も蝶も同じ言葉だって読んだことがある。
・「その板はインテルって言います。 印刷された文字は行と行の間が少し空いているでしょう? それはこのインテルを挟むからなんです。 これは活字の二分の一の幅。改行で下が空いた場合には、 込めものというのを入れます。これで空白を作るんです」 隙間があったら活字が倒れてしまう。 ぎっしり並んでいないといけないのだ。
・本には文字しかない。色も形も重さもない。でも、その言葉が、 わたしたちのなかで色や形や重さを持ったものににある。 言葉って、種のようなものなのかもしれません。
・「『この世に生まれた』って、 人生でいちばん初めのイベントでしょ。 いちばん大きなイベントかもしれない。で、 そのときのプレゼントが『名前』。みんな生まれてきたら必ず『 名前』をもらう。それを記念して名刺を贈りたいって。人間、 生まれたときは手ぶらで、なにも持っていない。 苗字とか住所とか肩書とかだんだん持ち物が増えてくる。 赤ちゃんは名前だけ」
・ひとりで生きて、ひとりで死ぬ。それが、人間。だれだって、 死ぬときはひとりだよ。楽しくても、日々は過ぎて、 どんな人でもやがては老いて、亡くなって、お墓に入る。 生きてるのは、ほんのちょっとのあいだの、夢みたいなものだ。
・貝はイカやタコと同じ軟体生物なんだそうです。 自分のやわらかい身体を守るために、分泌物で殻を作る。 身体が大きくなるにつれて、 縁に分泌物を足して貝がらを大きくしていくんだそうです。 家でもあり、鎧でもある。そして持ち主が死ぬと、 一生かかって作り上げた殻だけが残る。 貝自体はぐにゃぐにゃした不定形のものなんだろうけど、 貝がらの形こそ、その貝のほんとうの形なのかもしれないなあ。
・波に削られて穴が空いたり割れたりして形が変わって、 最後は砂になる。貝がらは炭酸カルシウムでできている。 生き物が作った鉱物だ。 貝がらが砕けて海底にたまったものが石灰岩。 それが変形してできたのが大理石。いろいろな形、 いろいろな色のうつくしい貝たちが最後は砕けて、 みんな混ざって固まって、石になる。生き物はみんな生まれて、 死んで。その名残である貝がらも形を変えて大地を作る。
・表現は翼ですよ。精神の翼というのかな。 飛ぶことに意味はない。飛びたいから飛ぶ。飛べるから飛ぶ。 それだけ。だけど、飛ぶためには技術が必要です。 持って生まれたものだけじゃなくて、技術……飛びたくても、 それを身につけていない人は飛べないでしょう? 飛べる人は飛ぶべきだ。僕はそう思うんですよ。
・投壜(とうびん)通信って言葉があるでしょ? ツェランだったかな。 詩は海に投げられた壜に入った手紙みたいなものだって。 いつかどこかの岸に、 ひょっとしたら心の岸に打ち寄せられるかもしれないという……。 でもねえ、壜はそう簡単に岸にはたどり着かない。 だからたくさん投げないといけないんですよ。 そうしたらそのうちだれかが拾ってくれるかもしれない。
・新美南吉「貝殻」
かなしきときは
貝殻鳴らそ。
二つ合わせて息吹をこめて。
静かに鳴らそ、
貝殻を・
誰もその音を
きかずとも、
風にかなしく消ゆるとも、
せめてじぶんを
あたためん。
静かに鳴らそ
貝殻を。
・「ほんとですか?ちっとも知らなかった」 弓子さんの目がますます丸くなった。
ああ〜……いいなあ……弓子さんに惚れちゃいそうだ〜!!!このシリーズ、ずっと続いて欲しいなあ。超オススメです!(・∀・)