「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「活版印刷 三日月堂2 海からの手紙」(ほしおさなえ)

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 このシリーズ、いいわあ……胸がジーン……とアツくなる……しめつけられるようになる……。「ちょうちょうの朗読会」「あわゆきのあと」「海からの手紙」「我らの西部劇」の4篇ともいいんだけど、冒頭のあまんきみこさんの「車のいろは空のいろ」がでてくるのはマイッタ……。「すずかけ通り三丁目」は、泣ける……。(T_T)
 
小さな活版印刷所「三日月堂」には、今日も悩みを抱えたお客がやってくる。店主の弓子が活字を拾い、丁寧に刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった想い…。活字と言葉の温かみに、優しい涙が流れる、大好評シリーズ第二弾!」そのエッセンスを紹介しよう。
 
・「声って不思議ですよね。僕は、目で見たものより音や匂いの方が近く感じるんです。リアルって言うのかな。音は鼓膜の震えで感じる匂いも、粘膜と空気のなかの粒子の接触でしょ?味覚や触覚と同じで、物質的なんだ。それに比べると、視覚は光が作った像だから、夢とか幻みたいで……。手触りがない。それに、生の声はやっぱりいいですよね空気の震えのなかにいっしょにいる気がして」
 
『思った通りにできない』とか『もっとうまくなりたい』みたいな悔しい気持ち、大人になると忘れちゃうんだよね。心が鈍くなってる。けど、朗読してるときって、人前でむき出しで立ってるっていう緊張感があって……怖いけど、生きてる、って感じがする。
 
・そういえば、古代ギリシアでは息も魂も蝶も同じ言葉だって読んだことがある。
 
・「その板はインテルって言います。印刷された文字は行と行の間が少し空いているでしょう?それはこのインテルを挟むからなんです。これは活字の二分の一の幅。改行で下が空いた場合には、込めものというのを入れます。これで空白を作るんです」隙間があったら活字が倒れてしまう。ぎっしり並んでいないといけないのだ。
 
・いまのオフセット印刷はほんとにきれいで、透明です。でも、文字がほんとうにすべて均一になってしまうと、なんだか物足りなくなる。活版を知らない若い人も、活版印刷を新鮮に思う。
 
本には文字しかない。色も形も重さもない。でも、その言葉が、わたしたちのなかで色や形や重さを持ったものににある。言葉って、種のようなものなのかもしれません
 
・「『この世に生まれた』って、人生でいちばん初めのイベントでしょいちばん大きなイベントかもしれない。で、そのときのプレゼントが『名前』。みんな生まれてきたら必ず名前』をもらう。それを記念して名刺を贈りたいって。人間、生まれたときは手ぶらで、なにも持っていない苗字とか住所とか肩書とかだんだん持ち物が増えてくる。赤ちゃんは名前だけ
 
ひとりで生きて、ひとりで死ぬ。それが、人間。だれだって、死ぬときはひとりだよ。楽しくても、日々は過ぎて、どんな人でもやがては老いて、亡くなって、お墓に入る。生きてるのは、ほんのちょっとのあいだの、夢みたいなものだ
 
貝はイカやタコと同じ軟体生物なんだそうです。自分のやわらかい身体を守るために、分泌物で殻を作る身体が大きくなるにつれて、縁に分泌物を足して貝がらを大きくしていくんだそうです。家でもあり、鎧でもある。そして持ち主が死ぬと、一生かかって作り上げた殻だけが残る。貝自体はぐにゃぐにゃした不定形のものなんだろうけど、貝がらの形こそ、その貝のほんとうの形なのかもしれないなあ。
 
・波に削られて穴が空いたり割れたりして形が変わって、最後は砂になる。貝がらは炭酸カルシウムでできている。生き物が作った鉱物だ。貝がらが砕けて海底にたまったものが石灰岩それが変形してできたのが大理石。いろいろな形、いろいろな色のうつくしい貝たちが最後は砕けて、みんな混ざって固まって、石になる。生き物はみんな生まれて、死んで。その名残である貝がらも形を変えて大地を作る。
 
表現は翼ですよ。精神の翼というのかな。飛ぶことに意味はない。飛びたいから飛ぶ。飛べるから飛ぶ。それだけ。だけど、飛ぶためには技術が必要です。持って生まれたものだけじゃなくて、技術……飛びたくても、それを身につけていない人は飛べないでしょう?飛べる人は飛ぶべきだ。僕はそう思うんですよ。
 
投壜(とうびん)通信って言葉があるでしょ?ツェランだったかな。詩は海に投げられた壜に入った手紙みたいなものだって。いつかどこかの岸に、ひょっとしたら心の岸に打ち寄せられるかもしれないという……。でもねえ、壜はそう簡単に岸にはたどり着かない。だからたくさん投げないといけないんですよ。そうしたらそのうちだれかが拾ってくれるかもしれない。
 
新美南吉「貝殻」
 
かなしきときは
貝殻鳴らそ。
二つ合わせて息吹をこめて。
静かに鳴らそ、
貝殻を・
 
誰もその音を
きかずとも、
風にかなしく消ゆるとも、
せめてじぶんを
あたためん。
 
静かに鳴らそ
貝殻を。
 
「ほんとですか?ちっとも知らなかった」弓子さんの目がますます丸くなった。

 

ああ〜……いいなあ……弓子さんに惚れちゃいそうだ〜!!!このシリーズ、ずっと続いて欲しいなあ。超オススメです!(・∀・)

 

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