このシリーズを、読んでいてふっと思い出した。母の実家がその昔、印刷屋をやっていたのだとか。思い出して叔母に電話で聞いたら活版印刷じゃなくてタイプだったらしい。そのことがオーバーラップして感情移入してしまう。昭和の印刷って大変だったんだね〜!(・∀・)今年、文句なしのナンバーワンです!決まりです!ぜひ映像化してほしい。主人公の弓子は高畑充希がいいかな。と勝手に妄想が続くっ!(・∀・)!
「小さな活版印刷所「三日月堂」。店主の弓子が活字を拾い刷り上げるのは、誰かの忘れていた記憶や、言えなかった言葉――。弓子が幼いころ、初めて活版印刷に触れた思い出。祖父が三日月堂を閉めるときの話……。本編で描かれなかった、三日月堂の「過去」が詰まった番外編」そのエッセンスを紹介しよう。
・「弓子ちゃんの名前はな、お父さんとお母さん、 おじいちゃんとおばあちゃん、みんなで考えたんだよ。 最初に弓子って言ったのはお母さんだった。『 思いを遠くまで届けられる人』っていう意味なんだって」「 ふうん」「そしたら、おじいちゃんが『すごくいい』 って言い出して。弓って、三日月と形が似てるでしょ?」「 そうか、『三日月堂』だから?」弓子ちゃんが笑った。「 そうそう。三日月堂だから」
・ーあれが銀河だよ。祖父の声がした。 煙のようなものが濃くなったり薄くなったりしながら広がっている 。筋をたどって祖父が手を動かす。天の川。銀河。まさに川だ。 靄が少しずつ晴れていく。川はどんどんのび、 空いっぱいに広がった。美しい。でもとても怖かった。 僕たちはこんな世界に生きていたのか。 なにもない宇宙に浮かんでいるような気がしていたけれど、 とんでもない。宇宙は星の光にあふれいてる。 僕らは燃えるような宇宙に浮かんでいるのだ。と思った。
・流星はいくつも見えた。一、二分に一度、大きな星が流れた。 そのたびに周囲から歓声があがった。 かなり大きなものがしゅっと流れて、 ぴかっと爆発したところも見えた。一瞬、 山で星空を見たときの恐怖がよみがえってきた。宇宙は広い。 自分とは桁違いに大きなものが存在していることが怖いのかもしれ ない。ふいにそう思った。そのとき、そばにいた彼女が、 生きるって心細いものなんですね、とつぶやいた。
・星はひとつひとつ大きな生きもののようなもので、 暗い宇宙に浮かんでいる。 どの星からもたくさんの星が見えるだろうけど、 見えるだけでとても遠い。 会って話すことも手をつなぐこともできない。 それでさびしくないのだろうか。
・やはり光は命なのだ。命は光なのだ。燃える、爆発する、 消える、生まれることも死ぬことも爆発で、 僕らはいまこの瞬間も、そうやって燃えている。 死に向かっているから光るのだ。 死に向かっているから生きているのだ。星は生きている。 人と同じように。生きて、光っている。燃えている。 生きるとは燃えることだ。熱くて苦しくて、だから輝いている。
・カナコが死んだとき、まちがいなく、僕も少し、死んだ。 僕のなかの世界の一部が死んだ。だけど、弓子はどうなんだ。 幼い弓子にとって母の存在はもっと大きかったはずだ。 世界の大部分を失ってしまったようなものじゃないか。 ーいっしょに探しにいくことがほんとうのさいわいなんかじゃない か、って。あのときカナコはそう言った。 急にすべてがわかった気がした。なにが「ほんとうのさいわい」 か正解を考えるんじゃない。「ほんとうのさいわい」 をみなで探すこと。そう決意し、そのために生きること。 それこそが「ほんとうのさいわい」なんだ。 弓子としあわせになる道を探す。それが僕の道だ。
・いつかは人も消える。星も消える。でもそれは、 あったものがなくなるのではなくて、 なかったものがまたなくなるだけなのだ。星と暗闇。 僕たちもまた本来は暗闇だったものなのだから。
・生きるとは無駄なことばかり。そうした雑事をこなすたび、 まだ生きているんだなあと思う。
・印刷物は日々消耗されて、あとに残らない。 わたしの人生もそんなものだった。刷り上がった紙をながめる。 柾子延長の言葉が目にはいってくる。
どんなときでも、勇気を持って、元気に進もう
・生きる目標とか、目的とか、いまのわたしには全然ないの。 でも、生きていくだけならできる気がする。 人のためになにかするとか、 そんなむずかしいこともできそうにない。でもいまは、 生きていくだけでいいよね。許してくれるよね、きっと。 生きていたら、きっといつか……。弓子はそう言うと、 両手で顔を覆った。
「小川町の細川紙」って見てみたいなあ。何度も何度も読み返したい。これを持って鈍行電車に乗って旅をしたいっ!オススメです!(・∀・)