素晴らしい…、実に素晴らしい。これを詩集と呼んでいいのだろうか?
寝たきり老人の独語、玉置宏のナレーション、死刑囚の俳句、エロサイトのコピー、暴走族の特攻服など前例のない、生き生きとした言葉たち。そのエッセンスを紹介しよう。
・夜の国道を走る。ヘッドライトに照らされた歩道橋に、スプレーで殴り書きされた「夜露死苦」の文字が一瞬浮かび上がり、頭上に消えていく。なんてシャープな四文字言葉なんだろう。過去数十年の日本現代史の中で、「夜露死苦」を超えるリアルなフレーズを、ひとりでも書けた詩人がいただろうか。
・「痴呆系」(早田工二&直崎人士)は、痴呆老人たちが発する素晴らしくも無意味な言葉の数々を書き留めた、おもしろすぎる「介護記録」である。そのような老人たちを直崎さんは「胡桃の白(脳)の山頭火」と名付ける。意外な言葉の組み合わせから生まれる、以外なイメージの喚起こそが詩の真骨頂なのだとすれば、詩人の人生もまた、そして詩が生まれる場所も生まれる場所もまた、意外なところにしかありえないのだろうか。
人生八王子
目から草が生えても人生ってもんだろ
力士が!力士が、何故どこまで力士がやってくる
あの夏の狸の尻尾がつかめなくって
やっぱり鮭なら砂漠にかぎるとね
大きなお魚かとおもったら、あんたは痴漢ね
音の出る坂へバスで行きたいんですが
おまえのおれをかえせ おまえのおれをかえせ
オムツのなかが犯罪でいっぱいだ
あの坂もこの夜も幾つもお葬式がおこなわれてて…
でもその目的はわたしを皆殺しなんですよ
その他、「点数占い」「長崎・雲仙の木花開耶姫神社(このはなさくやひめじんじゃ)の末裔たち」「池袋母子餓死日記」「死刑囚の俳句」「32種類の『夢は夜ひらく』あるいは無限連鎖のモノローグ」「人生の必要なことは、みんな湯呑みから教わった あるいは詠み人知らずの説教詩」「あらかじめ答えられたクイズ」「ヒトが生んでヒトが驚く あるいは見世物小屋の口上詩」「相田みつを美術館訪問記」「演歌というポエトリー・リーディング」など。
研ぎ澄まされた言葉の数々。オススメです。夜露死苦っ!!!(・∀・)