ノーベル文学賞受賞、「車輪の下」で有名なヘルマン・ヘッセ。私は、小学校か中学校の教科書に載っていた「少年の日の思い出」は今でも忘れられない…。
さてこの本。年をとることにも美しさ楽しさがあると説く文豪ヘッセの「老い」と「死」をめぐるエッセイと詩。いかにして良く「老いる」ことができるか、深く豊かな人生の知恵。その中で最もインパクトのある詩は、53歳のワタシにビビビっと響きました。紹介しましょう。
五十歳の男
揺籃から柩に入るまでは
五十年に過ぎない
そのときから死が始まる
人は耄碌(もうろく)し 張りがなくなり
だらしなくなり 粗野になる
いまいましいが髪も抜け
歯も抜けて息がもれる
若い乙女を恍惚として
抱きしめるかわりに
ゲーテの本を読むわけだ
しかし臨終の前にもう一度
ひとりの乙女をつかまえたい
眼の澄んだ 縮れた巻き毛の娘を
その娘を大事に手にとって
口に胸に頬に口づけし
スカートを パンティーを脱がせる
そのあとは 神の名において
死よ 私を連れて行け アーメン
・私たちはほんとにいまいましいことだが、ゆっくりとほんの少しずつ死んでゆく。一本一本の歯が、筋肉が、そして骨が、ひとつずつさよならを告げてゆく。まるで私たちがそれらと特別に仲がよかったかのように。
私は死にあこがれる。しかし、それは早すぎる死や、成熟しないうちに死ぬことではない。そいて成熟と知恵をもとめるあらゆる欲望の中で、私はまだ人生の甘美で陽気な愚かさにすっかり夢中になっている。愛する友よ、私たちはみな、すばらしい知恵と甘美な愚かさをどちらも手に入れたいと望む!私たちはこれから何度も何度もともに前進し、ともにつまずこう。どちらもすばらしいことではないか。
「日本の森の渓谷で風化してゆく古い仏陀像」は、アジアから影響を受けてるんだねえ。ワタシももう一度「ひとりの乙女をつかまえたい」なあ…(笑)オススメです。(・∀・)