「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「愛するがゆえに 阿部定の愛と性」(伊佐千尋)

私たちは、あの阿部定のことを、事件のことをどれだけ知っているのだろう!?こんなに詳細でリアルな本が存在しているとは思わなかった!(・∀・)

阿部定本人の予審調書(実際の裁判の前に検察側が被告人に事の顛末を語らせ纏めた書類で、分かりやすく現代語にされている。 生い立ちから、様々な人物のヒモとなっての流浪時代、料理屋吉田屋の店主石田吉蔵との運命的出会いまでが、阿部定本人の言葉で淡々と語られる。そのエッセンスを紹介しよう。


・死体は窓側西向きに仰臥し、細紐をもって首を締め、下腹部を刃物で斬りとって殺害。蒲団の敷布には先決をもって一寸角大の楷書で定吉二人きり」と認め、さらに男の左太股に定吉二人」と書かれ、なお左腕に「定」の一字が血を滲ませながら刃物で刻んである。ほかに便箋には「馬」と書かれてるなど、猟奇に彩られる凄愴な情景だった。


・市電の中で、若い女の車掌さんが、鋏をチョキチョキさせながら、「切符を切らせていただきます」といって車内をまわる。すると妙な問答が流行った。


「お定事件とかけて、何を解く」「電車の車掌と解く」「心は?」「チンチン切ります」


「お定は逃げるとき、何を荷物にもっていたか?」「胸に一物、手に荷物」


・世人の物笑いになるのを彼女は嫌い、石田と別れるのが寂しいばかりに、オチンチンを切ってしまったり、気違いじみたことをしてしまったが、自分は「変態」といわれるのが悔しいと弁明している。


・「油一滴、白粉一つつけていない全くの素顔だが、その磨きあげたような柔らかな肌、豊かな黒髪を無造作に束ね、小首を傾げた姿は、法廷を紅一点に染めたと思うほどに怪しく色っぽい情景を呈した。細谷裁判長までが「妖気を感じさせるような人物。その声は、くすんだような、何ともいえない色っぽさがあった」と声までが刺激的だったらしい」(森永英三郎『史談裁判』より)


私はあの人が好きでたまらず、自分で独占したいと思い詰めた末、あの人は私と夫婦ではないから、生きておれば外の女に触れることになるでしょう。殺してしまえば、外の女が指一本触れなくなりますから、殺してしまったのです。


・前の晩、首を締めるときは、ぜひ殺すという決心はなかったのですが、締めながら関係しているうち、とても可愛くなりギュッと締めたので、殺してしまいたいほど可愛くなったのですから、石田が苦しそうなのを見て、手を離したのです。


このブログでは紹介できないような言葉は表現が満載している。いろいろな愛のカタチがあるんだね。オススメ(・∀・)