新年になって、古いものを手放し、新しいものに切り替えた方も多いだろう。カレンダー、手帳…などなど。別れがある、そして新しい出会いがあるのだ。(・∀・)
「人は別れる。そして本物の大人になる」。大ベストセラー『大人の流儀』待望の第三弾。伊集院静が綴る人生論「別れ篇」。そのエッセンスを紹介しよう。
・別れることは、切なく苦しいことだ。時によっては非情にさえ思える。しかし私たちが生きていく上で、離別は避けて通れるものではない。人と人の別れもそうだが、かつて私は北海道の牧場でサラブレッドの仔馬が母馬と別れた夜を牧舎で見たことがあった。仔馬は一晩、母馬を呼んでいなないていた。哀切に満ちた声が牧草地に響いた。辛いことだと思った。
しかし翌朝、仔馬は他の若い競走馬たちと懸命に駆けはじめた。その時、私は一夜の哀しさが仔馬に、彼が生きるための力を与えたのだと思った。それは母馬の祈りでもある。
親しい人を失った時、もう歩き出せないほどの悲哀の中にいても、人はいつか再び歩き出すのである。歩き出した時に、目に見えない力が備わっているのが人間の生というものだ。その時は信じられないかもしれないが、確実にあなたにはその力が与えられている。そうしてその力こそが、生きる原動力であり、人間が持つ美しさでもある。
春風の中を飛ぶ草木の種は、遠くへ飛ぶものほどたくましい草木に成長するという。それを知った時、私は、別れには、力と生きる尊厳があるのだと確信した。私もいくつかの別れを経験したが、その渦中にあった時はただ途方に暮れて悲嘆したが、歳月が過ぎてみると大きな力を得ていたことに気付いた。
あの震災から一年半、さまざまな別れを見つめながら、或る時は憤怒し、或る時は笑い飛ばし、一冊の本にしたつもりである。別れることは決して誰か何かを不幸にさせるだけのものではない。それを伝えたくて今日も……。
…いいねえ…「別れる力」。オススメです。(・∀・)