この本は凄い。凄まじい。タイトルもそうだが、こんなの普通の文庫本で出版していいのか!?(゜o゜)
著者・中村うさぎは、2005年の夏、「自分の女の価値を高めるため」にデリヘルで働き、3日で11人の男性客を相手に、金と引き換えに擬似セックス行為をした。で、このたびの原稿は、その「デリヘル体験以降」の私の、セックス放浪記なのだ。そのエッセンスを紹介しよう。
・私に媚びるな。媚びられるのは、一番嫌いなの。本気の言葉だけ、本気の愛だけ、私は欲しい。それが手に入らないなら、いっそ愛なんか、いらない。獣みたいなセックスだけで結構よ。
・一時間半後、グッタリした私の上で、彼はちゃんと射精した。何より、それが感激だった。セックスで射精されたのは久しぶりだ。二年ぶりくらいかもしれない。私でイッてくれたんだ、と嬉しくなった。私は男を欲情させたいとか勃起して欲しいとか、いろいろ言ってたけど、最終的にはこの充実感を求めていたんだなぁ。愛はないけど達成感があるわ。女としての達成感がね。
・「AV観て、イイっすかぁ〜?」彼の台詞が、その後、何度も私の脳裏に蘇る。やっぱり若い男の子にとって、私は「勃起不能な女」だったのだ。いくら美容整形して若作りしても、彼にとっては「オカマと同じくらい無理」なババアだったのだよ、私は。
・男が勃起しなくなるのと同じく、女も身体的なセックス能力が著しく衰えるらしい。ぎゃーーっ!まずいっ!!!いや、何がまずいって「めくるめくエクスタシー」というものを経験しないまま、セックスできない身体になるのが悔しい。恋愛なら、その苦しみも喜びも、すでにたっぷり味わったわよ。だけどセックスに関しては、まだまだ開けてない扉がたくさんあるような気がするの。そのうち開ける日が来るわよ、なんて暢気に構えてたけど、開けないうちに鍵がかかってしまうかもしれないなんて……そんなのイヤーッ!
・ねぇ、お願い。私が私でなくなるほどの、興奮を誰か教えてよ!そりゃね、自分でもいろんな場所に探しに行ったわよ。SMバーに行って、天井から吊り下げられてみたこともある。ちーっとも気持ちよくなかったわ。ハプニングバーに行って、ナンパしてきた男と、大勢の視線に曝されながらセックスしたこともある。おもいっきりシラケて、快感どころじゃなかったね。
・私の愛も、私のセックスも、私の浪費嗜癖も、すべては私の「ナルシシズム」を満たすための行為である。そう、それらはすべて、自分を少しでも愛そうとする私の、虚しくも切ない格闘なのだ。
・セックスの醍醐味は、愛する相手と身も心も融け合って一体化したような錯覚に陥る、いわば「自他の融合」の快感である、と私は思う。「彼」と「私」の間の、絶対に超えられない絶望的な「他者性」の壁が一時的に消えてしまったかのような、あのとろけるような心地よさ……その瞬間、「彼」は「私」となり、「私」は「彼」になるのだ。
はあ……あまりに凄い…これがフィクションではなくノンフィクションなのが凄い!平成の奇書かもしれない。興味がある方、読んでみてください。オススメです。(・∀・)