- 作者: 渋沢栄一
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2012/02/12
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「倒幕をもくろんで志士となるも、慶喜に仕えることとなり、幕府に出仕して渡仏するも、維新により帰国。新政府で官僚となるが、実業を志して野に下って―。 数々の逆境を乗り越えて、470あまりの会社を創り、社会事業を実践していった渋沢栄一。その波乱に満ちた生涯は、自らの言葉により語られていた。「論語 と算盤」を体現した生涯を、現代語訳と新編集で読む」
波乱万丈という一言では語れない人生。そのエッセンスを紹介しよう。
・本書は、渋沢栄一が偉人としての渋沢栄一となるまでの過程を語り下ろした自叙伝、および関連資料を翻訳し、その人生を再構成したものだ。尊王攘夷の志士から一橋家の家臣、大蔵省出仕から実業界や福祉事業へ、国際親善へといった彼の人生は、幕末維新の激動を反映して、暴れ馬にでも乗っているようなスリルと面白さにまず満ち溢れている。そして同時に、彼が人として何を身につけ、何を磨きあげ、何をやり遂げてきたのかの過程がそのには描かれている。まさしく「人としての根底の部分をいかに身につけるのか」「身につけたものを基として、人は何をなすべきか」の具体的事例がここにあるのだ。
・栄一は晩年、アメリカに渡った際に、サタデー・イブニングポストの主筆だったジュリアン・ストリートから次のように評されている。
この人のなかに日本国民の最善の姿、もっともすぐれた資質を見た。親切で暖かい心、世界情勢についての驚くべき感覚、愛国者でありながらけっして狭い愛国主義のわくにはまることがない…そこにはまれに見る心がある、。この人を私は限りなく尊敬する。
なぜ彼は激動の時代のなかで、しばしば逆境に立たされつつも、それを挽回し、逆にチャンスとし得たのか。世間の評価が極めて低い対象を、どのように逆転させ得たのか?グローバル化やデジタル化の進展で、今日の商社が明日の敗者になるような激動の現代において、われわれの参考となる事例にこと欠かないのだ。
・「フランスで受けた近代化の洗礼」
私が汽車に初めて乗ったのは、慶応三年フランスへ向かう途中のスエズからアレキサンドリアで、地中海の船に乗り換えるまでであった。ガラスというものを知らないので、汽車に乗ってから窓の外を見ると、まったく透き通って見える。なので何もないと思い、一行のある者が外へ捨てるつもりでミカンの皮を何度も投げた。それから次にはマルセイユからパリへ汽車で行ったが、私はつくづくその便利なのに感心して、「国家はこのような交通機関を持たないと発展はしない」と思い、ヨーロッパのこのような物質文明の発達をうらやんだわけである。
・私がはじめて新聞というものを知ったのは、慶応三年、当時フランスはナポレオン三世の盛んな時代であった。そのときにパリで開かれた世界大博覧会の閉会式において、ナポレオン三世が述べた演説も、翌朝の新聞に報道されて、私どもフランス語の読めない者でも、これを翻訳さえすればすぐい内容を知ることができた。しかしこれは外国ではじめて存在し得るもので、日本に近い将来これができようとは思わなかったのである。
その他「倒幕の志を抱いて」「新政府で元勲とともに」「日本に必要なのは会社だ」「道徳と経済は一つ」など読み応え抜群。オススメです。(^。^)