「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「定刻発車」(三戸祐子)

定刻発車―日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか? (新潮文庫)

定刻発車―日本の鉄道はなぜ世界で最も正確なのか? (新潮文庫)

またまた、オモシロイ本に出会っちゃいました〜!!!これは今年のベストテンには入るね。(^^♪


以前からよく言われることなんだけど、「日本の鉄道はなぜ正確か?」という問いかけに始まるこの本。
その背景には、ただ単に日本人が几帳面だからとかいうモノではなかったのだ!結論からいうと、江戸の参勤交代や時の鐘の習慣が背景にあるということなのだが、もちろん好転的な要素も強い。大正期の優れた作業マニュアル、鉄道マンによる驚異の運転技術やメンテナンス、さらに危機回避の運行システムなどが定時運転を支えていたのだ!交通図書賞・フジタ未来経営賞受賞。そのエッセンスを紹介しよう。


・最近はマスコミで列車の遅れが報道されることが多くなっているが、日本の鉄道は世界の水準からすれば信じられないほど正確に運行している。一列車あたりの遅れはJR東日本の数字(1999年度)で、新幹線が平均0.3分、在来線で平均1.0分。新幹線の95%と、在来線の87%が定刻に発着する。(遅延1分未満)イギリス、フランス、イタリアではだいたい90%前後の定時運転率があがっている。なんだ、大して違わないじゃないか、と思うかもしれない。ただし、日本の統計では、1分以上遅れた列車はすべて「遅れ」として数えられているのに対し、外国の統計では10分や15分の遅れはなんと「遅れ」とは見なされないのである!


・日本以外の世界のほとんどの国では、鉄道がいつも時刻表通りに動かないからといって、それにより社会の機能が麻痺してしまうとか、立ち行かなくなることもなくなんとかなってしまうからなのだ。
日本列島は山が多い。そしてそこから急傾斜で流れ出る河川が多い。この鉄道に鉄道を敷くということは、高い山や切り立った海岸線を通すならトンネルを作り、谷や川があるなら橋をかけなければならないことを意味する。日本の地形や気候をみていると、よくもまあこの障害物競走のような環境で鉄道は定時運転をしているものだと思わせる。そしてこの地形や機構の把握、そしてそれとどう戦うかが鉄道の技術となり、定時運転の方法にもなってゆく。


・江戸時代の日本には、藩校などの武士階級を対象にした教育機関だけではなく、寺子屋や手習い場のような庶民を対象にした教育の場もあり、識字率も高かったこと。すでに国内は一応の統一をみていて、常態化した大きな戦争もなく、幕藩体制の下に独自の行政機構が機能していたこと。税の徴収などを通じて、農村にも庄屋や中心とした自主的な管理能力があったこと。鎖国下でも貿易は行われ、外国技術の摂取は盛んに行われていたこと。和算という独特の数学の発達もあり、土木技術や職工技術の水準も高かったこと…など鉄道や経済発展には好都合であったとする見方もある。


・鐘により人々に時刻を知らせる江戸時代の時鐘システムは、日本全国でだいたい三万ないし五万、ほぼ全国一斉に成立し時報としての機能を果たした。城鐘や城の太鼓は、城門の開閉の時や、登城の時、休息の時などを知らせるものとしての役割を担っていた。そこへ仕える武士たちも時刻により自らの生活を律するようになる。藩では、職人や日雇いの勤務時間を何時から何時までというふうに通達したり、女性の夜の一人歩きを何時までと法令で定めたりと庶民の時間感覚は鍛えられていた


・江戸の社会は参勤交代という大規模移動プロジェクトを経験していた。これを通じて、日本の社会はいくつもの制約条件を事前の調整によってクリアし、「物事をつつがなく実行する」能力を高めていたのではないか。そのことに慣れていたからこそ、鉄道という制約条件の多い大規模移動プロジェクトを割にすんなりと受け入れることができた。


・日本の都市は人が歩ける間隔で鈴生りになって発展した。そのため日本の鉄道の駅間は短く始まった。このことは日本の鉄道を正確にするそもそもの発端であるように思う。同じ距離を走りながらも、途中で一度しか発車時刻を合わせる必要がない鉄道と、何度も停止し、何度も発車時刻を合わせなければいけない鉄道とでは、どちらがよりきめ細かい運行管理を行うようになるかというと、後者であろう。


・定時運転に関しては明治40年の鉄道国有化にともなって山陽鉄道からやってきた「運転の神様」結城弘毅が広めた。明治30年代は列車は相当遅れていて、20分も30分も遅れることは当然視されているのを見てこれを改善することを考えた。機関手に運転の正確を命令し、秒の遅れさえ許さなかった。その実施方法は、機関手と一緒に研究した。機関手たちも、この青年技師の理想に双手をあげて協力を約束し、この運動を日本中に広げようと誓った。石炭のくべ方、たき方、蒸気の上げ方も正確運転を目標にした。その甲斐あって、遅延しがちの列車の遅れが少なくなり、ついに正確運転が実現した。全国の機関庫も俺のところだってできると頑張り、ついに日本中の列車が正確な運転をすることに成功した。


ん〜スゴイ!私たちの先人たちってなんてスゴイんだ!鉄道ってすごいよね。「鉄ちゃん」になる気持ちも分かるよ。オススメ!(^^♪