- 作者: むのたけじ
- 出版社/メーカー: 評論社
- 発売日: 1997/05
- メディア: 単行本
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・一月一日に、おおみそかと元旦がかさなっている。おわったところから、はじまっている。死ぬるところは、つまりうまれるところである。
・そのときはムダだと思ったことが、実に大事なことであったとあとになって気づく場合が少なくない。現在という瞬間には、何がムダでどれが有用であるかは判断しかねるものである。それゆえ、生活のどんな部分であろうと、生活の一部であるからには粗末にできない。
・さびしいときにそのひとを思えば慰められる。そんな友はほしくない。なまけるとこいにそのひとを思えば鞭うたれる。そんな友がほしい。友のためには、私もそういうものでありたい。
・足の裏に刻まれたたくさんの皺が、私はどこへ行ったかを、私はどこを歩かなかったかを一番よく知っている。けれども、足の裏は何も語らない。地べたとは無縁の口唇が、つべこべとしゃべる。
・カミソリが多すぎる。マサカリがほしい。木を切り倒さなければ、紙だってつくれやしない。ひとかどの人物とは、反逆者のことである。
・山にはいくつもの登り口がある。どの口を選ぶかは問題ではない。問題は二つ。方角を誤らないこと、最後まで登ることである。そうすれば、みんなが頂上で握手する。
・あるとき路上で観察したら、靴ひものとけたことに気づかないで歩いていた人は100人のうち3人であった。たぶん100人のうち97人の私たちは、心のひもを日に一度もむすびなおさないで歩いている。
・失敗は、なるたけしない方がいいにきまっている。けれども真にこわいのは失敗することではなく、いい加減にやって成功することだ。
・飢えて死ぬより、食いすぎて死ぬ人数が多い。失敗してだめになるより、成功してだめになる人数が多い。
・読書は、第四の食事である。望ましい作法は、他の食事と同じである。暴飲暴食は精神に下痢をおこすだけである。一度に多量ではなく毎日欠かさず適量を摂取すると一番ためになる。
・「わたしが…」と言おうとするとき、一度息を飲んで、「わたしたちが…」といいなおしてごらん。すると、次につづく言葉がきっとちがってくる。