「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「セックス レスキュー」(大橋希)

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セックス レスキュー

セックス レスキュー

 

 

なかなか下半身の話題は、おおっぴらには出来ないよね。下ネタぐらいだったらいいけど、家庭のSEXについてはなかなか話せないよね。(笑)

 

さて、この本。「セックスレス―うつや不眠をも引き起こすという、この深刻な問題に悩む人妻たち。そんな彼女らをリハビリとしての性交渉によって救おうとするボランティア、「性の奉仕隊」の存在に著者は驚き、取材を始める。組織を主宰する人物は何者か。隊員たちの本音とは。そして利用者の実体験とその効果は?家庭内セックスレスという、身近にある現代の病に鋭く迫った衝撃のルポルタージュ」そのエッセンスを紹介しよう。
 
・彼女は静かにこう言ったー自分がだんだん死んでいくみたいで。高いところから突き落としてくれって、夫に言ったこともありました。彼は「殺人犯になるからいやだよ」と言ってくれましたけど、同じことですよね。彼女を苦しめているのは、夫がセックスをしてくれないこと。性の喜びにつながるはずのセックスが。裏を返せば人を「殺す」武器にもなりうるということか。
 
キム・ミョンガンが主催する相談所「せい」の「せい奉仕隊」は、単に話を聞いたり、薬を処方したり、夫の協力も得て二人の仲を見つめ直してもらうというのではなく夫以外の男性とのセックスを「解決法」として勧めている。そのお相手になるのが、ボランティアとして組織されるせい奉仕隊だ。(売買春とは違い、性行為への対価は支払われない。キムが紹介料をとることもない)
 
・パートナーとの性の楽しみを分かち合えないなら、女性だって別の相手を探せばいい、というのがキムの基本的な考え方だ。「ここは野戦病院みたいなもの。傷つき、喉がからからに渇いているひとには、とにかくコップ一杯の水を飲んでもらうしかない」
 
・「マスターベーションをしたらどうですかと、バイブレーターのカタログを見せた。そうしたら『私は膣にモノを突っ込みたいんじゃないんです!』と怒られましてね」彼女たちに欠落している部分人間でしか埋められない。ぬくもり、抱擁、愛撫、言葉、表情、視線、快感……そのすべてがセックスであり、かわりになるものは、たぶんない
 
・(あなたにとってセックスとは?)「つまらない答えだけど、『必要なこと』ビールの泡みたいな感じかな。なくても飲めるけど、なかったら美味しくない。これまで何度も、このままじゃ自分が枯れていく、心の中がからっぽになっていくって思った」
 
彼女が求めているのはたぶん、セックスという行為そのものだけではない。自分の話に耳を傾け、いっしょに喜び、悲しんでくれる、そして思い切り包み込んでくれる存在がほしい。セックスはその一部であって、すべてではない。
 
・(香山リカ)やっぱり!でも、負けた……。精神科医であるがゆえに私は、「性の奉仕隊」を紹介するといったストレートな処方箋は示せない。「パートナーと性の楽しみを分かち合えないなら、女性だって別の相手を探せばいい」とは、たとえそう思っていても精神科医はとても口を出すことはできない。「奉仕隊」とのセックスに命を救われた、という女性が語る言葉を知ったら、世の男性も「こんなことをするのは欲求不満の女性たち」などとは言えなくなるはずだ。
 
「このまま女として終わりたくない」「セックス小国日本の現状」「胞子体を利用した女性たち」「隊員たちの本音」など。
 
なかなかすごいルポルタージュだなあ……。これが日本の現状なんだろうなあ。「野戦病院」は必要なんだろうねえ。興味ある方、オススメです。(・∀・)
 

キム・ミョンガンのオフィシャルサイト 相談所「せい」

 

 

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セックス レスキュー

セックス レスキュー

 

 

「晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生」(パリッコ)

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晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生

晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生

  • 作者:パリッコ
  • 発売日: 2018/03/30
  • メディア: 単行本
 

「酒場のギター弾き」であるワタシ。歌手でもないシンガーソングライターでもない、ましてはお笑い芸人でもない、「酒場のギター弾き」なのだ。(笑)一日の仕事が終わり、ホッとしたときに飲む一杯のビールやお酒。その癒やしの場である酒場に流れるBGM。その歌を聞いたときに「あ〜懐かしいなあ、あのとき、こんなことがあったよなあ〜!」と記憶がよみがえる。そう、「歌とは記憶」なのだ。「歌は世につれ世は歌につれ」というけど、次から次へと思い出す「歌」カラオケにもない自分だけの歌、マイナーミュージシャンやアイドルの歌、タイトルも知らないがなぜか記憶の片隅に残っている歌、で疲れをふきとばす、エネルギーを充電する、というようなサイコーの「お酒と心のおつまみ」がワタシの歌、といってもよいだろう。ということであちこちからお呼ばれして「流し」ております。(・∀・)

 

さてこの本。「多くの酒飲みが、一日の終わりを晩酌によってホッと締めくくっている。そんな、食事でありつつある意味で儀式でもある晩酌をとっかかりに、お酒や食事について話すうちに、人生哲学や普段は見せない素顔までが浮かび上がってくる──。「酒場ライター」として人気のパリッコが、11人のお相手たちと差しつ差されつ語り合った夜の記録と記憶は、すべての酒好きはもちろん、下戸な方にも染み入る「ちょっといい話」が満載。気軽に楽しく読める、けれど味わい深い一冊」そのエッセンスを紹介しよう。

 

 ・お酒にまつわる幸せな時間というものはいろいろあります。酒場でとことん無益な会話をつまみに友人たちと馬鹿笑いするひとときは何よりの楽しみですし、長年の歴史が堆積した老舗居酒屋の圧倒的な空気を全身に浴びながら、ひとり静かに飲む酒もまた、代えがたい恍惚の時間といえるでしょう。
 
・中でも特に「あぁ、今心がゆるんでいるなぁ……」と感じるのが「晩酌」の時間かもしれません。懐事情、腹具合、帰り道の心配、何もかもから解放され、自分の好き勝手にすごせる、ほろ酔いの時間。満足したらその場にバターンと倒れ込んで寝てしまったってい、究極の安心感。「究極のリラックスタイム」といえるのではないでしょうか?
 
・晩酌を広辞苑で引くと「家庭での晩の食事の時に酒を飲むこと。また、その酒」とありますが、本書ではもっと広く、その方が心からリラックスしてお酒を飲む時間」であると定義し、あまりにも個性的な11名の著名人にお話を伺いました。
 
・(かとうちあき)・野宿宴会を公演や川べりなんかでやると、それまでなかったはずの「場」がそこに出現するんです。誰が来るかわからないし、興味を持った通行人の方が一緒に飲み始めることもある。最初はふわーっと楽しくなるんですよ。だけどすぐい気持ち悪くなって、寝ちゃう。でもその「ふわー」の時間は幸せだから、努力して伸ばしていったという感じ。
 
たいがいチキンラーメンをひとつカバンに入れてるんですね。歩いているうち、それが良い感じにもろもろになる。その崩れた部分をちびちびポリポリかじりながら飲むのが好きですね。つまり、長持ち歩けば持ち歩くほどつまみが増える!そして締めにはラーメンまで食べられる!ひとつ持っているだけで確実に幸せになれるという安心感。
 
・(二村ヒトシ)・星の王子さま「のんべえの星」ってのが出てくるんですよ。どの星にも住人がひとりいて、王子さまが酔っ払いのおじさんになぜ酒を飲むのか尋ねたら、確か「恥ずかしさを忘れるためだよ」みたいなことを言うんですよ。で、「何が恥ずかしいの?」と聞くと「酒を飲むことが恥ずかしいんだよ」と。(パリッコ)いわゆるアル中の言い訳ですね(笑)
 
向井秀徳、今野亜美「志ら井」のもつ煮込み(川崎競馬場ピーター・バラカン林雄司河相我聞久保ミツロウ大谷能生「浅見本店」、かとうちあき二村ヒトシマリアンヌ東雲、ラズウェル細木それぞれのエピソードがユニークでオモシロイっ!
 
いいなあ、いつか「酒場のギター弾き」の本を出したいっ!オススメです。(・∀・)
 

 

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晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生

晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生

  • 作者:パリッコ
  • 発売日: 2018/03/30
  • メディア: 単行本
 

 

MUSIC〜「酒場のギター弾き」流し in「酒処 歩」PART 7(神田)

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酒処 歩

千代田区神田鍛冶町2-14-1(神田小路) 03-5256-2540

 

神田ガード下飲食店街にある神田小路。つい最近までこんなディープなところがあるなんて、つゆ知らず。(・∀・)耐震補強工事に伴う、来年1月に立ち退きするので、この雰囲気を味わえるのもあとわずか。

 

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この「昭和」の雰囲気の思い出を残そう!と始まった、この企画、「流し in 「酒処 歩」」も、早や7回目。8ヶ月ぶりに開催しました。

 

今回「初体験」の方も。いつも感じるんだけど、何がくるかわからない「歌のロシアン・ルーレット!(笑)歌のひとつひとつに味わいと思い出が湧き上がってくるっ!初めて歌う歌もいっぱいありましたっ!!!

 

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今回はじめて披露する新曲もご披露しましたー!
 
「お酒の歌メドレー」「トランプ大統領落選の歌  バイデン大統領当選の歌」「菅新総理誕生の歌」「カルロス・ゴーン三部作(逮捕の歌、保釈の歌、レバノン逃亡の歌)」
「自宅でリモートワークの歌」など。

 

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今日のリクエス
 
「初恋」(村下孝蔵)「酒と泪と男と女」(河島英五)「二重唱(デュエット)」「ロマンス」「センチメンタル」「聖母(マドンナ)たちのララバイ」「木綿のハンカチーフ」「雨だれ」(太田裕美)「風は南から」(長渕剛)「想い出がいっぱい」「二人だけのライブラリー」(H2O)「街の灯り」「さらば恋人」(堺正章)「翼をください」(赤い鳥)「今日までそして明日から」「落陽」「唇をかみしめて」(吉田拓郎)「津軽海峡・冬景色」(石川さゆり)「俺たちの旅」(中村雅俊)「俺たちの朝」「愛のメモリー」「私の歌」(松崎しげる)「めまい」「さらば青春」「揺れるまなざし」(小椋佳)「今はもう誰も」「遠くで汽笛を聞きながら」「冬の稲妻」「涙の誓い」「ジョニーの子守唄」「チャンピオン」(アリス)「ガンダーラ」「モンキー・マジック」「銀河鉄道999」(ゴダイゴ)「気楽にいこう」(マイク真木)「ケンとメリー〜愛と風のように」(BUZZ)「愛を止めないで」「言葉にできない」「眠れぬ夜」(オフコース)「もしもピアノが弾けたなら」(西田敏行)「追伸」(グレープ)「秋桜」「桃花源」「案山子」「不良少女白書」さだまさし)「22才の分かれ」(風)「夕陽が泣いている」(ザ・スパイダース)「太陽がくれた季節」(青い三角定規)「帰らざる日のために」(いずみたくシンガーズ)「勝手にしやがれ」「カサブランカ・ダンディ」「時の過ぎゆくままに」「コバルトの季節の中で」(沢田研二)「ブルースカイ・ブルー」「ギャランドゥ」(西城秀樹)「ダンシングオールナイト」(もんた&ブラザーズ)「みだれ髪」(美空ひばり)「ふたりの大阪」「喝采」(ちあきなおみ)「また逢う日まで」(尾崎紀世彦)などなど。
 

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メモを取っていないので、思い出して書いています。まだ漏れがありそう!次回は2021年1月15日(金)にやりますっ!!!このお店では最後の「流し」です。(・∀・)
 

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2月からは新店舗ですー!♪

 

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歌ったあとは心地よい爽快感っ!神田の街をあとにしますっ!♪ また次回、会いましょう!♪

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「本をつんだ小舟」(宮本輝)

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本をつんだ小舟 (文春文庫)

本をつんだ小舟 (文春文庫)

  • 作者:宮本 輝
  • 発売日: 1995/05/10
  • メディア: 文庫
 

ワタシの青春時代に夢中になったドラマがあった。それが宮本輝青が散る佐藤浩市石黒賢二谷友里恵川上麻衣子利重剛などの二世タレントのオンパレード!!!主題歌の松田聖子『蒼いフォトグラフ』は名曲だよね〜!

 

そして宮本輝原作といえば、すぐに引退しちゃったけど、沢田玉恵主演の『蛍川』も良かった〜!同じ『輝・つながり』ということで親しみがある作家だ。(・∀・)

 

さて、この本。「作家・宮本輝がよるべない青春を共に生きた三十二の名作。自伝的な思い出を込めて語った、優しくて痛切な青春読書案内」そのエッセンスを紹介しよう。
 
・実際、私は小舟のようなものだった。14歳の初夏から18歳の冬まで、私という艫(ろ)もなく櫂(かい)もなく、まともな舵もついていない小舟は、いまにも沈没寸前の状態で、あちこちの海をあてどなく漂流していた。時代でいえば、昭和36年から40年の終わりにかけての、日本が急速に経済発展していったころだった。「おんぼろ小舟」はなにも私だけだったのではない。その年頃の少年は、みんな「おんぼろ小舟」だったに違いない。何もかも思いどおりにならず内側から吹き出てきて行き場を失くす自我や、正体不明の抑えようのないエネルギーを持て余し、自分という小舟をどう扱ったらいいのか検討もしかないまま、ただやみくもに波や風に逆らっている。
 
私は本を読むのが好きだった。勉強も嫌い、スポーツも嫌い。兄妹もなく、友だちもあまりいない。父は借金取りから逃げて家に帰ってこない。母は希望を喪って昼間から酒にひたり、目を離すと市電のレールの上を歩いていたりする。当時はそんな生活だったのである。そんな私という小舟には、古今東西の本が積まれていた。私は、いかなる本を読んで、よるべない時代を過ごしたのだろうそれを書き留めておくことも悪くはない。いわば少年時代の読書録「本をつんだ小舟」と題して、そのときどきの自分にまるわる光景とともに、幾つかの小説のことを書きしるすことにしよう。
 
「青春」(ジョセフ・コンラッド)「野」(上林暁)「トロワ・コント」(フロベール)「悪の華」(ボードレール)「青べか物語」(山本周五郎)「昆虫記」(ファーブル)「おはん」宇野千代)「飢餓海峡」(水上勉)「恋について」(チェーホフ)「異邦人」(カミュ)「あすなろ物語」(井上靖)「貧しき人々」(ドストエフスキー)「山の人生」(柳田國男)「高野聖」(泉鏡花)「ジョニーは戦場へ行った」(ドルトン・トランボ)「雨の降る品川駅」(中野重治)「蜜柑(「黒い御飯」「手袋のかたっぽ」「沿い白い犬」「電車を降りて」「一個」「青梅雨」)」(永井龍男)「はつ恋」(ツルゲーネフ)「山頭火句集」(種田山頭火)「マテオ・ファルコネ」(メリメ)「楢山節考」(深沢七郎)「測量船」(三好達治)「にごりえ」(樋口一葉)「どくとるマンボウ航海記」(北杜夫)「肉体の悪魔(ラディゲ)「雨」(サマセット・モーム)など。

 

まだ全然読んでないなー!来年は全作読破を狙いますっ!オススメです。(・∀・)

 

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本をつんだ小舟 (文春文庫)

本をつんだ小舟 (文春文庫)

  • 作者:宮本 輝
  • 発売日: 1995/05/10
  • メディア: 文庫
 

 

「殺人出産」(村田沙耶香)

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殺人出産 (講談社文庫)

殺人出産 (講談社文庫)

 

 最近、ハマっている、芥川賞作家の村田沙耶香さん。ネットで実物(笑)を拝見すると、小説のヘビーな内容とは違って、意外に(笑)可愛い女性です。(笑)

 

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さて、この本、村田沙耶香ワールド炸裂っ!タイトルからスゴいよねー!!!

 

「産み人」となり、10人産めば、1人殺してもいい──。そんな「殺人出産制度」が認められた世界では、「産み人」は命を作る尊い存在として崇められていた。育子の職場でも、またひとり「産み人」となり、人々の賞賛を浴びていた。素晴らしい行為をたたえながらも、どこか複雑な思いを抱く育子。それは、彼女が抱える、人には言えないある秘密のせいなのかもしれない……」そのエッセンスを紹介しよう。
 
今から100年前、殺人は悪だった。それ以外の考えは存在しなかった。もちろん、今だって殺人はいけないこととされている。けれど、殺人の意味は大きく異なるものになった。昔の人々は恋愛をして結婚をしてセックスをして子供を産んでいたという。けれど時代の変化に伴って、子供は人工授精をして産むものになり、セックスは愛情表現と快楽のためだけの行為になった避妊技術が発達し、初潮が始まった時点で子宮に処置をするのが一般的になり、恋をしてセックスをすることと、妊娠をすることの因果関係は、どんどん乖離していった。
 
殺人出産システムが海外から導入されたのは、私が生まれる前のことだ。10人産んだら一人殺してもいい反対派の声も大きかったが、一度採用されてしまうとそちらのほうがずっと自然なことだったのだと皆気付くこととなった。命を奪うものが、命を造る役目を担う。恋愛とセックスの先に妊娠がなくなった世界で、私たちには何か強烈な「命へのきっかけ」が必要で、「殺意」こそが、その衝動になりうるのだ。殺人の意味は大きく変わり、それを行う人は「産み人」として崇められるようになったのだ。
 
「産み人」は、10人目を産み終えると、すぐに役所に殺人届を提出する翌日には殺す相手に電報で通告が行く。それから「死に人」には一ヶ月の猶予が与えられる。通常は一ヶ月後に役所に人間はやってきて自分を連れて行く日を、身辺整理をしながらゆっくり待つことになる。その日が来ると、連れて行かれた「死に人」は全身に麻酔をかけられ「産み人」と二人で窓のない白い部屋に閉じ込められる。そこから先は産み人」の自由だ。半日後、遺体は遺族の元へと引き取られていく。
 
「ねえ、知ってる?『産み人』システムが導入された国は、自殺が物凄く減るんだって!」「あ、わかる気がするー。いつ死ぬかわからないもんね。生きてることが本当に有難く思えるし、自分で死のうなんていう気もなくなるよね」
 
・「突然殺人が起きるという意味では、世界は昔から変わっていませんよより合理的になっただけです。世界はいつも残酷です。残酷さの形が変わったというだけです。私にとっては優しい世界になった。誰かにとっては残酷な世界になった。それだけです
 
他の三編の「トリプルの『正しいセックス』」「清潔な結婚」「余命」も、実にオモシロイ!大げさだけど、これからはこんな風に世の中が変わる予感がする。実に考えさせられる。超オススメです。(・∀・)

 

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殺人出産 (講談社文庫)

殺人出産 (講談社文庫)

 

 

「飯テロ 真夜中に読めない20人の美味しい物語」(名取佐和子、日向夏、ほしおさなえ)

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食べるのが好きじゃない人はいないと思うけど、食のエッセイやエピソードを読むのも好き。いままでサイコーだったのが、感涙必死のこの本。思い出しただけで涙が出る……。(T_T)

 

lp6ac4.hatenablog.com

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この本のタイトル「飯テロ」!そそられるじゃあーりませんかっ!

 

 「定番のおかず、母親の味、特別なスイーツ、店の裏メニュー、皆で食べるおやつ――。真夜中に読むのは危険です!? 読むほどにお腹が空く、人気作家の書き下ろし短編やコミックも入った、垂涎必至の20人の食物語」その中で最も感動したストーリーの一部を紹介しよう。

 

 
「Mother’s Recipe」(ジョセフ武園)
 
娘より
 
お父さん……お父さん……お父さん!お父さん!お父さん!
あのね?あのね!ごめんなさい!
小学校の頃も。中学校の時も。高校生になっても。
私……照れくさくて……いつも、お父さんに生意気言ってた。
ホントは……ホントはね?……いっぱい……いっぱい言いたかった。
小学校の時。一生懸命女の子向けの可愛いお弁当を考えてくれてありがとう。
中学生になって、喧嘩した翌日は、決まってケーキだったね?ありがとう。。
高校、偏食だった私の体を気遣って、お魚料理をありがとう。
短大時代、毎日毎日、どんなに忙しくても、ご飯を作ってくれてありがとう。
……それと……あたし、意地っ張りだから……。
あの時は、言えなかったけど……とってもーとってもね。
ーおいしかったよ。
 
 
その他、「さかもっちゃん!(ポテトサラダ)」(規村規子)「スイーツの魔法」(眞村六郎)「異世界米騒動(ヤキオニギリ)」(ポムサイ)「ぐずぐず飯屋 残り物」(七野枝寿々)「思いやりのレシピ(大分転勤)」(渡波みずき)「レシピのないカレーライス」(爽川みつく)「味噌汁王子」(ほしおさなえなど。
 
ああ……「感涙食堂」続編、読みたい!泣きたい!オススメです。(・∀・)♪

 

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「敗れても 敗れても 東大野球部「百年」」の奮戦」(門田隆将)

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以前からずっと不思議だった、東京六大学野球。なぜこの六大学なのか?なぜ唯一、国立の東京大学が入っているのか。負けて負けて負け続けている東大がっ!!!(・∀・)その秘密がこの本にっ!!!

 

「戦場の知事」島田叡は昭和20年6月、沖縄・摩文仁の丘で消息を絶った。遺骨は現在も見つからない。東京帝大野球部OBの一人である。日本の野球史そのものである同部の歩みには、卒部生の数々の壮烈な人生が浮かび上がる。野球の「本質」とは何か。ひとつの目標に向かってひた走ることの「価値」とは何か。その原点を追う渾身のルポルタージュ負けても負けても、それでも挑戦をやめない集団――史上最多の17勝をあげた伝説の大投手や、初優勝に“あと一歩"まで迫った「赤門旋風」の主役たち、150キロ左腕・宮台康平らへの徹底取材を通じて、すべてが解き明かされる」そのエッセンスを紹介しよう。
 
 
・学生野球の頂点に立っているのは、ご存知、東京六大学リーグである。その中に一度も優勝を成し遂げたことがない不思議なチームがある東京大学野球部平成31年には「創部100年」を迎える伝統の野球部である他の5大学に比べて大きなハンディがある。甲子園に出場したような野球エリートが「入って来られない」のである。
 
・もともとの力量が圧倒的に劣っており、仮に勝利を得るとしても、それは創意と工夫。そして努力によって「実力差」を克服しなければならないという「宿命」を背負っている。言い換えれば、東大野球部を考察することは、野球というスポーツの「本質」を問いかけるものである。通算253勝1618敗、引き分け55、勝率、一割三分五厘(平成29年秋季リーグ終了時点)平成27年には前人未到の94連敗敗れても敗れても、それでも挑戦をやめない一風変わった集団ーそれが東大野球部なのだ。
 
・私がこの部に興味をいだいたのは、ある人物の存在による。島田叡(あきら)太平洋戦争末期、青酸カリと日本刀、そして『葉隠』と『南洲翁遺訓』という二冊の本を持って知事として沖縄に赴いた内務官僚である。島田は学生時代、東京帝大野球部で俊足巧打の外野手として鳴らした名選手だった。野球部のために高等文官試験の受験を一年棒に振るという自己犠牲を示した人物でもある。そして、わずか43歳で閉じた人生の最期にも、さまざまな場面で、勇気と優しさと心意気を示した。日本が戦争に敗れることを知っていても、それでも自らの職責に忠実で、住民のために死力を尽くす。それが、今も沖縄の人々に「島守」として島田が慕われつづける理由である。
 

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東京六大学リーグは、野球界の中で唯一、天皇杯が下賜されている。それは、同リーグが伝統と真剣さに裏打ちされた最高の「勝負の世界」にあるという誇りの証でもある。なぜ、こう負けつづけるのか。勝てなくてもいいのか。しかし、それでも東大野球部は挑戦する。なぜ島田叡のような人物をこの部は育んだのか。力が劣りながら、それでも挫けず、挑戦し続ける「何か」に、その秘密があるのかもしれない。
 
・岡村甫「東大野球部の優勝は夢です。夢がたとえ実現しなくても、その夢に向かっていけばいいんじゃないかと思います。とにかく、甘い球が来たら打って、チャンスを三回か四回つくって、その一回をものにすればいい。その中で、三点か四点を取ればいい。それが、とりあえずの目標です。それを、ずっとつくり上げて続けていけば、いいピッチャーが来たときがチャンスなんです。十年にひとりぐらいは出てくるものですからね。そのときがチャンスなんです」
 
・小林至「東大野球部は神様からの贈り物です。野球が大好きで、そんなにうまくない子が大舞台に立てるチャンスをくれる場所だと思います。高校のときにそんなに大したことがなくても、最高峰に近い選手たち、つまり、甲子園のスターたちと真剣勝負をさせてもらえるのですから、こんな素晴らしいことはないですよ」
 
東大野球部のスカウトは特殊だ。仮に東大を受験し、不合格になった場合は、「浪人」してもらわなければならない。これは、ほかに早稲田や慶應などに現役合格しても、それを蹴って「浪人してください」という意味である。つまり、そのことを親御さんや本人にお願いするために存在すると言ってもいいだろう。
 
点を取られても取られても、応援部も、顧客も、絶対に挫けない。悲壮な雰囲気の中で、応援部は声を枯らし続ける。彼らにとっては自分たちの応援が足らないから野球部が負けている」のである。「ひょっとしたら」の思いを胸に通い続けるファンも、時代を超えて絶えることがない。東大野球部にとって、負けることは「あたりまえ」だ。しかし、たとえそうであっても、部員たちは「次は勝つ」「いつか必ず優勝を」という思いを絶対に捨てないのである。便利なインターネット時代に、これほどアナログで、これほど愚直な姿勢で、挑戦をつづける組織の貴重さを思う。そして苦しくても、引き継がれる目標も弱音も吐かずに追い求め、歴史を伝統を継承しようとする精神を貴重だと思う。天国にいる島田叡も、毎年東京大学と刻印されたボールを持って、手を合わせに来てくれる後輩が自分と同じように今も勝利を目指して精進していることに微笑んでいるに違いない。

 

「無敵を誇った一高野球」「苦難の道と六大学加入」「伝説の最多勝投手・岡村甫(はじめ)」「四年間「勝ち星」なし」など。

 

目が悪くなって中学で野球を諦めたけど、本当は神宮で野球、やりたかったなあー!島岡さんの指導を受けたかったなー!♪ いつかは東大が優勝する日がくるかも!オススメです。(・∀・)

 

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