「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「殺人出産」(村田沙耶香)

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殺人出産 (講談社文庫)

殺人出産 (講談社文庫)

 

 最近、ハマっている、芥川賞作家の村田沙耶香さん。ネットで実物(笑)を拝見すると、小説のヘビーな内容とは違って、意外に(笑)可愛い女性です。(笑)

 

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さて、この本、村田沙耶香ワールド炸裂っ!タイトルからスゴいよねー!!!

 

「産み人」となり、10人産めば、1人殺してもいい──。そんな「殺人出産制度」が認められた世界では、「産み人」は命を作る尊い存在として崇められていた。育子の職場でも、またひとり「産み人」となり、人々の賞賛を浴びていた。素晴らしい行為をたたえながらも、どこか複雑な思いを抱く育子。それは、彼女が抱える、人には言えないある秘密のせいなのかもしれない……」そのエッセンスを紹介しよう。
 
今から100年前、殺人は悪だった。それ以外の考えは存在しなかった。もちろん、今だって殺人はいけないこととされている。けれど、殺人の意味は大きく異なるものになった。昔の人々は恋愛をして結婚をしてセックスをして子供を産んでいたという。けれど時代の変化に伴って、子供は人工授精をして産むものになり、セックスは愛情表現と快楽のためだけの行為になった避妊技術が発達し、初潮が始まった時点で子宮に処置をするのが一般的になり、恋をしてセックスをすることと、妊娠をすることの因果関係は、どんどん乖離していった。
 
殺人出産システムが海外から導入されたのは、私が生まれる前のことだ。10人産んだら一人殺してもいい反対派の声も大きかったが、一度採用されてしまうとそちらのほうがずっと自然なことだったのだと皆気付くこととなった。命を奪うものが、命を造る役目を担う。恋愛とセックスの先に妊娠がなくなった世界で、私たちには何か強烈な「命へのきっかけ」が必要で、「殺意」こそが、その衝動になりうるのだ。殺人の意味は大きく変わり、それを行う人は「産み人」として崇められるようになったのだ。
 
「産み人」は、10人目を産み終えると、すぐに役所に殺人届を提出する翌日には殺す相手に電報で通告が行く。それから「死に人」には一ヶ月の猶予が与えられる。通常は一ヶ月後に役所に人間はやってきて自分を連れて行く日を、身辺整理をしながらゆっくり待つことになる。その日が来ると、連れて行かれた「死に人」は全身に麻酔をかけられ「産み人」と二人で窓のない白い部屋に閉じ込められる。そこから先は産み人」の自由だ。半日後、遺体は遺族の元へと引き取られていく。
 
「ねえ、知ってる?『産み人』システムが導入された国は、自殺が物凄く減るんだって!」「あ、わかる気がするー。いつ死ぬかわからないもんね。生きてることが本当に有難く思えるし、自分で死のうなんていう気もなくなるよね」
 
・「突然殺人が起きるという意味では、世界は昔から変わっていませんよより合理的になっただけです。世界はいつも残酷です。残酷さの形が変わったというだけです。私にとっては優しい世界になった。誰かにとっては残酷な世界になった。それだけです
 
他の三編の「トリプルの『正しいセックス』」「清潔な結婚」「余命」も、実にオモシロイ!大げさだけど、これからはこんな風に世の中が変わる予感がする。実に考えさせられる。超オススメです。(・∀・)

 

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殺人出産 (講談社文庫)

殺人出産 (講談社文庫)