大阪に行ったときに気づくのは、自分は関東人なんだなあということ。やっぱり大阪人のようなトークや切り返しができないなあ、とつくづく感じる。フツーの会話が漫才に聞こえるもんなあ!(笑)
「注文された品物がないときは「おまへん」ではなく「おまへんねん」と答える。動物園の檻の前の立て札には「かみます」とだけ書いてある。距離をとらずにさっぱりと、聞いて退屈せんように、なんなと工夫して話すのでなければ、ものを言う甲斐がない。誤解されがちなことばの意味と背後にある感覚を、鋭く軽快に語る大阪文化論」そのエッセンスを紹介しよう。
・(震災後)「みんな親身になって心配してくれて、ありがたい思てます。はい。二日目には京都と大阪から親類がとんで来てくれて、『今なにが一番欲しい』ゆうて尋ねるから、『家が欲しい』言うたら、『そら、わしらも欲しい』て……」
・「毒グモが日本にはいって来ているらしいんですけど、どうですか」
「いややわ、そんなもん。……もうちょっとええもんに来てもらいたいわ」
・「毒グモがもしいたら、どうしますか」
「そら、たたき殺すわ」
・ことばを二回くり返して返事をすることが、大阪では、たしかによくある。
「おっちゃん、いてるか」「いてる、いてる」
「あの話、聞いたか」「聞いた、聞いた」
「探してたサイフ、あったか」「あった、あった」
「今日は暑いなあ」「暑い、暑い」
・なぜ、大阪ではくり返して言うのか。一回ではあいそがないという気持ちが働くのであろう。せっかく「サイフあったか」と好意できいてやってるのに「あった」とひとことで片付けられたら、「ひとのこと、ほっといてんか」と言われているゆおpな気がする場合さえあるだろう。「あった、あった」とくり返して応えてこそ。「ようきいてくれた、ありがとう」という気持ちが相手に伝わるのである。
・ネンをつけたらよろしねん。ことばにネンが足らんのは気持ちに念が足らんのや。相手と自分の間に作るまいとする傾向の強い大阪弁にとって、このような響きを持つ「ネン」はまことに便利なことばである。
・「大阪では駅のホームに『のりば』と書いてあるんですねえ」と、東京の人が感心していたことがある。東京では「何番線乗車ホーム」とあって、「のりば」とは書いていない。乗る場所だからあ「のりば」でよいではないか。それが一番わかりやすい。公共職業安定所の看板も平仮名で「あんていしょ」となっているし、警察ですら「そねざきけいさつ」である。
・どこの動物園でも「危険ですから手や顔を近づけないでください」というような看板が出ているが、神戸の王子動物園のオリの前の立て札にはただひとこと「かみます」とあった。このぐらいわかりやすい立て札はない。
・大阪の人の求めるものがおもしろいことであるよりもおもしろい人である以上、お笑いのタレントは徹頭徹尾そのキャラクターになりきらねばならない。
・大阪の人が歩く速度は、日本一早いそうである。調査では一番ゆっくり歩くのは沖縄県で、大阪人の歩行速度は東京よりも早く、日本で一番せっかちで、世界中の大都市の中で最も速いらしい。
・大阪の地下鉄では、硬貨を一枚一枚いれなくても、ジャラッと流しこんだら機械の方で何円分かを勘定してくれる。「硬貨一括投入券売機」は1988年から設置し始めた。東京ではまだ少ない。要するにそんなことにカネをかける必要はないという感覚のせいである。
・あんた、根性悪い。
おまはんとこ、魚屋やなあ。
この提灯、もろて往ぬで。
こんなめでたいことないやないか、言うてな。
「が」「は」「を」「と」が省略されているのであって、これらの助詞の省略率は東京に比べると大阪のほうが高く、大阪ではどんなに改まった物言いでも、ある程度の省略は最後まで残るというのである。なぜ助詞を付けないことが多いのか。