またまた松本隆の本。いいなあ。この本そのものが詞そのものだし、作詞のテキストだね。すごいなあ!何気ない表現にフセンをはりたいところだらけだわー!♪
「風をあつめて」「木綿のハンカチーフ」「ルビーの指環」「赤いスイートピー」「硝子の少年」……伝説のロックバンド「はっぴいえんど」でドラムと作詞を担当。解散後は作詞家として2000曲以上を手がけ、50曲以上がヒットチャート1位に。数多くのヒット作を生んだ」そのエッセンスを紹介しよう。
・ぼくにはテクニックや方法論について、 人に語るようなことなど、なんにもないんですよ。 テクニックに頼った瞬間、言葉は浅くなるんです。「 これだけ押さえておけば大丈夫」「この言葉を入れればOK」 こういう定型やテクニックは、 ぼくからいちばん遠いところにあります。
・真っさらな状況がベスト。 そこから浮かんでくる言葉で表現する。 本当に自由に好きな家をつくるなら、 家具が全くない状態がいいのです。 なにもない状態は人を不安にさせますけど、 無から生まれるものには強さが備わっています。
・ぼくはずっと日本語にこだわった表現してきました。 英語だとひとことブルーに尽きるところを、藍色、群青色、 瑠璃色、青藍、空色、紺碧……無限にあります。 それに自分で新しい言葉をつくることだってできる。
・もし、 詩や歌詞を書きたいと思っている人がこの本の読者にいるなら、 毎日起きていること、自分の目に映ること、 シーンや感情を記憶に刻んでおくといいと思います。
・あるとき、 実験的に目に映るものすべてをノートに書いてみようとやってみた ことがありました。待ち合わせた人がなかなか来ないので、 その時間潰しにちょうどいいな、と。喫茶店の、 外のよく見える窓際に腰をおろして、 そこから目に入ってくるものを次々言葉に置き換えていきました。 そうすると大学ノート3ページくらいが、 気づけばびっしりと文字で埋まってました。 人間の目がとらえる情報って、 自分が考えているよりずっと多いです。目になにがどう映るか、 普段は意識しないけど、敢えて意識的にものを見ると、 発見があるかもしれません。
・ビートルズがなぜ世界を征服できたかというと、 詞の世界に3人称を持ち込んだからだと思っています。 それまでの歌って、ほとんどがYou&Meでできていて、I( 私)だけだった。ビートルズが描く世界は「私とあなた」 の他にもうひとりいた。ほら「She Loves You」とかそうでしょう。するとそこに社会ができる。 歌のなかに世界や時代が立体的に立ち上がってくる。 そうやって歌はリアルになった。そういう音楽で育ったぼくには、 平面的な歌がつまらなく感じられて、 立体的な世界をつくろうとやってきました。
・好奇心が強くないと詞は書けない。人を感動させるには、 まず自分の心を動かすこと。そのためには好奇心が欠かせません、 あとは、自分の心がなぜ動いたのかを問い詰める。 その答えを見つけてから書く。 そんなところが哲学的な作業かもしれません。
・「好きよ」は、いちばん好きな言葉です。 好きとか愛しているって、 いちばん重かったり強かったりするでしょう。きっと紀元前から、 それは人間の基本にある。だから「好きよ」と言うとき、 それがいちばんよく聞こえるように書きたい。
・『赤いスイートピー』で相手が時計をちらっと見る。 それ以上は書かないのがミソ。答えは出さないで、 問いかけだけする。答えまで書いちゃうとダメなわけ。 そこまでで止めておくと、 みんな似た経験をしてるから伝わる歌になる。 ディテールをまわりに積み上げていって、肝心なことを書かない。 すべてを伏線にしていくのだけど、どこかでバーンと合わせる。 そうすると、とんでもない感動が来る。 ディテールを積み上げるっていう方法。
・ゆとり教育といわれるけど、あれはぼくは失敗だと思っていて。 なんでかっておいうと、学校は語彙をいっぱい、 漢字も100字でも多く教えるとか、そういうところだから。 丸暗記でいいじゃないって思う。考え方は、 あとから自分で学ぶしかないし、 そのために本だっていっぱいある。語彙がたくさんあれば、 自然と考え方が出てきますよ。滲み出てくるから。 まず知ることだよね。言葉を知る。表現の幅が広がるし、 見え方が変わってくる。知ってないと、なにもできない。
・「出会う偶然って、意外とないんじゃないかって。 それはなにかで用意された必然じゃないかって思う。 ひょっとしたら、昔から仕組まれていたことかもしれない」
一度、実験「目に映るものすべてをノートに書いてみよう」かな!ちゃんとした作詞にチャレンジしてみるか。オススメです。(^^)