ワタシが音楽に興味を持ち始めたのは、昭和40年代半ばの演歌と歌謡曲だ。五木ひろし、小柳ルミ子、天地真理、麻丘めぐみ、アグネス・チャン、花の中三トリオなど。そしてその後のかぐや姫、グレープ、吉田拓郎、井上陽水、ふきのとう、N.S.Pなどに続く。
そしてその原点を探ろうと関西フォークにたどり着き、さかのぼるように聞いていった。高石ともや、岡林信康、加川良、友部正人などなど。そしてフォークにどっぷりハマるようになる。
さてこの本。ワタシの音楽の原点でもある、関西フォークをマジメに語った本。
「ベトナム反戦運動や学生運動を背景に、社会批判や反戦のメッセージを込めた関西フォークは、多くの若者を引き付け、強い支持を得た。1969年の新宿駅西口広場でのフォークゲリラにつながる関西フォークはどのように現れ、どのような人々が関わり、何を表現し歌ったムーブメントだったのか。
本書では、関西フォークの歌詞と現代詩との関わりに着目して、岡林信康、高田渡、松本隆、友部正人などのフォークシンガーの音楽実践を「ことば」を中心に描き出す。そして、歌い手をサポートした片桐ユズルや有馬敲らの文学者・文化人の活動やその意義にも光を当てる。
関西という地でフォークソングを歌い新たな表現を追い求めた若者たちとそれを支えた文化人の交流の場として関西フォークを位置づけ、「声の対抗文化」として評価する。関西フォークの音楽性や文学運動としての側面を検証する研究書。片桐ユズルへのインタビューも収録」そのエッセンスを紹介しよう。
①文化の側面
関西フォークの動きには
商業主義的なシステムとは別のものとして生成していった側面がある。まずその点に意義を見いだす。
②音楽性の側面
関西フォークが登場した当時のレコード歌謡では、
自分で作詞作曲した曲をその本人が歌うようなことはまだまだ一般的ではなかった。関西フォークのシンガーたちは、
歌い方やギターの演奏法を専門的に学んだわけではなく、
見よう見まねでそれを身につけた。いわば素人の〈
ミュージシャン〉だった。
というより
フォークソングとはそもそもそのような性質のものなの
である。
関西フォークを再考するということは、自分が作詞作曲した楽曲を自ら歌うという、現在のミュージックシーンでは当たり前になった営みを歴史的にさかのぼることにならない。〈オリジナル〉
として作詞作曲された曲が自由に歌われることの意義を再確認すべ
きだと考えるのが、本書のスタンスである。
・人前で歌い始めた
岡林信康が急速に人気を得たのは、
聴き手の溜飲を下げるような歌詞だけが要因ではなかっただろう。
現存する当時のライブ音源を確認すると、
岡林は聴き手を強く引き付けるパフォーマンスの持ち主だったこと
がはっきりわかる。
会場全体であらゆるものをちゃかしていく雰囲気が作られ、
それを可能にしているのが、
岡林のユーモアあふれる語りや道化であり、それによって生まれる聴き手との掛け合いだろう。
なかでも特徴的なのは、岡林は歌や語りで時折効果的に声色を変えることだ。ギター漫談ともいえるような軽快さで、権力をはじめとしたあらゆるものを聴き手とともにちゃかし、笑いを共有していくのである。
・
友部正人の歌は、
ボブ・ディランの影響を強く受けていて、
友部の歌の特徴は、
その
トーキングブルースを日本語で評点している点にある。
「初期の
ボブ・ディランの歌のスタイルで、
いちばんぼくの興味をひいたのが、「
トーキング・ブルース」
だった。これは
ギターを弾きながらただ語っていくのだ。
だからメロディーはないし、楽譜にも書けない。
だけで語りはリズムがあって、
そのリズムでギターを弾きながら語るので、
これはただのお話ではなく音楽である。結局
このトーキング・ブルースがぼくの歌の基本になっていく。語ったままのメロディーが、
ぼくにはいちばんありのままの音楽だった。ブルースやロックン・
ロールも、トーキング・
ブルースを受け継いでいるとぼくは思っている。
・
松本隆は
「一本道」を初めて聴いたときのことを次のように回想している。
「昔、渋谷のBYGではじめて
友部正人の
「一本道」を聴いた夜、
ぼくは銀のハンマーで脳天を直撃されたようだった。
あれから二十数年の時が流れ、
詞もメロディーも忘れてしまったが
「もの凄さ」だけは、まるで昨日のことのように心に貼り付いている。日本語の歌で、
ぼくにあんな衝撃を与えることができた人間は、
友部正人しかいない」
・詩人の川端隆之は
「大量消費のポップミュージックの枠組みから外れてしまうものを積極的に許容し、確信犯的に発表してしまう友部正人の音楽の魅力」として評価している。
あの時代を現役で聴いているわけではないけれど、時代息吹が感じられる。知らない間に、ワタシは関西フォークと岡林に影響を受けているんだなあ、と今更気づいたわー。フォークファン、必読っ。オススメです。(・∀・)