「1980年代初頭、栗本慎一郎が一躍時代の寵児に躍り出る契機となった名著に16頁分を加筆した増補版。ヒトの社会に充満する混乱を解きほぐすために、あらゆる学問界の障壁を取り払い、「過剰」「蕩尽」「パンツ」というキーワードで、ヒトの本質を平易な言葉で解明した本書の魅力は今なお色褪せない」そのエッセンスを紹介しよう。
・ヒトはその進化史の初期から、 それなりに殺し合っていたということだ。 それもかなり積極的にである。 スペインのカスティーラ地方で発見された旧石器時代の洞窟画では 、殺し合いや戦争のシーンが横溢(おういつ)している。 だから攻撃なき原始社会という神話は、すでに過去のものだ。
・ヒトを除けば、おカネ(貨幣)を使う動物はいない。 それがヒトと動物を区別する最大の目安になると言える。
・ヒトは、自らの生存と生殖に必要以上のものを、 生産ー消費する生物となった。この時点から、 ヒトは地球という調和水槽におけるはみ出し者、 過剰な存在として歩み始めた。
・なぜ、ヒトは、 はく必要のなかったパンツをはくようになったのだろうか。 この疑問に答えることは、とりもなおさず、 ヒトの性について考えることでもある。なぜなら、ヒトは、 他の動物と違って、性行為のときには、 パンツを脱がなければならないからである。
・北アメリカのシワン族の社会では、 男同士で性関係を持たない成人は変人扱いされ、「異常」 だとみなされてしまう。また、シベリア北端のチュクチ族では、 男同士の結婚が存在し、子どもを作るためには、「メカケ」 の女性とセックスする、という制度が認められている。 チュクチの男は、ある日突然、自らをシャーマンだと名乗り、 女装を始める。いい歳をしたヒゲ面の男がである。彼は、 女性の仕事である針仕事や皮みがきをやりはじめ、 体つきまでもが女性的になってしまう。
・軍隊にはホモが多いのである。江戸時代では、同性愛は「高級」 だったのである。
・なぜヒトは同性愛を禁止したのか。それは、 同性愛を通じて垣間見る死の世界が、 異性愛以上のエロティシズムを感じさせることを発見したからであ る。つまり、妊娠可能性のない同性愛は、 異性愛以上に根本的に無駄であり、 より非日常的であることを発見したがゆえに、 日常的生活のなかからは遠ざけたのである。これは、 決して逆説ではない。
・京都大学の森毅元教授「あるときサル学者たちが集まって、 類人猿と人間では雑種ができそうだ。 チンパンジーで実験したいけど、 できたコドモの戸籍はどうしよう、なんて話をしていると、 隅のほうにいた今西錦司先生が身をのりだしてきて、“おい、 ゴリラはおれにやらせろよ!!”」 ひと言にしてヒトの性の本質をズバリついておられる。
・ヒトがパンツをはくようになったのは、 日常的な生活のなかでは、性をひたすら隠しておき、 ある特定の非日常的な時間や空間でそれを脱ぎ去り、 一気に陶酔し、興奮し、過剰を処理するためなのである。
いやー、確かに色褪せないわー!深いわー。またじっくり再読したいね。オススメです。(^o^)