「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「いちど混じってみたかった」(桝田武宗)

いちど混じってみたかった

いちど混じってみたかった

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人生は一度きり。だからいろんな体験をしたければ、本を読むのがいいよね。それで多くの人生を追体験できる。(・∀・)

 
さてこの本は、そんな願望を実現した本。
「こっそりとばれないように、見知らぬ人たちの中に混じってみると、得体の知れない「人間関係」って奴に挾まれて自分が何者だかわからなくなる。警視庁聴問室、同性愛者が集まる映画館、留置場、アダルトビデオ撮影現場、他人の結婚式、出版記念パーティー…自分の居場所を探す「僕」が、この世の中の「縁もゆかりもない空間」「本来いてはいけない場所」に敢然と潜り込み、世間と自分を再発見する10のルポルタージュ
 
 

ライブハウスのオーディションで見るよりもやることの意義に目覚める】

 
風薫る五月の気持ちいい日曜日、江古田のマーシーというライブハウスに来ている。朝の9:40。これからオーディションが始まるギターケースを傍らに置いた8人ほどの若者が座っている。付き添いの女の子の姿もちらほら見える。
 
僕はプロシンガー志望っていうんでもない。ただ、ライブハウスのオーディションには、どういう種類の人たちが参加するのか興味があったんで、ちょっと混じってみようかと思っただけのことだ。オーディション料2000円を払って、いま順番を待っている。
 
「住所、氏名、年齢、電話番号をこの用紙に書き入れてください」明らかに笑いをこらえている様子で女の子が言った。(なんだ!なんだ!50歳の人間がオーディションを受けちゃいけないっていうのかよ!年齢制限なんてどこにも書いてないし!俺の歌を聞いて驚くなよ!)
 
ぎゃー!と僕は叫び声を上げそうになった。ステージの菅原君の歌がすでに始まっていたのである。もうすこしどうにかなんないのか!ヘタすぎる。ラブソングとか言ってたけど、こんな歌聞かせたら百年の恋だって一瞬にして冷めてしまう歌い出しの最初のAの音が、いきなりフラットしてしまっている。そして音程が不安定なままー。音痴っていうのだけど。
 
・盛岡からきたドウチ君。「ジュンとヨッコのバラード」を歌う。歌はヘタじゃないけど、曲は単調で、歌詞はというと「中学三年の12月の雨の日、二人は知り合って恋に落ちて、ジュンは引っ越して、でも二人の愛は冷めないで……二人が愛し合うように世界の人が愛し合えば、平和になる……」とかいう、つまんない物語が延々と続くものだった。
 
・とうとう僕の出番「井上拓郎です。ステージに上がるまで『黄昏に燃えて』っていいう新曲を歌おうと思ってたんですが、気分が変わったんで『愛の絆を』という歌にします」とおもむろに歌い始めた。
 
みんな驚いた様子だ。「なんでこんなおじさんが、こういう曲を書けるんだ」レベルが違う。そりゃそうだ、吉田拓郎の隠れた名曲なんだから。もちろん僕は下手なりに聞かせ方も心得ていたのだよ。
 
マーシーの店長は、僕が書いた嘘の電話番号に電話をすることだろう。でも、僕はいない。店長は幻のシンガーソングライターの行方を探す。でも、僕は見つからない。幻のシンガーソングライターは、マーシーで語り継がれ伝説となる。「そういえばあの人、どこか影を背負っているみたいで魅力的だったわね」などと密かに語り合うのだ。なんてことはないだろう。
 
矢沢永吉ファンの革ジャンの「氷吉命」」「同性愛者の集まる映画館で人間観察しつつ混じりものと感じてしまう「僕」の本質について」「疲れ果てた金曜日の深夜、六本木のクラブの秘密パーティーで天国を目指す仲間に入る」「飲酒運転をして混ぜられた留置場で本当に胡散臭い奴らのことを考える」など。
 
実は、ワタシも2016年、8年前に同じような経験がある!いま、思い出したー!ワタシは本気だったけどね。(笑)
 

 

いいなあ。貴重な体験だなあ!このシリーズ、いいなあ。もっとやって欲しいなあ。オススメです。(・∀・)

 

いちど混じってみたかった

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