「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「暗渠の宿」(西村賢太)

 
はじめて読みましたよー!ようやく、西村賢太!スゴイなあ!私小説だっていうから要するにノンフィクションでしょ。憎めないし、赤裸々だし、この破滅型の主人公には惹かれるなあ。
 
「貧困に喘ぎ、暴言をまき散らし、女性のぬくもりを求め街を彷徨えば手酷く裏切られる。屈辱にまみれた小心を、酒の力で奮い立たせても、またやり場ない怒りに身を焼かれるばかり。路上に果てた大正期の小説家・藤澤清造に熱烈に傾倒し、破滅のふちで喘ぐ男の内面を、異様な迫力で描く劇薬のような私小説二篇。デビュー作「けがれなき酒のへど」を併録した野間文芸新人賞受賞作」そのエッセンスを紹介しよう。
 
・その私をして、女の同棲の過去が気に入らぬと云うのは、かの相手が女にとって、どこまでも初めての男であると云う点である。そしてまたその男だけが私と知り合う以前に関係した、女にとっての唯一の存在であると云う点である。丁寧に私の洗濯物をたたんだり、きれいな料理の盛り付けをしたり、はたまたびっくりするような性の技巧をたまさかに披露したりしていたが、その私は、時折それらのことは、全部先の相手にも行ってきたに違いないと云う、ひたすらの口惜しさに想念が向いてしまい、するとそうした女の、私の為の行為にはすべてツバを吐きつけ、ひっくり返し、邪慳に突き放してやりたい駄々っ子じみた衝動に駆られてくるのだ
 
 
・女は「こんな怒りっぽい人だと思わなかったし、普通ならあんなの笑い話で済むことなのにぶたれもしたら、即、別れようと思った」なぞ言っていたが、それでも別れないところを見ると、私は内心の自信がいよいよ深まり、いっそどこまでやればこの女が逃げ出すのか、それは本当に逃げられてしまったら大いに困るが、そうならない為にもギリギリの臨界点と云うのを把握しておきたいなぞ云うふざけた思いも宿りはじめ、以降、女に対しては、当初の頃よりはるかに暴君じみた言動が増すようになっていった。

 

女性と初めてつきあったとき、多かれ少なかれ、こんなカンジだった(ような気もする)。(笑)等身大の自分をここまで出せるってスゴイ。他の作品も読んでみよ。オススメです!(・∀・)