・その私をして、女の同棲の過去が気に入らぬと云うのは、 かの相手が女にとって、 どこまでも初めての男であると云う点である。 そしてまたその男だけが私と知り合う以前に関係した、 女にとっての唯一の存在であると云う点である。 丁寧に私の洗濯物をたたんだり、 きれいな料理の盛り付けをしたり、 はたまたびっくりするような性の技巧をたまさかに披露したりして いたが、その私は、時折それらのことは、 全部先の相手にも行ってきたに違いないと云う、 ひたすらの口惜しさに想念が向いてしまい、するとそうした女の、 私の為の行為にはすべてツバを吐きつけ、ひっくり返し、 邪慳に突き放してやりたい駄々っ子じみた衝動に駆られてくるのだ 。
・女は「こんな怒りっぽい人だと思わなかったし、 普通ならあんなの笑い話で済むことなのにぶたれもしたら、即、 別れようと思った」なぞ言っていたが、 それでも別れないところを見ると、 私は内心の自信がいよいよ深まり、 いっそどこまでやればこの女が逃げ出すのか、 それは本当に逃げられてしまったら大いに困るが、 そうならない為にもギリギリの臨界点と云うのを把握しておきたい なぞ云うふざけた思いも宿りはじめ、以降、女に対しては、 当初の頃よりはるかに暴君じみた言動が増すようになっていった。
女性と初めてつきあったとき、多かれ少なかれ、こんなカンジだった(ような気もする)。(笑)等身大の自分をここまで出せるってスゴイ。他の作品も読んでみよ。オススメです!(・∀・)