・ 仕事について書いてくれという依頼が来るとは考えていなかった。 僕は、ばりばりとビジネス界で活躍した人間ではない。 ろくに就職活動をした経験もない。また、仕事は、 大学の教官と作家の僅かに二つしか経験がない。 学生のときのバイトを入れても十くらい。「会社勤め」 をしたことがない。そんな「普通ではない」僕にどうして、 依頼が来たのか。
・僕は、最近はほとんど仕事をしていない。 大学は47歳で辞めた。作家の方は、 一日一時間だけしか仕事をしない。あとは、ほとんど遊んでいる。 毎日が楽しいから、そのとおり「楽しい」と書いたりする。
・僕は、働くという行為が、そんなに「偉い」 ことだとは考えてない。「働きたくなかったら、 べつに働かなくてもいいんじゃないか」 というのが僕の基本的な立場である。
・若者の多くが「仕事」というもので悩んでしまうのは、 それまで仕事をしたことがないからにほかならない。子供には、 仕事のことをあまり教えない文化がある。たぶん子供には「 大人の世界のいやらしさ」を見せないようにしているのだろう。
・この本では、そんな幻想を少しでも消してあげたい。 自分の思ったとおりの就職が出来なくても、 全然悲観するようなことではない、ということを書きたいと思う。
・僕は、二人の子供を育てた。 小さいときには厳しく育てたつもりだ。小学校になったとき、 勉強をすることの意味を教えた。その後は、通信簿も見ず、 まったくノータッチだったが、二人とも第一志望の大学に合格し、 その後社会人になった。成人したあとは、もうなにも言わない。 相談を受ければ「好きにしなさい」と答えることにしている。 そして、何の仕事をしているのかもよく知らない。 どんな生活をしていようと、生きているならば、 自分の子供であるから嬉しい。仕事というものは、 今どんな服を着ているのか、というのと同じくらい、 人間の本質ではない。
・大人の何が楽かといって、仕事は辞められるが、 子供は学校は辞められない。また、事実上、 子供の自由で学校は選べない。大人は仕事を選べる。 これだけを取っても、子供の方が過酷である。
・「今は辛いかもしれないが」なんて言うけれど、 仕事というのは基本的にずっと辛いものである。
・人生の生きがいを仕事の中に見つける必要はどこにもない。 もちろん、仕事に見つけることもできるかもしれない。 それと同じように、仕事以外にも見つけられる。 好きなことをどこかで見つければ良い。 どうして仕事の中でそれを探そうとするのか、自問してみよう。
・僕は就職して以来ずっと、ひとりぼっちで仕事をしてきた。 研究というものは、自分の頭の中だけで行うものといっても良い。 また、作家になっても、 やはり自分だけで作業をすることに変わりはない。これを「孤独」 だと感じたことはないし、また、 そもそも仕事に集中しているときというのは、 周りに人がいることなど無関係で、自分の考え、 目の前にあるもの、 自分の作業に没頭しているのではないだろうか。だから、 孤独にならなければ仕事はできない、 といっても良いかもしれない。
「仕事ってそんなに大事なの?」って今、読むとよくわかる。ワタシも歳を重ねた証拠だなあ。オススメです。(・∀・)