「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」(鈴木忠平)

以前から気になっていた本、ようやく読みました。分厚い本だけど、一気読みっ!!!スゴい、男が男に惚れるとはこういうことなんだなあ!今年読んだ本のベスト3入り、間違いなしっ!!(・∀・) 
 
 
中日ドラゴンズで監督を務めた8年間、ペナントレースですべてAクラスに入り、日本シリーズには5度進出、2007年には日本一にも輝いた。それでもなぜ、落合博満はフロントや野球ファン、マスコミから厳しい目線を浴び続けたのか。秘密主義的な取材ルールを設け、マスコミには黙して語らず、そして日本シリーズ完全試合達成目前の投手を替える非情な采配……。そこに込められた深謀遠慮に影響を受け、真のプロフェッショナルへと変貌を遂げていった12人の男たちの証言から、異端の名将の実像に迫る」そのエッセンスを紹介しよう。
 
なぜ語らないのか。なぜ俯いて歩くのか。なぜいつも独りなのか。そして、なぜ嫌われるのか。時間と空間をともにすればするほど人は人を知る。ただ落合はそうではない。確かに同じ時を生きたのに、同じものを見て同じことに笑ったはずなのに、その一方で、自分たちとは別世界の理を生きているような鮮烈さと緊張感が消えないのだ。世界の中でそこだけ切り取られたような個。周囲と隔絶した存在
 
・よく落合の言葉を思い出す。年月を経て、「ああ、こういうことだったのか」と腑に落ちる類のものであり、ひとりぼっちの夜にふと浮かんでくるような言葉である。何かを忘れていないだろうか。そうした自問があるから、今、あの歳月をもう一度追ってみようと思う。ある地方球団と野球に生きる男たちが、落合という人間によって、その在り方を激変させていったあの八年間をー。
 
「勝負事ですから、負けるつもりではやりません。まあ、選手たちには泣いてもらうことになるでしょう」
 
「甘やかすことも、縛りつけることもしません。プロなんだから」
 
「このチームは生まれ変わらなきゃいけなかった。ああいう選手の背中を見せる必要があったんだ。川崎は三年間、もがき苦しんできたんだろ。そういう投手が投げる姿を見て、選手たちは思うことがあったんじゃないか。あの一勝がなければ、その後もないんだ」
 
 
落合は監督二年目になって豹変した。少なくとも森野の目にはそう映っていた。はるか遠くから、この組織の穴を探しているような、そんな眼だった。選手やスタッフとともに、チームの輪のなかにいたはずの落合が、自ら孤立していった。これが本当の落合監督なのかもしれない……森野はそう感じていた。
 
・「ここから毎日バッターを見ててみな。同じ場所から、同じ人間を見るんだ。そえれを毎日続けてはじめて、昨日と今日、そのバッターがどう違うのか。わかるはずだ。そうしたら、俺に話なんか訊かなくても記事が書けるじぇあねえか。一年間続けてみろ。そうしたら選手の方からお前に訊きにくるようになるはずだ。僕のバッティング、何か変わっていませんかってな」
 
・(森野に)「打つことではお前はタツ立浪和義)に勝てない。ただ守りを一からやるなら可能性はゼロじゃない。その覚悟があるなら俺がノックを打ってやる。どうだ?」そしてノックを始める前に、ひとつだけルールを告げた。もう限界だと思ったらグラブを外せ。外せば俺はそれ以上打たない。それが終りの合図だ」
 
「お前、ひとりか?俺はひとりで来る奴には喋るよ」
 
・「俺が何か言ったら、叩かれるんだ。まあ言わなくても同じだけどな。どっちにしても叩かれるなら、何も言わない方がいいだろ」
 
・「別に嫌われたっていいさ。俺のことを何か言う奴がいたとしても、俺はそいつのことを知らないんだ」
 
・「選手ってのはな、お前らが思ってるより敏感なんだ。あいつあらは生活かけて、人生かけて競争してるんだ。その途中で俺が何か言ったら、邪魔をすることになる。あいつらはあいつらで決着をつけるんだよ
 
・「俺が座っているところはな、三遊間がよく見えるんだよ。これまで抜けなかった打球がな。年々そこを抜けていくようになってきたんだ。ああ、また一つ、アウトがヒットになったなあ……ってなここから毎日バッターを見ててみな。(立浪にメスを入れることは)これは俺にしかできないことだ。他の監督にはできない。これはお前に喋ったことだ。誰か他の記者に伝えるような真似はするなよ。お前ひとりで聞いたことだ」
 
「お前の代わりは、いくらでもいるからな」
 
・高代コーチ「もし痛いと言えば、監督はすぐに休ませてくれたはずだ。その代わり、お前は二軍に活かされていただろう。レギュラーっていうのはな、他の選手にチャンスを与えてはいけないんだ。与えれば奪われる。それがこの世界だ。それが嫌ならどんなに痛くたって試合に出続けるしかない。監督はそこのことを誰よりも知っているんだ」
 
・(福留に)「お前はもっと数字を残せる。一流ってのはな、シンプルなんだ。前田を見ておけ」「ホームランは力で打つんじゃない。技術で運ぶもんだ」
 
・「私はね、自分では一度もオレ流という言葉を使ったことがない。周りが言っているだけ。世の中の人たちが言うオレ流って、自分に言わせれば、堂々たる模倣なんだと思う」
 
「選手にあれだけのことをやらせてきて、どうあっても優勝させなければいけなかったんです……」
 
・「スポーツは強いものが勝つんじゃない。勝ったものが強いんだ。三年間で負けないチームはできたがー勝てるチームじゃななかったことだ」
 
「打つことは良くても三割だ。でも、守りは十割を目指せる。勝つためにはいかに点をやらないかだ」
 
・「お前がテストで答案用紙に答えを書くだろう?もし、それが間違っていたとしても、正解だと思うから書くんだろう?それと同じだ!」
 
「負けたら意味がない。何の意味もないー」
 
・「俺はお前らの口から限界なんて聞きたくない。投手は、ひとりで投げ切ることはないんだ。継投すればするほど、チームにとってはリスクは高くなるんだ」森は才能のあるピッチャーが能力を出し切らずに降板することが何よりも嫌いだった。それは自身が現役時代に、怪我によってユニホームを脱いだことが影響していたのかもしれない。森は、投手たちがマウンドに立つことのできる「今」を無駄にすることが許せなかった。まだ投げられるのに、自らの心の弱さからマウンドを降りてしまうことが我慢ならなかった。
 
勝つために、その他の一切を捨て去る。森は落合の下で、そういう野球をやってきた。だからここまで辿り着けた、とも言える。
 
「落合が本音を言うわけがないじゃないか」あるベテラン記者が会見場の片隅で、吐き捨てた。
 
・「これまで、うちは日本シリーズで負けてきたよな。あれは俺の甘さだったんだ…でもな、負けてわかったよ。それまでどれだけ尽くしてきた選手でも、ある意味で切り捨てる非情さが必要だったんだ。監督ってのはな、選手もスタッフもその家族も、全員が乗っている船を目指す港に到着させなけりゃならないんだ。誰か一人のために、その船を沈めるわけにはいかないんだ。そう言えば、解るだろ?」
 
「そもそも万人に認めてもらおうなんて思ってないよ。俺が本当に評価されるのは……俺が死んでからなんだろうな」
 
「最近は眠れねえよ。生まれ変わったら、もう野球はやらないだろうな。毎日、映画を観て暮らすよ」
 
・何年かに一人の逸材がドラフト戦線にいたのは確かだ。考え方は二つある。でも、五年、十年先じゃなくて、来年の戦いに勝たないといけないんだ」
 
・(WBCで)「ボイコットしているわけじゃない。球団も監督、行けとも行くなとも言っていない。本人たちに意志を訊いたら、四人(森野、岩瀬、浅尾、高橋聡文)ともそうなったんだ」「球団に届いた用紙を見せてもらったが、出るか、出ないかの意思を書く欄だけで、理由を書けとは書いていなかった。こういうものに説明は要らないと思う。誰がどこを故障しているかは明かせないだろう。医者が患者の病気を他人に言えるか?プロ野球選手は球団の社員じゃない。NPBの社員でもない。個人事業主だ。もし大会に出て故障して、飯が食えなくなったら、誰が補償してくれる?」
 
・「今は十勝したらすぐエースって言われるだろう。エースってそんなもんじゃないよ。何年も続けて勝って、ようやく認められるもんだろう。今のうちにエースはいない。セ・リーグを見渡したって、エースなんていない」
 
「130球投げたって、一球がだめなら全部、無駄になる」
 
「野球だから……あるよ。野球だから、何でもある」
 
・(フリーエージェントについて)引き止める権限は監督にはない。冷たいとか、温かいとか、そういう問題じゃない。選手の権利なんだから」
 
・(和田一浩に)「お前は競争させねえからな。いいか、自分から右打ちなんてするな。やれという時はこっちが指示する。それがない限り、お前はホームランを打つこと、自分の数字を上げることだけを考えろ。チームのことなんて考えなくてもいい。勝たせるのはこっちの仕事だ
 
・(和田一浩に)「打ち方を変えなきゃだめだ。それだと怪我をする。成績も上がらねえ。やろうという気になったら言ってこい。ただし、時間はかかるぞ」
 
・「あれを観てみろ。あんなことをしていたら、打てるわけがないというのはよくわかるだろ?でも、今のあいつらにそれを言ったところで理解できないんだ。物事には言えばわかる段階と、言ってもわからない段階があるんだ落合が求めていたのは若さが持つ勢いや可能性という曖昧なものではなく、確かな理と揺るぎない個であった。
 
・「よくファンのために野球をやるっていう選手がいるだろう?あれは建前だ。自分がクビになりそうだったら、そんなこと言えるか?みんな突き詰めれば自分のために、家族のために野球をやっているんだ。そうやって必死になって戦って勝つ姿を、お客さんは見て喜ぶんだ。俺は建前は言わない建前を言うのは政治家に任せておけばいいんだ」
 
・(小林正人に)「相手はお前を嫌がっているのに、自分で自分を苦しめることはないんじゃないか」
 
落合は自分の理屈に合わなければ誰の命令でも動かなかった。一方で、それが契約した球団との約束であれば、筆談取材にも応じた。自らの利になると思えば、夜中に二軍監督の部屋にもやってきた。チーム内の個人があるとする星野と、オレ流と表現される落合の相克は時間とともに浮き彫りになり、両者の間に溝ができ、ついに舌禍事件として露呈したのだ。落合の合理性はこの組織では反逆であり、エゴとみなされた。
 
「俺は走らねえよ」確かに落合が走る姿を見たことはなかった。周囲に流されない。他に合わせない。それが落合の流儀だろう。だが、あらかじめ指定席をおさえた新幹線が今まさに目の前で動き出そうとしている。そんな状況でさえ、自らの歩みを崩そうとしない人間を私は初めて見た。そんな生き方があるのか、と思った。
 
・「なあ、もし明日死ぬとしたら、何を食べる?俺は秋田の米を食べるよ。でもな、東京で食べるんじゃ意味がないんだ。米はその土地の水で炊いたのが一番うまいんだ」
 
・「別に明日死ぬと言われても騒ぐことないじゃないか。交通事故で死ぬにしても、病気で死ぬにしても、それが寿命なんだ
 
・「俺たちは契約の世界に生きているんだ。やりたいとか、やりたくないじゃない。契約すると言われればやるし、しませんと言われれば終わり。それだけだ。だから、もし俺がやめるとしても、それは解任じゃない。契約終了だ」
 
・「お前らボールを目で追うようになったら、このままじゃ終わるぞー」
 
・(荒木雅博に)「野球ってのはな、打つだけじゃねえんだ。お前くらい足が動く奴は、この世界にそうはいねえよ」
 
「心は技術で補える。心が弱いのは、技術が足りないからだ」
 
「俺は好き嫌いで選手を見ていない。でもな……この世界、そうじゃない人間の方が多いんだ」
 
・「俺は、たまにとんでもなく大きな仕事をする選手より、こっちが想定した範囲のことを毎日できる選手を使う。それがレギュラーってもんだろう」
 
・(谷繁元信)「監督が代わるというのは、この世界よくあることだけど……俺はチームが弱くなるのは嫌なんだ」
 
・「球団のため、監督のため、そんなことのために野球をやるな。自分のために野球をやれって、そう言ったんだ。勝敗の責任は俺が取る。お前らは自分の仕事の責任を取れってな」
 
・「俺は選手の動きを一枚の絵にするんだ。毎日、同じ場所から眺めていると頭や手や足が最初にあったところからズレていることがある。そうしたら、その選手の動きはおかしいってことなんだ。ここから毎日バッターを見ててみな。同じ場所から、同じ人間を見るんだ。それを毎日続けてはじめて、昨日と今日、そのバッターがどう違うのか、わかるはずだ」
 
・「あいつら、俺がいなくなることで初めてわかったんだろうな。契約がすべての世界なんだって。自分で、ひとりで生きていかなくちゃならないんだってことをな。だったら俺はもう何も言う必要ないんだ」
 
「猫って最期を迎えるとき、誰にも見られないところにいくんだよな。俺もそういうのがいいよな……」
 
・「八年間、ありがとうな。今、この場に俺が立っていられるのはお前たちのおかげだ。九月でシーズンが終わっていたかもしれないんだからな。お前ら、大したもんだ。だがな……これからも下手な野球はやるなよ。自分のために野球をやれよ。そうでなきゃ……俺とこれまでやってきた意味がねえじゃねえか」

 

いいなあ。カッコいいなあ。落合、球界に復活してほしいなあ。野球ファン必読っ!超オススメです。(・∀・)