新型コロナで急逝した「笑いの王様」その絶頂期を付き人として仕えた著者が語る「知られざる素顔」。底抜けに優しく、笑いにはとことん厳しい天才の姿とは?そのエッセンスを紹介しよう。
・お会いしたときの第一印象は、「静かな人だな」 というものでした。わりとボソボソしゃべる感じで、 声も小さいのです。「笑いは正解のない世界だから、 俺から教えることは何もないぞ」「田代(まさし)とか桑野( 信義)は俺を『師匠』って呼ぶけど、 実際の弟子からそう呼ばれるのは恥ずかしいから『さん』 でいいよ」
・麻布十番の焼き肉屋さんで、 志村さんがいきなり青唐辛子を差し出しました。「 生でたべてみろ」「いただきます。からーっ!」と言いながら、 ゲホゲホ咳き込み、涙目になったのでした。そんな僕を見て、 志村さんは笑いながら「いいか、 それが辛いときのリアクションだから覚えておけよ」 こうして振り返ってみると、体で覚えさせる教え方でした。
・「テレビカメラしかないスタジオでコントをしても、 ウケているのか、ウケていないのか、 見ている人の反応がイマイチわからない。 自分が面白いと思ったものと、 世間の人たちが面白いと思うものがズレていないか。 これが確認できるから、お客さんの前はいい」
・「自分が面白いと思った人の言い方、表情、話の『間』 を真似てみろ。最初はモノマネでも、 いつかそれが体に染み込んでオリジナルになる」
・「目の前にいる俺一人の気持ちがわからないで、 テレビの向こう側にいる何十万人の人たちの気持ちがわかるか?」
・「酒でクールダウンしないと眠れないんだよ」
・「怒ってもお前が困るだけで、何も解決しないだろ」( 志村のカバンを紛失した時)
・「俺はドリフのボーヤ(付き人)だった頃、 いつもスタッフさんを笑わせていたぞ。 お前は芸人になるために何をやった?何もしていないだろ。『 辞めて違う環境になったらやる』 とお前は思っているかもしれないが、 俺のところにいて何もしていないヤツが、 俺から離れて何かをやれるわけがない」
・「世間のヤツらが高木(ブー)さんのことを『何もできない』とよく言っているけど、普通に歩くのがどれだけ難しいことか。それをわかっていない連中が多いんだよんな」
・「誰かと話をしていて、『これ知っている?』」って言われたとき、知らなかったら話はそこで終わっちゃうよな。知っていて知らないフリをするのと、本当に知らないのはまったく違う」
・「お前は俺にいろいろ聞いてくるよな。今、世間ではこういうことが流行っています。昨日こういう面白いニュースがありました。お前はそういう話をしろ」
・当時、志村さんは10日に一度くらいのペースで映画のDVDを買っていました。毎回10本くらい買います。そして、どんなに飲んだ日でも、自宅に帰ったら1本は見ていました。「どこにコントのヒントがあるかわからないし、映像の撮り方も応用できるかもしれない」「俺が寝ている間にもっと努力しているヤツがいるかもしれない。そう考えたら不安になるから見たほうが落ち着くんだよ」
・どんなに飲んで帰っても、必ず一本は映画を見る。音楽もたくさん聴く。毎朝ニュースをしっかり見て、新聞も隅々まで読む。なおかつ、毎週水曜日のネタ会議に向けて、コントのネタを全身全霊で考える。そんな志村さん、女性との恋愛はどのようなものだったのでしょう。「俺は結婚したいし,子どもも欲しい。親子で『バカ殿様』をやるのが夢なんだ。寝室は夫婦別々。自分の寝室のドアには信号機をつけて、今日は一緒に寝たいと思ったときは青、一人で寝たいときは赤、という別居結婚が理想だ。結婚しても、俺は家にはまっすぐ帰らないで飲みに行く。まっすぐ家に帰る俺なんて、お前は嫌だろ?」
・「子ども向けのネタを作っても、子どもにはウケない。ウケないだけはない。『バカにするな』と嫌われる。大事なのは自分が面白いと思うコント、大人が面白いと思うだろうコントを作ることだ。コントでちょっとバカな子どもの役をやるときも、バカをやっていると見せたらダメ。すぐに見抜かれる。『全員集合』の生放送が終わって会場を出るとき、『志村ってバカなんだぜ』って言っている子どもがいたんだけど、そのときは『ああ、よかった』と思ったな」
・「一時間番組で10本のコントをやるなら、10本全部を100点のコントにしたらダメだ。全部100点にしたら、どれも印象に残らない。どれも平均点、どれも50点のコントに見えてしまう。10本の中に60点とか70点のコントがちりばめてあるから、100点のコントが際立つんだよ」
・「マンネリの何が悪い。マンネリになるまでやれることがすごいんだ。悔しかったらマンネリと言われるまでやってみろ」
・「志村けん」が「市・村・県」に分解できるんです。
・「いいか、俺が何かのキャラクターを演じるときは必ず設定を作る。たとえば酔っ払いなら、その日何があって飲んだのかを考える。嬉しいことがあって呑むのと、つらいことがあって飲むのは酔い方がまるで違う。酔い方が違えば、しゃべることも違ってくる。だから俺がやる酔っ払いは毎回違う。」
・「鹿児島でリポーターに挑戦したいんですが、うまくやれる自信がありません。失敗したらどうしようという不安もすごくあります」肥後さん「俺ら芸人は、もともとロクなもんじゃないんだから、もしダメだったら『ダメでした!』と笑って帰ってくればいいんだよ。そうしたら俺たちは『けそはバカだなあ』ってまた酒が飲めるんだよ」
・「笑いは間が大事。どんなにくだらないネタでも、間がよければ人は笑う。ミュージシャンはリズム感があるから、間がいい人が多い」
・志村さんが亡くなったとき、LINEのビデオ通話で、ひかるさんと上島さんが、ふたりとも目を赤くして「あのハゲ死んじゃったな」上島さんが泣きながら言ったこの言葉に、僕の涙腺は完全に崩壊しました。ひかるさんも「いくら流行が好きだからって、この流行には乗らなくてよかったのにな」上島さんは「今日だけは泣いて、明日からは面白いエピソードを話していく」
「中古自転車とリムジン」「入念な準備と怒鳴られた理由」など。