「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「1本5000円のレンコンがバカ売れする理由」(野口憲一)

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ワタシが農学部出身なのは、兄の影響から。明治大学農学部に入学したばかり昭和56年ごろ、兄から「テル、明治はいいぞ!農学部はいいぞ!ウチは新潟に田んぼや畑がある。いつ新潟に帰るかもわからない。しかもこれからバイオテクノロジーブームだ。生物、化学、食といのちを扱うのが農学部なんだ!お前も来ないか!」と誘われたからだ。結局、卒業後「食の世界」に進まなかったのだが、巡り巡って、結局「食の世界」に戻ってきてしまった。(笑)
 
さて、この本。先祖代々、新潟出身のワタシには、ビンビン響きました〜!
 
霞ヶ浦のほとりのレンコン農家に生まれ、民俗学者となった若者が、実家の農家を大変革。目玉は1本5000円と超破格の値段のレンコンだ。マーケティング民俗学の知識を応用した戦略で、そのレンコンはニューヨーク、パリ、フランクフルトなどの高級和食屋で使われるだけでなく、注文を断るほどの「バカ売れ」に。「ブランド力最低の茨城県から生まれた、痛快な逆張りの戦略ストーリー」そのエッセンスを紹介しよう。
 
 
・僕は民俗学の研究者ですが、同時にレンコン生産農業にも従事しています。僕が力を尽くしてきたのは、両親が経営する株式会社野口農園と、野口農園で生産するレンコンの価値を高めることです。中でも1本5000円という超高級レンコンのブランディングです。銀座、神楽坂、赤坂など国内の超高級料理店や、ニューヨーク、パリ、ドイツ等の超高級料理店でも食材として使われています。レンコンの販売だけで昨年は約1億円の売上げを計上、世界一のレンコン」としてブランディングしてきたという自負があります。
 
・なぜか?戦後の「生産性の向上モデル」=「生産すればするほど儲からなくなるシステム」と決別したことです。
 
エルメスはただの牛の革を300万で売っている。それはエルメスに歴史があるから。しかし、歴史がない農業があるでしょうか?僕はこの時に着想を得たのです。「そうだ、『伝統の創造』だ!」農村出身で農業に関わる自分自身で「伝統」や「民族」を積極的に操作してはどうだろうか、と考えたのです。
 
どのようにして1本5000円のレンコンをバカ売れするような商材に成長させていったのか。それは、僕が「物の売れる理由」を真剣に考え、それを愚直に追求していったからに他なりません。
 
・野口家は、減反政策以前、大正15年には既にレンコンを作っていたのです。稲を作ることができないような田んぼを耕す僕の先祖は、貧しさに耐えながら、家族を養うためにレンコンを作っていたのでしょう。事実昔は貧乏人のやる仕事だった」という父の言葉を幾度となく聞かされてきました。父は、代々レンコン栽培を行ってきた家系であるという事実に、強い劣等感を抱き続けてきたようです。近隣から嫁いできた母のとってはさらに強烈だったのかもしれません。
 
バカ売れの理由は、秘密は、実はたった一つ。両親はもちろん、親も名前も知らない先祖が苦労して育ててきたこのレンコンを、何があっても安売りすることができなかったからです。生まれたばかりの娘の身体にさえ残されていたレンコン農家の刻印家格が低く、農家の中でも蔑まされていた哀しみ。その全てを受け継ぎ、乗り越えていくという信念を抱いた以上、みずから価値を貶(おとし)めてレンコンを安売りすることなどできなかったのです。
 
この両親や先祖から引き継いだ信念や感性。そして身体性こそが、僕たちの「伝統」や「民族」の本質なのかもしれません。このような信念や感性の背景になった哀しみは、僕だけに宿っているものでしょうか?僕にはそうは思えない。これは、全ての農業者に共通した背景ではないでしょうか。これからの農業に携わる者は、これまで気が遠くなるほど永きにわたって苦労をし続けてきた全ての農業者の哀しみを背負う覚悟をしなければならないと僕は考えています。
 
 
「ねぎびとカンパニーの清水寅(つよし)」「農家の哀しみを引き受ける」「レンコン生産の難しさ」「スマート農業は全然スマートじゃない」など。
 
いいなあ。力強いなあ、この戦略!5000円のレンコン、買ってみたくなるよね。超オススメです。(・∀・)

 

yanagida-noguchi.com

▲ 野口農園

 

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