最近、読むボクシングにハマっている。ファイティング原田の物語、良かったなあ〜!
コレ、コレ、この本っ!
この本の冒頭にある日本のボクシングの歴史のなかで日本人初の世界チャンピオン、白井義男の話が印象的だった。引退寸前だった白井を見たGHQのカーン博士が、彼の才能を見抜き、コーチになりチャンピオンに導いたエピソード!我々世代でも白井義男を知らない、知らなさ過ぎるっ!!!そのカーン博士の人生とは!?そのエッセンスを紹介しよう。
・それから約一週間、彼はランチもとらずに、 このボクサーが現れる時刻になると、ホールにはりついた。 そして六日目、パッと閃くものを感じた。 混沌たる疑問の闇に光がさした。
「私が迷わされ、研究しいていたボクサーは、世にも稀な、 素晴らしい素質ーそれは完全なナチュラル・タイミングであって、 世界一流のボクサーの中でも、この素質を備え持ったものは、 指折るほどしかないーに恵まれた青年だったからである。 ナチュラル・タイミング、多くの選手は、 その幾分かを恵まれるか、あるいは、全然恵まれていないか、 そのどちらかであるが、いずれにしても、それは先天的なものだ」
「ナチュラル・タイミングとは、 いってみれば相手との距離を測定し、正確に加撃するために、 鋭い自己の神経と肉体との働き、それもその行動の一こま、 一こまを、すべての筋肉に、針の先ほどの狂いもなく一致させ、 完全な、行動に移せる能力なのであって、 それが具体的に表示されたものは、 無理のない滑らかな動作となり、スピードを生み、 正確さをもたらし、バランスを保ち、 そして怖るべき打撃力となるのである」
・「あのボーイはチャンピオンか?」博士の指さす先を見た。 白井義男だった。
「いや、チャンピオンじゃないです」 そばにいた連中がゲラゲラと笑った。軽い嘲(あざけ) りのニュアンスがあった。博士は意外そうに首をかしげた。
「ほほう、私にはとても良い選手に見えるがねえ。 いまはチャンピオンでなくても、 あのボーイは必ずチャンピオンになるよ」また誰かが笑った。 白井はスタミナがない。坐骨神経痛で引退寸前だ。 白井がチャンピオンになる可能性はまったくない。 誰しもそう思っていた。
「ミスター・シライ、私がキミのコーチになろう。 キミには素晴らしい素質がある。私はそれを引き出してみたい。 二人でやってみないか」腰痛と将来性への不安の中にいた白井は、 ワラをもつかむ思いで、その通訳される言葉を聞いた。 答えは一つしかない。「イエス」白井は言った。
・「ヨシオ、おまえはこのタイトルマッチに勝つんだ。 日本はアメリカに戦争で負けた。 いま日本が世界に対抗できるのはスポーツ以外にない。 自分のために戦うと思ってはいけない。自分ひとりのためなら、 苦しくなったら諦めてしまう。しかし、 バックに全国の日本の願いがあることを忘れるな。」
スゴイなあ……戦後まもなくで世界チャンピオンの価値が今とは比べものにならないくらい高かった時代。この出会いって奇跡だね。ボクシングファン、格闘技ファン必読っ!超オススメです。(・∀・)