「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「天の前庭」(ほしおさなえ)

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全作品読破を目指しているほしおさなえさん。と、思ったら今年すでに2作品発表しているって。いかん、いかん、読まなければ。(・∀・) 過去の作品も読まにゃ、読まニャ〜。(=^・^=)
 
高校の工事現場で発見された白骨死体と日付の刻印されたボールペン。自動車事故で意識不明となり、そのまま九年間眠り続けた柚乃は奇跡的に目覚めたとき、すべての記憶を失っていた。父は同じ事故で死亡、母は柚乃が子供の頃、ドッペルゲンガーを見たと言った翌日に失踪していた。そして今、長い眠りから醒めた柚乃は、パソコンに残されたかつての自分の日記の中に、自分にそっくりな少女に出会ったという記述を見つける。ドッペルゲンガー、タイムスリップ、友達と注文した日付入りボールペン…彼女の行き着く真実とは?詩的な文体で紡がれたヘビイチゴサナトリウムで読者を魅了した著者の長編ミステリ第二弾」そのエッセンスを紹介しよう。
 
空って何処のことをいうんだろう?ずうっと高いところだけ?でもそしたら、わたしたちのすぐ近くにあるこのっ空間は何なんだろう?これは単なる空気?でも、空気っていうのはたぶん物質の名前で、空を満たしているもののことだから、きっとこれも空にちがいない。空は、カラとも読むけど、絶対にからっぽじゃない。なにかいろんなものが詰まってる。見ることも聞くこともさわることもできないなにか。においとか、温度とか、そういう鼻や皮膚で感じるようなものじゃなくて、もっと特別ななにか。わたしたちはみんな、そのなかで生きてる。たとえ聞こえなくても、お母さんからの通信(鈴のアンテナ)もきっとどこかに漂っている。
 
・「ほんと、時間は砂だな。ほんとになんでも風化していくだろ?こうやってどんどん記憶はすり減っていくんだ。時間がたてば。俺たちもいずれ忘れられるんだ」
 
・「シュレーバー回想録』。ドイツのパウルシュレーバーっていう精神病患者が書いた手記なんだけど、フロイトユングラカンみたいな有名な学者たちの目を引き続けた。なんていうかえらく奇妙な著作なんだ。『奇跡の鳥』という名前も含めて『奇跡の鳥』の書き込みにはこの『シュレーバー回想録』からの引用がたくさんある。『天の前庭』っていうのもそのひとつだよ。回想録のなかでそれほど重要な語じゃないけど」
 
・彼の言う神っていうのは、特定の宗教の神じゃなくて……身体の外からやって来て、なかにつながっている神経のようなもの、つまり言語そのものといってもいい。で、だんだん病気が進んで。シュレーバーは自分の内面の声が外から聞こえるようになっちゃったんだよ。それが『奇跡の鳥』なんだよ。結局、神の神経を完全に受け止めるためには、女性的身体になるしかないってことになって。シュレーバーは精神病院に療養中、自分の身体を女性化させようと邁進していたってわけ。
 
むかしから人間って、神とか死後の世界に憧れるだろ?それって永遠って言うものに憧れているじゃないかと思うんだ。でもさ、考えてみたら、だれも永遠なんて体験したことないだろ?だから、あれってほんとうは別のものを永遠だって勘違いしてるんじゃないか、って思うんだ。そうだな、子どもの頃の記憶……。いや、赤ちゃんのころって言ったほうがいいかな。それともまだ生まれる前の、お腹にいたころの記憶。どっかで覚えてるんだよ。そのころはさ、どこまでも自分と世界の区別なんてないだろ?どこまでも自分で、はじまりも終わりもない。だけど、生まれて成長していくにつれて。だんだん自分と外のあいだに境があるのがわかってくるどっかに永遠に変わらない世界があるんじゃないか、って思うんじゃないかな。

 

ほしおさんの表現ってやっぱり詩人なんだよね〜。切り口が鋭いよね〜。ミステリーは、ちょっとムズカシイ。何度も読み返したいなあ。オススメです。(・∀・)

 

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