いや〜いいねえ〜感動だねえ……あの名作「活版印刷三日月堂」シリーズを超えるかもなあ! 優しさが、ぬくもりが、人々の思いが伝わってくる……。なんて美しい、なんて繊細な文章なんだろう。登場人物が生きている。シリーズ最新刊。そのエッセンスを紹介しよう。
・「水引っていうのはね、もともと『結』のためのものだったんだよ。結納の『ユイ』。ユイっていうのは、助け合いの心だったんだそうだよ。だれかが助けを求めたら、自分のことを置いても助ける。その心こそが『結』。贈り物にそういう気持ちをこめるために、水引で結んだんだよね。ただの飾りじゃない。心をあらわしたものなんだ」
・「さびしいよねえ、長く生きるって。だんだんひとりになっていく。はじまったものはいつか終わる。けどそれは、はじまらなかったのとは違うんだよね。終わったものも胸のなかでは生きてる。おじいちゃんも、この家も」
・美濃の和紙や、飯田の水引のことを思い出すと、あのなかに人が生きるということが詰まっているような気がした。美術品というより実用品。多くの職人の手でたくさん作られたいたもの。わたしはそうやって生み出されたものが好きなのかもしれない。身分の高い人たちのために作られた美術品はもちろんうつくしいけれど、生きるために作られた実用品には、それとはまたちがううつくしさが宿っている。
・だれかが生み出して、それをだれかが引き継いできてくれたからいまがある。それを引き継ぐのはたいへんなことだけど、自分のためにがんばるんじゃない、と思ったら、なんだか力が湧いてきたんです。これまで水引に携わってきた人たちがみんな自分のうしろについていてくれている気がして。そうだな、と思う。自分だけの力じゃない。つながっているから、できるんだ。水引の結び目を見ながら、いまここにこうして皆がいることの不思議をかみしめていた。
・「いまはメールもあるし、便利な筆記用具もあるけど、わたしたちはわざわざインクで書くことを勧めている。なぜか、というと、やっぱりそれがなによりうつくしいと思うからです。手間をかけても、届けたい思いがある。メールで長く書くより、ペンで書いたほうが伝わることもあるでしょう。パッケージというのは、単なる包みじゃない。その商品の顔だと思うんです。箱を見るとその商品をどういう思いで作ったかがわかる。そういうものでないといけない」
・お父さん、生きてるってすごいね。世界にはうつくしいものがたくさんある。ーでもね、花のようにうつくしい人になってほしい、ってことじゃ、ないんだよ。花のうつくしさを愛でることができる人になってほしい、ってことなんだって。インクが発売されたら「春の小川」をお父さんの万年筆に入れるね。そうしていっしょに知らない世界を見に行こう。
「飯田と人形劇」「元結と水引」「てるおばあちゃん」「つるし雛」「ブルーブラック」「インク沼にはまりたい」など。
ほしおさんと同い年だからだろうか。ダブるところが多すぎる。思い入れが強い本です。超オススメです。(・∀・)
このシリーズ、どれもオススメです!