「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「モドキ」(ほしおさなえ)

 
全作品読破を目指しているほしおさなえさん。活版印刷日月堂』『紙屋ふじさき記念館』『菓子屋横丁月光荘』『言葉の園のお菓子番』などのシリーズものは、もちろんだけど、初期のミステリーモノも、また良いいんだよね〜!♪
 
さて、この本、不思議な世界だよ〜!「モドキ」だもんね〜!
「世界には、特別な人とそうじゃない人がいる。特別な人だけが輝いて、愛されて、記憶される。でも、そうじゃない人は…?郊外のマンションに暮らす主婦が覗いたウェブサイト。そこに掲載されていた写真の中のミニチュアの女性は、自分とそっくりの顔をしていた。これは偶然?それとも…。密かに売買されるその人間もどきを巡り、切なく危うい物語が始まる」そのエッセンスを紹介しよう。


・品物をカゴからカゴへ移し、バーコードを読み取る。次の人が目の前に現われ、カゴを置く。機械でもできるよな、この仕事。人間なんて必要ない。くだらない。全部、どうにもならない。棚に並んだ洗剤やシャンプーみたいに。でもこの感じ、嫌いじゃない。こうやって、なにかの部品になってく感じ。自分というかたまりがふわーっと壊れて、意味のないブロックになって浮かんでく感じ。商品、お金、従業員、お客。人もものも関係ない。スーパーという空間では、なにもかも交換可能という気がする。次の客がレジにやってくる。にんじん、じゃがいも、トイレットペーパー、ゴミ袋。バーコードを読みながら、あたしは客の顔を見ていない。客もあたしの顔を見ていない。レジ袋をカゴに突っ込む。客はすべるように目の前から消えていった。
 
「人形ってちょっと怖くて。なんか、考えてそうじゃない?」
 
桐林は子どものころから植物が怖かった。植物すべてというわけではない。怖いのはおもに草だった。とくに繁茂している草。動くわけでもなく簡単になぎ倒してしむことができるそれらが、桐林にとっては脅威だった。あれのどこから生きているんだ?脳もない、神経もない、どこが頭だか胴体だかわからない。ただ生きているだけの獰猛な存在。あんなものが自分たち動物と同じ生物だなんて。生きてる、ってなんなんだ?生きるということが、突然不気味なものに思えてくる。
 
・AIW=Alice's Adventures In Wonderland
 
特別。世界には、特別な人とそうじゃない人がいる。特別な人だけが輝いて、愛されて、記憶される。でも、そうじゃない人はーだれにも見えない。だれにも愛されない。だれにも記憶されない。特別じゃない人は消えていくしかない。
 
・「そもそも生物ってなんです?ほかのものを食べて自分の身体を維持して、増殖する。けど、捕食だって増殖だって、もしかしたら最初から、だれかにさせられてるのかもしれない。ミトコンドリアによって呼吸が可能になったのと同じように、増殖だってそもそもゲノムのなかにはいりこんで同居してるなにかに、仕組まれたことなのかもしれませんよ。もし仮にそうだったとしても……食物繊維が自明のものでも、ネズミはネコにおびえる。理屈の問題じゃない。あれは……脅威だ。君だって分かるだろう?」
 
生きもの。生きものってなんだ?外を歩いている人も、鳥も、動物も、植物も、人間も、生物であるわれわれが勝手に生きていると名づけただけで、ほんとは単なる細胞の塊じゃないか。ほかのものから見たら、できたり消えたりする泡みたいなものかもしれないじゃないか。
 
「ねえ、そうだろう?人類なんて、生命なんて、どうでもいいじゃないか……そんなの、僕にいったいなにをしてくれたっていうんだ?」
 

ほしおさなえさんの未来ミステリー(!?)のジャンルもいいんだよね〜!オススメです。(・∀・)