「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「伊勢エビの丸かじり 8」(東海林さだお)

 


伊勢エビの丸かじり (文春文庫)


先日、某芸人が手塚賞を受賞したようだが、東海林さだお氏こそ、直木賞の「特別表彰」を受賞してほしい!と切に願っている。(・∀・)


さて、全作品読破を狙っている「あれも食べたいこれも食べたい」シリーズの第8弾。そのエッセンスを紹介しよう。


・ぼくは、その駅ビルの7階だか8階だかの蕎麦屋に入っていった。わりに、るんるん、とった気分で入っていった。入り口のところで、着物姿の女の人に「お一人ですか」と訊かれ、うなずくと「ではそこへ」と店の奥の真ん中のテーブルに案内された。災難はそこで発生した。ぼくの周辺はすべて女性であった。老若男女ならぬ老若女女。ぼくはすっかりあがってしまった。あがって全身が硬直してしまった。死後硬直ならぬ生前硬直である。


・ぼくはもともとマンボウには好意をもっていた。まだ写真でお会いしただけだが、つぶらな瞳といい、可愛いおちょぼ口といい、人柄が良さそうだ。人格的にも秀れているように思う。一刻も早く食べてみたい。


「冷やしトマト」の「冷やし」という表現、ちょっとヘンだと思いませんか。トマトを主体に考えれば、冷えたトマト、すなわち「冷えトマト」が正しい。なのに、わざわざ「冷やし」と表現するのは、そこに「冷やした人」を想起させようとするためなのである。じゃあ、冷やした人は誰なんだ、ということになり、そこで定食屋のオヤジがまかり出て、「オレが冷やしたんだから金よこせ」と、こういう仕掛けになっているのである。


・あのジャンボ機の中でも、何百人という乗客が、全員イスにすわって、全員前を向いて、全員前かがみになって熱心に食事をしている最中にちがいない。彼らが踏みしめている床の下は、高度1万メートルの空間なのである。恐ろしい。しかもその人間の集団が、時速何百キロという速度ですっ飛んでいくのである。やはりこれは異常なことである。とんでもない事態だと言ってもいい。あってはならないことである。かぼちゃなと突ついている場合ではないはずだ。なんてこと考えながら、タクアンを箸でつまんでポリポリと噛む。


その他、「8000円の味噌汁」「糸と板、麺の魔術」「たかが、コロッケ、されど……」「夏はとろろ」「オリエンタルホテルの朝食」「魔王ドリアン」など。


いいなあ……「生前硬直」(笑)この表現、使おう!オススメです。(・∀・)


 


伊勢エビの丸かじり (文春文庫)