のぶカンタービレ! 全盲で生まれた息子・伸行がプロのピアニストになるまで
タイトルに惹かれて読みました。第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した盲目の天才ピアニスト辻井伸行さんの13歳〜19歳までの物語で特に、ショパン国際ピアノコンクールで“ポーランド批評家賞”を受賞した実話がこの本。プロの音楽家になるっていうことはこういうことなのか!そして辻井さんのピアノが他の人と違うのはこういうことなのか!と感動したエッセンスを紹介しましょう。
「君はもう人前で演奏するプロのピアニストなんだから、僕の前に素材だけ持ってこられても困るんだ。僕がレッスンでみたいのは、君の料理なんだ。自分で調理して、整った料理としての僕の前に持ってきてほしい。素材だけ持ってきて、さあどう料理しましょうかと聞かれても僕には答える言葉はないよ。君の料理の味付けがかしかったら指摘することはできるけど、調理するのは君自身なんだからね」(ピアニスト横山幸雄先生)
・「プロになるということは後戻りできない山道を行くようなもの。一度登り始めたらその山を途中でおりることはできないんですよ」(盲目の演奏家・武久源造)
・「ピアニストの人生は長い精進の道のりです。想像を絶する努力を一生続けなければいけないのが音楽家の宿命です。世界で活躍するピアニストをめざすには、13〜20歳をどう過ごすかが大切です」(作曲家・三枝成彰)
・「伸行くんの演奏の特色は、聴いている人を幸せにするタイプだということ。演奏を聴いていると、本当にふわーっと明るい明日を信じられるような幸せな気持ちになれます。これは演奏家の個性ですね。伸行くんの演奏からはすべての人間は善であるという、性善説の見方が立ち上っています。これは技術うんぬんではなくて、伸行くんの人間性そのものだと思います。疑いを知らないというか、汚れを知らないというか。
もう一つこの印象とつながるのは、伸行くんはステージで演奏することを本当に理屈抜きに純粋に喜んでいるということです。人によっては、どんなに経験を積んでも練習を重ねても、人前で演奏すると緊張が抜けないケースがあります。ところが伸行くんの場合、舞台こそ自分が生きる場所。喜びのステージだという感じで本当に嬉々として演奏しているのがわかる。水を得た魚のようにステージに上がって、本当に幸せそうに演奏する。それをお客様が喜んでくれて、伸行くん自身も幸せになる。そのような聴衆との幸せの好循環を理屈抜きに知っているんだと思います。身体全体で感じているというか。舞台の上で今まさに生きている。そんな感じがしますね」(河合優子先生)
やっぱり自分が楽しむことが聴衆に伝わるんだね。オススメです。(・∀・)♪