明けましてお芽出度うございます。今年もよろしくお願い申し上げます。今年もガツンっ!と感動する本のエッセンスを紹介します。さて、2017年はこの本からスタートしましょう!(・∀・)
「きみの朝」(岸田智史)「川の流れを抱いて眠りたい」(時任三郎)「地下鉄にのって」(猫)「愛する人よ」(南こうせつ)「ルーム・ライト」(由紀さおり)などの作詞を知られ、吉田拓郎が作曲した森進一の「襟裳岬」で日本レコード大賞を受賞した作詞家、岡本おさみ氏。旅をモチーフとした名曲が多いよね。
特に拓郎との歌は名曲が多い。ちょっと抜粋しただけでも、「愛の絆を」「アジアの片隅で」「いつか夜の雨が」「いつも見ていたヒロシマ」「おきざりにした悲しみは」「君去りし後」「サマーピープル」「旅の宿」「花嫁になる君に」「ビートルズが教えてくれた」「ひらひら」「VOICE」「祭りのあと」「まにあうかもしれない」「リンゴ」などなど数えきれないほど。そしてあの名曲にまつわるエッセイが印象的だ。実話だったのだ。そのエッセンスを紹介しよう。
【落陽】
襟裳から苫小牧に出て、何だか列車に乗るのもあきたし、時刻表を見てみると、フェリーが仙台まで出てるらしい。フェリーに乗ることを決めて、苫小牧をぶらつくことにした。苫小牧駅前の通りの本屋に、立ち読みをしているフーテン風の老人が目についた。老人は本屋を出ると、ふらふら歩き、小さな公園のベンチに横になった。ぼくも座った。そして少しずつ話すようになった。
酒飲み屋の裏通りの一軒家。カタギさんが足を踏み入れることろじゃない。「あんたは黙って見てりゃいい」と老人はぽつんとつぶやき、二階につれていってくれた。チンチロリンは始まっていた。部屋は殺気でいっぱいだった。
その夜は、博打明けのその部屋でじいさんとゴロ寝した。翌朝目覚めて、寝タバコをふかしていると老人が眼を覚ました。いろいろたずねてみたい好奇心に駆られていた。ここで別れたら、もう一生会えないかもしれない。
「今、どうして食べてるんですか」
「ルンペンですよ。家族は忘れました。奥さんは逃げてしまいました。絶望っていうんですか、そういう時期もあったようですが、ルンペンの生活はいちばんいいですよ」
「これもってゆきますか」老人は少年のような顔をして古いサイコロを二個ぼくにくれた。「二個ですか、これじゃあチンチロリンは、できませんね」「あなたは博打で勝てる柄じゃありません。だから二個にしました」「やるな、ってことですね」「そうです」「御親切に」「サイコロだけはやらないほうがいいですよ。帰りの船から海に捨てなさい」「そうします」
そうだったのかあ!「落陽」を聞く姿勢が変わるなあ!その他、「襟裳岬」の原型となった「焚火」の詩。「祭りのあと」の誕生エピソードも。いいなあ、名曲が多いなあ。この本は絶版だけど欲しいなあ。オススメです。(・∀・)