「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「性と柔 女子柔道史から問う」(溝口紀子)

いや〜!ビックリした!読む前のイメージと全く違う!グイグイ惹きこまれていってしまった。(・o・)

セクハラ事件の背景とかの内容かと思ったら、日本柔道史と世界柔道の違いから男女のスポーツの性差まで実に深い!


「柔よく剛を制す…柔道は女性のためにあったのだ!」

オリンピック銀メダリストにして、スポーツ社会学者の著者が書く、「柔」の根底に敷かれた、古びた「性」意識を解き明かす。そのエッセンスを紹介しよう。


・2013年1月29日に女子柔道の国際試合強化選手15名が、園田隆二全日本女子ナショナルチーム監督をはじめとした指導陣による暴力行為やパワーハラスメントを訴えていたことが発覚した。「日本スポーツ史上最大の危機」だ。これまで日本の柔道界では、監督や指導者のみが選手を管理・指揮する立場であり、選手が指導者の人事に介入することは一切できなかった。今回の騒動は、日本の柔道界のおいて立場の弱かった女性選手たちが、上位の男性指導員を一掃した歴史的な事件であったといえる。


日本の柔道界が特異なのは、指導で体罰が常用されていることに加え、金メダル至上主義のもとで教科指導が行われていることである。なぜ日本代表の柔道家だけが「本家」のプライドと称して、ナショナリズムを一身に背負い、さらに勝ち方を投技(立ち技)に固執してまで一本勝ちをすることが美学とされてきたのであろうか。日本人選手にとって金メダルを獲得することは、単に世界チャンピオンになることではなく、日本柔道の正しさ、正しい柔道を継承していることを世界に誇示する意味を持ってきたのではないだろうか


これまでの柔道正史は、嘉納治五郎を中心とした講道館柔道の歴史である。そのため大日本武徳会(武徳会)や警視庁・高専柔道の歴史がそれぞれ切り取られ、いわば秘史として散在している。本書では、これまで明らかにされていなかった女性柔術・柔道史を検証していくことで、講道館以外の武徳会などの歴史をコラージュし、柔道史全体を鮮明にすることができると考えている。



・本書では特に、以下の4点の仮説を検証していく。


1 戦前においては、講道館以外の柔道諸流派が存在し、その結果として女子柔道の試合が現実に行われいた。


2 現代の日本柔道とは異なる柔道が、戦前、海外で伝播・普及していた。その結果として、海外では女子柔道の試合が現実に行われていた。


3 女性軽視の理由から嘉納は男性とは異なり試合の禁止を女子柔道に課した


4 戦後、武徳会が廃止されたため、日本柔道は組織が一本化され、講道館「正史」が誕生した。そのことにより、戦前に存在した女性の柔術・柔道史は欠落と誤記の多いものになってしまった。


現在、全日本柔道連盟では柔道家が興行としての異種格闘技戦を行うことを禁止している。しかし、百年も前から柔道では異種格闘技戦が行われていた。柔道の創始者嘉納治五郎も技術の研究、そして護身術という実用性の観点から、他の格闘技との「練習」を禁じてはいなかった。柔道は「グローバル化した雑種の文化、異種混淆文化」であるグローバル化により異文化間の交流が増大し、身体的・文化的活動が交じり合い、新たに複合的な雑種形態の柔道文化を生み出した。すなわち「文化変容」することで世界各国に受け入れられたのである。


その他、「金メダルしか認められない日本柔道界」「女性らしい柔道とは何か」「柔道史から社会を見つめる」「正史と秘史」「柔道の社会的価値」「なぜ講道館柔道が柔道正史の位置を占めるようになったのか」「エロチシズムと大衆文化」「五輪金メダリストの性的暴行事件は偶然に発生したのではない」「いかに蔑視されてきたのか」など。


オモシロイ!実にオモシロイ!柔道を見るのが楽しみになりました。超オススメです。(・∀・)!