「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「三塁ベースコーチ、攻める。監督を代行する10番めの選手」(澤宮優

いや〜、この本は感動したなあ…!早くも今年読んだ本のベスト10は間違いなしだろう。(・∀・)


著者の澤宮優さんのスポーツノンフィクションは、通常は陽の当たらない
人や場面を豊富な取材によってスポットライトを当てる。つまり「縁の下の力持ち」のテーマが多い。この本のテーマは、「三塁ベースコーチ」である。そのエッセンスを紹介しよう。


・日本プロ野球史上「伝説の走塁」と呼ばれているプレーがある。ふつうは三塁ベースコーチが、表だって賞賛されることは少ない。むしろ上手く行って当たり前、失敗すれば、非難を浴びせられるという苦労の多いポジションである


・三塁ベースコーチという職種は、コーチの職種として選手名鑑には記載されていない、その多くは内野守備走塁コーチ、外野守備走塁コーチが兼務して務める。その任に当たるコーチは、現役時代は、華やかなスター選手といういより、いぶし銀の輝きをもった守備、走塁に秀でていた選手が多い。それゆえ、野球の緻密な技術を熟知した人たちである。



【高代延博 日本一の三塁ベースコーチと呼ばれた男(第二回WBC日本代表三塁ベースコーチ)】



球界の名将野村克也は、高代のことを「日本一の三塁ベースコーチ」と呼んでいる。それは野村が阪神タイガースの監督を務めていたとき、高代のいた中日ドラゴンズに、何度も三塁ベースコーチの技量の差で負けていたからである。野村は強肩の守備固めを配置したにもかかわらず、高代は浅い当たりで幾度も二塁走者を生還さっせ、中日は勝った。そのたびに野村は新聞記者に「今日は三塁ベースコーチの差で負けた」とコメントを寄せた、この年、中日ドラゴンズがリーグ優勝した。三塁ベースコーチで、元西武コーチの伊原春樹を一方の横綱だとすると、その双璧として並ぶのが高代なのである。


・「まあ、あそこでなければ分からないことはいっぱいありますからねえ。三塁ベースコーチは孤独な職業なんです、回して得点できたら当たり前。本塁でアウトになったら周りに避難され、壊れた信号機とも揶揄されます。そういう役目なんですね」


・高代は走者を本塁に突っ込ませるか、それとも三塁で止めるべきかの判断をするときに気をつけている点がある。それは「アウトを恐れず、勇気をもって回すこと」そして「迷わないこと」。最大の戒めは「消極性」。安全策に負けて、三塁走者を止めてしまい、後で「今のは帰れたな」と後悔することである。


・「決断というのは選手をしっかり見ることもありますが、やはり経験についてゆく部分もあると思います。数学の解答には方程式がありますが、野球の局面には数式はないし、状況がそれぞれ違いますから難しいです」


・「無事に済んで称えられることはないポジションですけど、ほっとしますよね。やっぱり主役になったらいかんのです。主役は選手です。自分が前に立ち出したらチームはおかしくなる。だから黒子的ではあるけど、競技的には主役を兼ねている部分もある感じです」


・「捕手が“守りの監督代行”だとすれば、三塁ベースコーチは“攻めの監督代行”みたいなもので、そのくらい重要なポジションだと思いますね」


・とにかく打球音がした段階で、球の速さ、風向き、打球の位置、相手野手の捕球体勢、肩の強さ、そして自チームの次の打順、打線の調子、そして相手投手の調子、得点差、アウトカウント、走者の脚力、これらをコンマ何秒で解析して「ゴー」「ストップ」という回答を出さなければならない。とくに勝負どころの1点となると責任は重い。


・一瞬のプレーに、この状況であり得る全ての作戦を思い浮かべ、最上の判断ができる人である。それは一種の才能と言ってもいい。


その他、「この男が三塁ベースコーチを変えたー牧野茂ドジャースの戦法」「アメリカでは監督候補のためのポジション」「土屋弘光(元ロッテオリオンズ)三塁ベースコーチを三千試合務めた男」「高校野球、甲子園勝利の決断」「恐怖の二番打者の引退後 大熊忠義(元阪急)世界の盗塁王を陰で支えた男」「日本シリーズ「伝説の走塁」の舞台裏 辻発彦(元西武)」「ホークス黄金期を支えた森脇浩司の三塁ベースコーチ人生」など。


野球がますますオモシロクなるよ。名著です。超オススメです。(・∀・)