「日本ミステリー史に残る感動の名作」というキャッチフレーズに惹かれて読みました。確かに…静かな感動…切ない…。愛の形がこんな犯罪に結びつくだなんて…。(T_T)
「櫛森秀一は、湘南の高校に通う十七歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹との三人暮らし。その平和な家庭の一家団欒を踏みにじる闖入者が現れた。母 が十年前、再婚しすぐに別れた男、曾根だった。曾根は秀一の家に居座って傍若無人に振る舞い、母の体のみならず妹にまで手を出そうとしていた。警察も法律も家族の幸せを取り返してはくれないことを知った秀一は決意する。自らの手で曾根を葬り去ることを…。完全犯罪に挑む少年の孤独な戦い。その哀切な心象風景を精妙な筆致で描き上げた、日本ミステリー史に残る感動の名作。そのエッセンスを紹介しよう。
・静かな激怒が、ひたひたと心を満たしていく。それは、今までの、真っ赤な炎のような怒りとは、異なっていた。秀一の脳裏で輝いていたのは、鮮やかなブルーの炎だった。最も深い思索を表す色。だが、その冷たい色相とは裏腹に、青の炎は、赤い炎以上の高温で燃焼する。秀一は、すでに、自分が決断を下しているのに気づいた。残されている問題は、技術的なことにすぎない。
・「そんなことないよ。君は悪くないよ。だって、ほかに、どうしようもなかったんだもん。何もかも、お母さんと遥香ちゃんを守るために、やったんでしょう?だったら、絶対、悪くなんかないよ。君は、悪くないんだから!遥香ちゃんや、お母さんのためにも、君は、捕まったりしたら、だめなんだよ……!」
・「あやまらなくてもいいよ、悪くないもん。わたし、証言するから。裁判でも。ちゃんと言うよ。君が、美術の時間、学校から一歩も出てないって。だから、平気だよ」
映画化されているようなんだけど、この微妙な心の変化は文章で読んで欲しいなあ。傑作です。オススメです。(T_T)