「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「ありふれた愛じゃない」(村山由佳)

母の旧姓が「村山」なので、「村山姓」には親近感がある。とくに村山由佳さんは同世代なのでなおさらだ。(・∀・)

いや〜いいなあ…恋愛小説というか官能小説を書かせてたら第一人者じゃないのかなあ…。この新作も一気に読みました。舞台はタヒチ。(茨城の日立じゃないよ…(笑))

「真奈は32歳、銀座の老舗真珠店のチーフマネージャー。6歳下の貴史と半同棲状態。真珠の買付けで訪れたタヒチでかつて一緒に暮らした竜介と再会する。一層増した竜介の逞しさと官能性に胸をざわめかせる自分に気づき、貴史への罪悪感に心悩ませる」そのエッセンスを紹介しよう。


・「あんたたち、もう終わってるわよ。少なくとも、あんたの側はとっくに終わってる。今のあんたはね、彼を惜しんでいるんじゃないの。彼と一緒に過ごした思い出を惜しんでいるの。結局、可愛いのは自分。今まで彼のために費やした自分の時間が惜しいから、もう終わってることを認めたくないだけよ。閉店時間なのにいつまでも帰ろうとしない客みたい。往生際が悪いったらありゃしない」


・「『気をつけて、仕事、頑張ってきてね。俺…まーちゃんのこと、信じてるから』うわ、何それ、めんどくさ。それを口に出しちゃう?その時点でもう、男としてダメでしょ。『信じてるから』何だっていうのよ。そんな脅迫めいたことをわざわざ口にしなきゃいられないくらい、俺はお前を信じられないって宣言してるようなものじゃないの。もしかして本人、気がついてないの?自覚がないなら、なおさら処置なしだわ」


・「…真奈」口の中にささやかれたとたん、尾てい骨のあたりで何かが砕けた。鼓動は奔り、息が激しく乱れる。きつく目をつぶる。だめだ、もう。こらえるなんてできない。この男が欲しい。こんなことは罪だと、彼も自分も誰かのものだと、わかっていても欲しい。今夜だけー今夜だけだ。二人とも、無言だった。竜介の舌が、真奈の狭い口の中を隅々まで探り、舌の根を掘り起こす。同時に、体の奥の火種まで掘り起こされてゆく。隠し事など許されない。とっくに息があがってしまっていることも、髪や爪の先まで溶けてしまっていることも、全部そのまま伝わってしまう。


・馴染んだホテルの水上コテージで過ごした二日間、竜介も真奈も、ほとんど衣服を身につける暇がなかった。食事さえ部屋まで運んでもらい、けれども飲みもの以外にはほとんど手を付けなかった。胃袋の飢えよりももはるかに差し迫った別の飢えを満たすので精一杯だったのだ。ベッドではもちろんのこと、リビングのソファで、廊下で、バスルームの中で、デッキで、すぐ目の前の海の中で……。どうかしている、と互いに苦笑し合いながら、気がつけばまた軀をつないでいた。しても、しても、し足りなかった。こんなにもあからさまに相手の男を欲しいと思ったことなどなかった。抱いて欲しい。のではない。ただ、つながるのが嬉しいのだ。命と命、互角に挑み合い、渡り合い、互いを満たし合いたい。その想いがきりきりと尖り、膨れあがりすぎて、まるで自爆する間際のように心臓が苦しかった。


いいなあ…タヒチ行ってみたいなあ。確かにこんな恋愛は「ありふれていない」なあ。描写も素晴らしいし、お局上司と社長の会話も実にリアル。オススメです。(・∀・)