「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「兄貴 梶原一騎の夢の残骸」(真樹日佐夫)

 


兄貴―梶原一騎の夢の残骸 (ちくま文庫)


最近、ずっと追い続けている梶原一騎。関連本を読む続けてきたけど、これど終わりかも。「一気」に読んじゃった。(笑)


「劇画史上の巨星、梶原一騎巨人の星」「あしたのジョー」「空手バカ一代など、名作の裏側に秘められた、梶原の素顔と壮絶な生涯を、実弟である著者が熱き想いを込めて描き出す。戦後の混乱期とともにあった少年時代、少年マンガ誌の黄金期を支えた作家魂、そして、芸能界、スポーツ界とのかかわりなど、知られざる真実の姿が明かされる」そのエッセンスを紹介しよう。


・ある夜、梶原が焼酎を呷(あお)る手をとめて、「おまえ、ペンネームについて考えてあるのか。提案だがね。兄弟三人の名前を寄せ集めるというののは、どんなものかな。真樹日佐志、というんじゃ、しかしちょっとばかり語呂が悪いか。では、よし、最後の一字を変えて、真樹日佐夫ってことじゃどうだ」こうして私のペンネームは決まった。因みに私の本名は高森真土である。


・彼は、ハワイにきても週に二度の人工透析を続けていた。明日は私だけ発つという夜、別荘のベランダでやはりグラスを傾けているとき、「なあ真樹よ」ぽつり、と梶原が言った。「おまえにとって、俺はそこそこ、いい兄貴だったろうか」見ると、眼鏡の奥の彼の目には驚いたことに涙が貯められていた。「だった、とはなんだい。縁起でもない」梶原が過去形を用いたことに私はこだわったが、真実、毫(ごう)も思い及ばなかった。この日から数えてわずか一年半ののち、死が無情にも二人の間を割くことになろうとはー。


極真空手は一代で滅びてかまわないと、常々大山(倍達)は口にしていた。死後、残された者たちが行かないがみ合いを演じようと彼の関知するところではないんだ、と迷わず感じた。昭和の武蔵たらんとし、妻も子たちも放ったらかしにして山に籠もり、海外各地を経巡って勝負に賭けた。熱情の赴くままに生きた波瀾の人生の結果として極真会館があったというだけのことで、それがどうなろうが知ったことではないといい得るあたり、そう、大山と梶原には紛れもなく共通項がある。体裁抜きの、男のロマンがある……


ある意味「石原兄弟」を超えたよね。豪快かつ繊細。梶原作品をまた読みたくなりました。オススメです。(・∀・)


 


兄貴―梶原一騎の夢の残骸 (ちくま文庫)