「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「お金のいらない国」(長島龍人)

2014年も三が日が過ぎました。…今年もあとわずか…362日だねえ…。(^^ゞ


さて、この本はおそらく、早くも今年のベスト10入りする本だろう。それくらい衝撃的だ。


「突然、お金の無い国にきてしまった私。その国のとんでもない価値観と人々の生活に戸惑うが、次第になじみ共感してゆく。現代生活に疑問を投げかける短編小説。「お金」を通して考える生き方論」そのエッセンスを紹介しよう。


茶店

 
「あのう、いくらでした」


「いくらって、何がですか」


「え、あの、コーヒーですよ。今、飲んだ」


「はあ」


「コーヒー代ですよ。お金払いますから値段教えてください」


 「おかね?ねだん?なんですか、それ」
 


レストランで。


「レジはどこですか」


「あの、すみません。ここにはそういう物、置いてないんですけど


「私が食べた料理の値段を知りたいんです。お金を払いますから。教えてくらないとこのまま帰ってしまいますけど、いいですか」


「あのう、お食事がお済みでしたら、お帰りになっていただいてかまわないのですけれど。もっと何かお召し上がりになるのでしたら、ご注文くださればお出ししますが…」



・「あのう、この国にはお金というものはないんでしょうか」


 「おかね…ですか。少なくとも私は、お金というものは知りませんし、聞いたこともありません。それは一体、どんな物なのですか」


私は、財布を取り出し、紙幣数枚と、効果をジャラジャラ出して、テーブルの上に並べた。


「この汚れた紙切れと金属の破片が、一体どういう役に立つのですか」


「私達の国では、何か仕事をすると、このお金というものがもらえるんです。そして物にはみな値段というのが付いていて、お店で何かを買ったり物を食べたりすると必ずその値段分のお金を払うことになっています。何をするにもお金がいるんです。お金がなければ生きていけないんですよ。皆、自分が働いて稼いだお金を使って生活するんですよ。だから、いっぱい仕事をした人はいっぱいお金をもらって豊かな暮らしができるんです。だから、お金はどうしても必要なんです」


「要するにあなたの国では、お金というものがないと、人々が欲望をコントロールできないというわけですか」


「まあ、そうかもしれませんが、でも、お金を払わなくても何でも手に入るのなら、もう、仕事をしなくてもいいじゃないですか。毎日遊んで暮らせば…」


「皆が遊んでばかりいたら、何も手に入らなくなってしまいますよ。物を作る人も、与える人もいなくなるわけですから」


「でも、そういう人もいるのではないですか。働かなくても生活できるのなら、自分ひとりくらい遊んでもいいだろうと思う人が」


「この国にはそいういう人は居りませんし、この国に、そいういう人は住めないようになっております。仕事は社会への奉仕ですから、世のため、人のため、ひひいては自分のために、皆で働かなければ世の中は回って行きません。あなたの言うお金がもらえなくてもです。そしてあなたが生活に必要なものはお金など払わなくても、社会から奉仕してもらえばいいのです。事実、この国はそういうシステムになっております」


「お金はね、あるとためておくことができるんですよ。貯金しておけば、贅沢できます。だから楽しいんですよ」


「ぜいたくって何ですか」


「え、ええと…自分がほしい物は何でも買ったり、美味しいものをたくさん食べたり…」


「この国では、欲しいと思ったものは、すぐにでも手に入れることができますよ」


「ただ欲しいくらいの物を手に入れたって、贅沢とは言えないんです。もう自分には必要ないくらいたくさんの物とか、値段のすっごく高い物とか…」


紳士は、ぷっと吹き出した。


「そんな、自分が必要もないほどの物を手に入れて何が面白いんですか。それに、そんなとりとめもない欲望を追っていったってきりがないでしょう」


「でも、貯金しておくと、年とって働けなくなっても安心でしょう」


この国では、働けない体の人には、みな喜んで何でも差し上げますよ。あなたの国ではそういう人でもお金というものを持っていなければ、何も手にいれられないのですか」


紳士は最後にこういった。


「あなたの今やっている仕事が、本当に価値のあるものかどうかを判断する、簡単な方法をお教えしましょう。仮に、社会からお金というものがなくなり、その仕事によって報酬を得られないとしても、自分がその仕事をすべきだと思うかどうかです」


…私は、きっとお金がなくなっても今の仕事をするだろうなあ。仕事が大好きだから。(^^ゞ 実に考えさせられる本だ。超オススメです。(・∀・)