「てるてるソング」 小野塚テルの一日一冊一感動『感動の仕入れ!』日記

毎日の読書、映画、グルメ、流し、人との出会いなど様々なものから感動を得ています。特に本は年間300~400冊読破します。人々を『感』させ『動』に導き、『感する人』になるようにそのエッセンスを紹介しています。

「横綱」(武田葉月)

この本はありそうでなかった本。土俵の鬼・初代若乃花から最も新しい横綱日馬富士まで、横綱経験者23人が語る、その半生と横綱への道のり。著者は、ノンフィクションライターの武田葉月。頂点を極めたもののみが知る、相撲の神髄とは。そのエッセンスを紹介しよう。



第45代横綱 若乃花幹士(初代)


まあ。私は下の頃から「こんちくしょう」という気持ちでやってきましたけどね。日本人の力士の土俵上の態度を見ていると、「こんちくしょう」って気持ちが欠けているような気がします。日本全体がそういうふうな国になってしまったのかねえ、やっぱり。私たちが古いのかもしれないけど、そういうのに寂しさを感じてしまいます。朝青龍なんていうのは、「こんちくしょう」がそのまんま顔に出ていましたけど、本来相撲取りは、ああいうふうな気持ちにならなきゃいけないんです。昔の力士は、みんなああいうふうな気持ちだったんじゃないかと思うし、土俵上の空気、雰囲気も、殺気立っている横綱だった。私が好きな言葉は、「人間辛抱」です。そして、やっぱり人は気力。人生は、七転び八起きです。私なんて、それで生きてきたようなもんですから。


第48代横綱 大鵬幸喜


相撲道、人生もそうですけど、言葉で表すとしたら、「忍」です。辛抱する、努力する。努力するというより、耐えることしかないと考えていました。私も、「上に上がる」という目標を持って稽古して、横綱になったことで、「ああ、叶ったな」という気持ちはありました。人は簡単に「夢」という言葉を使うけれど、夢に憧れるだけではダメなんです。叶える努力をしなければいけない。努力して達成した時に初めて、「ああ、ようやく夢がつかめたなあ」と思うもの。私から言わせれば、逆なんですよ。この世界、楽しいことが1つあるとしたら、つらいことが7つ、8つある。楽しいことだらけだったら、つまらないんです。努力したことで1つのものが報われた。それが楽しいことなんですから。


第49代横綱 栃ノ海晃嘉


横綱だということは、それはそれは重いものです。本当に息苦しくなりますよ。毎日、朝から晩まで、空気を吸うことすら苦しくなってくるような感じです。横綱は、毎場所優勝しなくちゃいけない立場です。勝てば勝ったで当然。負ければ負けたでいろいろ言われて、そういうことも気になってきます。だからずっとつらかったです。


第55代横綱 北の湖敏満


力士になるために、私が東京に来たのは13歳。中学1年生の2学期の終わりの時でした。もちろん母親は心配だったみたいです。でも、オヤジは男ですね。「強くなれなかったら、一生帰ってくるな」そう言われて、北海道の田舎を後にしたんですね。みなさん誤解されるんですが、相撲界に入るまで、私は相撲の経験ってなかったんですよ。小学校の頃は、柔道が中心。スポーツは全般に好きでして、特に好きだったのが野球です。田舎ではまわしを締めたことは、いっさいありません。人間って、精神的に追い込まれると、楽な方に行きたがりますよね。一つ逃げてしまえば、そこからほころびが出てきて、弱気になったりするものですからね。座右の銘といえるような言葉は特にないんです。心の中で思っていることは、口に出すものではない。口に出してしまうと、人間ってホッとするんですよ。だから、「グッとこらえてがんばる」というのが、私の心の中の目標なんです。考えてみれば、つねに自分との戦いだったように思いますね。目標はつねに自分。そして、考えないこと。考えないためには、寝ること。寝たら考えなくて済むから。寝るのが一番なんです。


みな、異口同音に同じ事を言うんだね。スゴイ世界だなあ、横綱って。オススメです。(・∀・)