- 作者: 石川幹人
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2012/08/29
- メディア: 単行本
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我が母校・明治大学情報コミュニケーション学部長、そして工学博士でもある著者は、数少ない「超心理学」の研究者。
超心理学とは、テレパシー、透視、予知、念力、ヒーリングなどの解明を目指す「超心理現象」を研究する科学分野。超心理現象という用語は、通常の物理学では説明のつかない現象、いわゆる超能力を指すのだが、個人が発揮する「能力」だという先入観をさける意味合いで、学樹的に使用されている。超心理現象には、UFOの飛来やネッシーの生息、ピラミッドパワーなどは含まれないので、「超常現象」という名称とは区別されている。なお、霊魂の作用とされる「心霊現象」も基本的には超心理現象には含まれないが、その現象がたとえば、交霊会などの参加者による投資やテレパシーと解釈できる場合は超心理現象とされ、超心理学の研究対象となる。
本書は、日本における第一人者が、その研究内容や成果を詳細に解説するものであるとともに、学問として受けいれられない背景を明らかにし、科学のあるべき姿を問いなおす「科学論」でもある。超心理学の境遇を事例として、客観的な営みであるはずの科学でさえも人々の集合的な信念に左右されているという、衝撃的な事実を一般の人々に伝えたい。そのエッセンスを紹介しよう。
・本書はこの10年間に、私が見聞きし、そして体験してきたことを中心に、この超心理学という「封印された超常現象の科学」の歴史と現状から、「封印」の背景にある構造を私なりに明らかにしたものである。同時に、その過程で浮き彫りになっている科学者社会の問題を衝き、「科学の営みとはなにか」と問う科学論でもある。これまでの研究で得られている「真実」を、本書によって、より的確に読者にお伝えしたい。
・能力者に対する実見信仰の典型的な問題
1 能力者だと騒がれる人が現れる
2 厳密な実見が企画される
3 不十分な事件結果に終わる
4 批判者は能力を認めない。むしろ厳密な状況でできないことこそ、トリックがある証拠だと考える。
5 能力者および支持者たちは、実験のやり方を批判し、厳密な実験を嫌うようになる
仮にホンモノの超能力者がいたとして、超常的な能力を自由に発揮できる水準にないことは明らかである。私たちの過度の思い込みや社会の対応が、多少は期待できる超能力をそれこそ「封印」しているおそれもある。
その他、「超心理学者チャールズ・ホノートンの不断の努力」、「御船千鶴子の千里眼事件」など。「用語集」「統計分析の基礎」「読書ガイド」など付録も充実。オススメです。(^^)